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第四話 インノケンティウス十世像その十一

「それでも今はね」

「そうですね。ですが」

「おそらくはだけれど」

「彼等は塾生ではないですね」

「そう。塾にいればああした者達はね」

 何をしでかすか。十字は述べた。

「問題を起こすからね」

「校内でも暴力行為等を起こしているそうですね」

「いじめやカツアゲ、そうしたことばかりしているよ」

「では塾でも問題を起こし悪評が立たない筈がありません」

「すぐにわかる位にね」

「けれどそれはないから」

「はい、彼等は塾生ではないでしょう」

「ではどうしてなのか」

 十字は目に思考を見せた。そうしてだ。

 そのうえでまただ。神父に対して述べたのだった。

「彼等は塾に入りしかもそこは裏手だった」

「あからさまにおかしいですね」

「裏手だし。そこには他に誰もいなかったよ」

「その裏手の存在も塾の人で知っている人は少ないでしょうね」

「あの塾は皆表から入っているよ」

 このことも確めた十字だった。

「そこからね」

「おそらく裏手の存在を知っている方も塾の中では少ないでしょう」

「警備員さん位かな」

 あの好人物の存在をだ。思い出して言ったのだった。

「知っているのは」

「そうでしょうね。その方とおそらくは」

「理事長」

 まだ会ってもおらずその顔も見てはいない。しかしだ。

 その彼の存在をだ。十字はここで強く意識したのだった。

 そのうえでだ。神父に話すのだった。

「彼かな」

「ではその理事長さんについて調べることに」

「妙な一族だね。清原一族」

「塾の経営者の」

「うん、八条学園にその理事長のお気に入りの兄妹もいるけれど」

「その二人もですか」

「怪しいからね」

 既に気配で察していることだった。

「一見すると善良そうだけれど」

「実はですか」

「うん、邪悪なものを感じたよ」

 言うのはこのことだった。初見で感じ取ったことだった。

「そう、どす黒いものを持っている人間特有のものがね

「その兄妹にもあったのですか」

「僕はこれまでそうした輩に神の裁きを与えてきたけれど」

「だからこそですね」

「わかるからね。彼等はそうした輩だよ」

 十字が神の代行者として裁いてきた、その彼等と同じだというのだ。

「そしてその兄妹は理事長のお気に入りで」

「不良達も塾に出入りしている」

「鍵は理事長だね」

 その彼だと。十字は言った。

「間違いなくね」

「では今後は」

「理事長を中心に調べよう。ただ」

「ただ?」

「今回はいつもより裁かれるべき輩が多いかもね」

 ふとだ。こんなことを考えた十字だった。

「ひょっとしたらだけれどね」

「そうですね。普段は三人程ですが」

「今回は七人かも知れないね」

「七人ですか」

「そう。不良の四人に理事長と兄妹」

 それで合わせてだ。七人だというのだ。

「これでね。七人だね」

「確かに。それだけになりますね」

「悪人というのは減らないよ」

 十字は言葉に感情を見せないまま述べていく。

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