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第三話 いかさま師その十一

「その行いは」

「よくない人だよ」

「そうだね。悪人だよね」

「男でも女でも悪い人はいるんだ」

 十字は人間世界の摂理をだ。ここでも話した。

「そしてお年寄りでも若い人でもね」

「その立場には変わりなく」

「そう、その人それぞれなんだ」

 立場やそうしたことが問題ではなくだ。問題はその人自体がだというのだ。

 そのことを話しながらだ。十字はだ。

 絵を描きつつだ。また部員に述べた。

「例えばだけれどね」

「例えば?」

「この学校にもいるかも知れないね」

「この絵の女の人みたいな悪人が」

「生粋の悪人がね」

 人を騙すことを生業とする様なだ。そうした悪人がいるというのだ。

「そうした人がいてもおかしくないよ」

「悪人は何処にもいるから」

「そう。そこが問題なんだよ」

 こう話すのだった。

「何処にでもいるんだよ」

「怖いね。けれど」

「けれど?」

「具体的に誰がそうした悪人かはわかりにくいよね」

「悪人の顔をして出ている悪人は愚か者だよ」

「愚か者?」

「そう、愚か者だよ」

 そうだというのだ。そうした悪人はだ。

 そしてその悪人についてだ。十字はこうしたことも話した。

「この学園にもいるよね。如何にも不良という輩は」

「ああ、あの連中だね」

 そうした人間がいると聞いてだ。部員もだ。

 顔を顰めさせてだ。そのうえで言うのだった。

「一川とかだね」

「そう、彼等ね」

「あの連中はね。ゴロツキだよ」

 彼はその一川のことを忌々しげに話した。

「悪いことばかりしてるからね」

「退学になる様なことはしてるのかな」

「してると思うよ、散々」

 それはしているとだ。察しをつけて述べる彼だった。

「ただね。それでもね」

「学園側はその証拠を掴んでいないんだ」

「あんな連中だけれど悪知恵は働くのかな」

 部員は顔を顰めさせてだ。そうしてだ。

 首を傾げさせてだ。そして話したのだった。

「そうなのかな。若しかして」

「若しかして?」

「悪事を揉み消している奴がいるのかな」 

 こんなことをだ。半ば呟く様にして言ったのだった。

 十字はその彼の言葉を聞いてだ。その目に思案の色を漂わせた。だがそのことはことばにも表情にも出さなかった。そこはあくまで隠して話をするのだった。

 部員はその彼のことに気付かずだ。そして言ったのだった。

「けれどあんな連中を使うって」

「いないかな」

「この学園にいるとしたら相当酷い奴だね」

「この絵の女の人みたいな」

「そう、いるかも」

 こう言うのだった。

「悪人がどの場所にもいるのならね」

「そうだね。だとしたら」

「そうだとしたら?」

「その悪人こそ裁かれなければならないね」

 こう言ったのだった。十字はだ。

「神によって」

「悪人は放っていけばいけない?」

「そう、絶対にね」

 そうだというのだ。しかしだ。

 十字は己の感情はここでも出さない。そのうえでだった。

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