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第三話 いかさま師その五

「だからよ」

「いや、お袋そんなこと頼んだりしないし」

「けれどよ。何ていうかね」

 顔を俯けさせてだ。春香は困った顔になって望に話す。

「おばさんも助かるじゃない。あんたのお昼の分も私が作れば」

「何か話が矛盾してないか?」

 望は春香の言葉の一つ一つに妙に食い違うものを感じて問い返した。

「幼馴染みでとかお袋とか」

「気のせいよ。とにかくね」

「とにかく。何だよ」

「お弁当早く食べなさいよ」

 こう望に言うのだった。

「さもないとお昼休みの時間なくなるわよ」

「わかったよ。じゃあトマト食ってだな」

「他のも食べてね」

「全く。何でいつもいつも」

 こんなことを言いながらだ。望は春香が作ってきたその弁当を食べる。そこにだ。

 一人の少女が来た。小柄で金髪である。外見は明るい感じで人に好かれそうだ。制服は黒のブレザーにミニスカートだ。その彼女を見てだ。

 十字はふと違和感を覚えた。しかしだった。

 今はその違和感の原因がわからず彼女を見ているだけだった。その小柄な少女はだ。

 二人のところに来て春香の肩を叩いてだ。こんなことを言ったのだった。

「また夫婦喧嘩?好きねえ」

「ちょっと、何言ってるのよ雪子」

「そうだよ、何が夫婦喧嘩だよ」

 明るく笑って言う少女にだ。二人はたまりかねた口調で言い返した。

「私はね、望がトマト嫌いだから」

「何か無理矢理弁当食わせさせられてんだよ」

「そうなの?そうは見えないけれどなあ」

 春香に雪子と言われた少女は二人にそう言われてもだ。悪戯っぽい笑みを浮かべてだ。

 そのうえで今度はこう二人に言うのだった。

「喧嘩する程っていうしね」

「私そんなのじゃないわよ」

「俺もだよ。高校だってな」

「たまたま一緒だったり」

「それだけの関係なのよ」

「そうかしら」

 雪子はわざとあまり信じていない感じの顔を見せてきた。しかしここでだ。

 その一見明るく人懐っこい目にだ。春香と望に対する嫌悪と嫉妬をだ。十字は見た。

 それは一瞬だったが確かにあった。それを見てだ。

 彼は身構えた。そのうえで三人を見ることにした。その三人の中で雪子は。

 さらにだ。二人にこんなことを言うのだった。

「そもそも春香ってお料理好きよね」

「女の子だからね」

「そうよね。だからね」

 雪子の目がまた変わった。今度はだ。

 知っていることをあえて隠している、そんな目になってだ。目だけに思わせぶりな笑みを浮かべてそのうえで春香に言ってきたのだった。

「お兄ちゃん、いえ清原先生にも目をかけられてるのよね」

「あっ、うん」

 清原という名前が出るとだ。春香はだ。

 心臓を鷲掴みにされた様に蒼白になった。そのうえでだ。

 戸惑いながらも雪子に答えた。そして言うのだった。

「先生は。料理部の顧問だし」

「そ、そうよね」

 なぜか戸惑いつつ返す春香だった。その彼女を見てだ。

 望は気付かない。しかしだった。

 十字は気付いた。そこに違和感を見たのだ。彼女に対しても。

 しかしその違和感の原因が何か彼には今はわからない。それでだ。

 三人のやり取りを見続けている。そのうちにだ。

 雪子はだ。こんなことも春香に言ったのだった。

「まあ部活動はね」

「それは?」

「頑張らないといけないわよね」

 何気なく高校生としてそうであればいいことを口にしたのだった。

「本当にそうよね」

「わかってるわ。だから今日もね」

「部活行くの?」

「ええ、そうするわ」

 こうだ。蒼白になりつつも頷く春香だった。その彼女を見てだ。

 望は不思議な顔をしてだ。春香に尋ねたのだった。

「なあ、急にな」

「ひっ!?」

 望の言葉に反応してだ。春香はだ。

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