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第五話 愛の寓意その八

「だからすぐにね」

「帰って後は」

「勉強するなり修業なり」

「えっ、修業もあるんだ」

「だから文武両道よ」

 このことは実に厳しくしっかりとしている雅だった。口調にもそれが出ている。

「それでこそ武道家なのに」

「それはそうだけれど」

「心のない力は暴力よ」

「暴力、そして暴力は」

「本当の力じゃないから」

 こう言ってだ。雅は暴力を否定した。

「ほら、あの一川達がそうじゃない」

「うん、彼等だね」

 猛も彼等のことになると話がわかった。何しろいつも自分に絡んでくる相手だからだ。

「確かに。あれは」

「暴力以外の何者でもないでしょ」

「ただ人を殴ったり脅したりするだけだから」

「あんなのは何でもないから」

 眉を顰めさせてだ。雅は彼等の力、即ち暴力を否定する。

「そのうち破滅するわよ」

「暴力だと破滅するんだ」

「暴力は振るわれた相手は忘れないし周りも見ているものよ」

「周りも」

「そう。誰か、神様だって見てるし」

 無意識のうちにだ。雅は神の存在も口にした。

「だからよ。やがてはね」

「暴力を振るうと自分に返ってくるんだ」

「そう。それに勉強ばかりしてても身体を動かさないとね」

「ストレス溜まるよね」

「だからこそ文武両道よ」

 雅は本当に真面目な言葉で猛に話す。その話をしながら夜の帰り道を進んでいるのだ。

「わかったわね」

「うん、それじゃあ」

「そう。帰ってからもね」

「修業か復習か」

「修業の方がいいと思うわ」

 どちらかというとそちらだとだ。雅は答えた。

「今日は猛身体動かしてないでしょ」

「部活出たけれど?」

「今日の部活はランニングと筋力トレーニングだけだったじゃない」

「だからなんだ」

「そう。道場で稽古をしましょう」

 具体的にはだ。それをしようというのだ。

「私も付き合うわ」

「えっ、雅もなんだ」

「そう。お家隣同士だしいいじゃない」

 帰りも楽だから。それでいいというのだ。

「じゃあそれでね」

「うん、じゃあ今から」

「修業だね」

「行くわよ、道場に」

 こう話してだった。雅は猛を彼の家の道場に連れて行った。そしてそのうえで二人で修業に向かう。しかしだった。

 この時一川達は塾の近くのゲームセンターで遊んでいた。たまたまその辺りを通り掛った小学生に暴力を振るい彼から巻き上げた金でだ。

 そのゲームセンターの中からだ。ふとだ。

 その前を通りがかった猛と雅に気付いて話すのだった。

「おい、あの二人」

「ああ。夜にここを通るってことはな」

「あの連中だと遊んでないよな」

「塾、だよな」

 山岡がその肥満した身体をゆすらせながら言った。

「あのおっさんのな」

「だよな。清原塾か」

「あの二人通ってたのか」

 四人はこのことがわかった。そしてだ。

 菅がだ。こう仲間達に言ったのだった。

「じゃあちょっと考えたんだけれどな」

「ああ、何だ?」

「何かいい考えがあるのか?」

「あのおっさんにもいい話だぜ」

 ある人物にとってだ。そうした話だというのだ。

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