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第四話 インノケンティウス十世像その三

「どういった塾か知りたいので」

「よし、話はこれで決まりだね」

「それでは」

「うん、一緒に来てくれるかな」

 十字に微笑んで告げてからだ。部屋の奥の控え室に入りそこにいる同僚に話をしてからだ。それからだった。

 十字は警備員に案内され塾の中を見学した。塾の中は学校のそれをそのまま再現した様にクラスが幾つも、直角だが入り組んだ廊下に区切られてそれぞれ位置していた。

 そしてその中で塾生達が講師の講義を受けている。そうして勉強に励んでいた。

 それか三階から七階まで続いていた。尚二階は事務室になっていてそこに講師や事務員の姿が見える。そしてだった。

 八階に入ったところでだ。警備員は十字に言ってきた。

「それで八階と九階は自習室なんだ」

「塾生の方々の為の場所ですか」

「うん、そうだよ」

 その通りだというのだ。

「基本的に何時でも開かれているよ」

「それで勉強していいんですね」

「塾生ならね。塾が開いている時間ならね」

「誰でもですか」

「そうだよ。それでね」

「それでとは」

「まだ一階あるけれど」

「十階ですか」

 十字はそこが何処かすぐにわかった。

「最上階ですか」

「二階は事務員や講師の人達の階になっているね」

「はい、それは見せてもらいました」

「それで十階は理事長さんの階なんだ」

 そのだ。彼のだというのだ。

「基本的に入られるのは理事長さんだけでね」

「他の方はは入られないのですか」

「理事長さんに呼ばれる以外は。副理事長さんでも呼ばれないと入られないんだ」

「その塾を取り仕切る方でもですか」

「そうだよ。無理なんだよ」

 こう十字に話す警備員だった。

「十階だけはね」

「一つの階が全てですか」76

 十字は警備員の話を聞いてだ。

 それはかなりのものだと思った。一人の人間が一階を全て占領しているなど。それでだった。

 警備員にだ。あらためて尋ねたのである。共に塾の中を見回る彼に。

「それは私物化ではないでしょうか」

「何でも色々な資料があるらしいからね」

「資料ですか」

「そう、受験の為にね」

 それでだとだ。警備員は十字に話すのだった。

「だから基本的に理事長さんだけが入られるんだよ」

「そうした場所なのですか」

「そう、だから僕達も入られないんだよ」

「警備員さん達も」

「清掃の人もね。そこだけは特別に呼ばれて」

「秘密になっているのですか」

「うん、だから僕達も十階のことは知らないんだ」

 理事長のいるだ。そこはだというのだ。

「全くね。どういった場所なのかね」

「一切が秘密ですか」

「いや、だから理事長さんに呼ばれたら入ることができるよ」

「しかしそれ以外は」

「入られないけれどね」

 ありのままだ。警備員は十字に話していく。

「それはね」

「しかしそれでは」

「別にそれで誰も困ってないしね」

 警備員は特に困った顔も疑う顔も見せずに十字に述べた。

「まあ副理事長さんは入られたことはないそうだけれど」

「では他の方は」

「一郎さんや雪子さんはよく入られてるみたいだね」

 あの二人はだというのだ。

「あのご兄妹はね」

「そうなのですか」

「お二人は理事長さんのお気に入りでね」 

 肉親故だと。警備員は考えている口調だった。

「よくね」

「十階にですか」

「あのお二人は十階のことも知ってるよ」

 しかしだった。ここで警備員はこう言うのだった。

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