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第三話 いかさま師その九

「で、それな。その塾の理事長さんが二人のおじさんなんだよ」

「この八条町じゃかなりでっかい塾だぜ」

「八条駅前にでっかいビルがあるけれどそこなんだよ」

「駅前ですか」

 先輩達から塾の場所も聞いた。十字はその塾の場所もすぐに頭に入れた。

 そうしてからだ。今度は彼から聞いたのだった。

「それでなのですが。その清原理事長という人は一体どういう方でしょうか」

「いや、俺その塾に通ってないからな」

「俺も」

「俺もだよ」

「勿論俺もだよ」

「では塾のことは」

「名前だけだよ」

 知っているのはまさにそれだけだというのだった。

 先輩達はこのことについては申し訳なさそうにだ。こう十字に述べたのだった。

「悪いけれどな」

「俺達が知ってるのはこれだけだよ」

「そうですか。わかりました」

 十字はその先輩達の言葉をだ。あっさりとした感じで受けてだ。

 そのうえでだ。静かな口調でこう答えたのだった。

「ではこれで」

「ああ、まあ塾に行くんならな」

「行けばいいと思うぜ」

 先輩達は十字の塾に通うのは反対しなかった。

 むしろ行きたいなら行けばいいとだ。かえって奨励さえした。しかしだ。

 十字は先輩達の言葉にはだ。今はこう言ったのだった。

「いえ、ですが」

「塾には通わないのか」

「そうするんだな」

「見学等はいいかも知れませんね」

 とりあえずそうしようかとは思った。だがそれでもだ。

 入塾についてはだ。あまり関心のない感じだった。今はだ。

 そうしたことを話してからだった。十字は先輩達にこうも話した。

「とりあえず清原さん達ですね」

「ああ、清原塾のな」

「経営者の一族になるな」

「わかりました」

 そのことを頭に入れた。とりあえず今はそうしたのだった。

 そのうえでだ。彼は部活の時にだ。絵を描きながら部員の一人に尋ねた。

「ところで清原塾って知ってるかな」

「ああ、あの塾?」

 十字にとっては都合のいいことにだ。その部員はすぐに知っている感じの言葉で応えてきた。その言葉を聞いて十字は内心いい感じだと思った。しかしそのことは顔に出さずにだ。

 そのうえでだ。その部員と話していくのだった。

「知ってるんだ」

「実は通ってるんだ」

 彼はその塾に通っているという。そう聞いてだ。

 十字は内心さらに手応えを感じた。無論このことも表情に出さない。

 そしてだ。その部員はさらに話したのだった。

「レベルが高くてね。それにね」

「それに?」

「通っている塾生の数も多いよ」

「やっぱりその塾生は」

「八条学園の生徒が多いよ」

「成程。そうなんだ」

「小学校から高校までのコースがあって」

 部員は十字に問われる前に自分から話してきた。十字にとっては好都合なことに。

「予備校のコースもあるよ」

「予備校。確か大学入試の為の」

「そう、その為のコースだよ」

「そうしたコースもあったね、日本じゃ」

「そうなんだ。イタリアにはないんだね」

「イタリアの学校と日本の学校は入試とかが全く違うから」

 無論大学入試の仕組みもだ。全く違う。

 もっと言えば日本の大学が誰でも入られるがそこにはそれなりの勉強が必要なのだ。

 このことを念頭に置いてだ。十字は部員に答えた。

「そういうのはね」

「そうだね。けれどね」

「日本にはその為の予備校があって」

「そこに入って勉強している人も多いよ」

「わかったよ。それじゃあ清原塾は」

「塾生も多し先生達も充実してるよ」

 塾の講師達もだというのだ。

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