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第三話 いかさま師その四

 背は高めで座っていても足の長さがわかる。黒いハイニーソックスで足を包み教会のシスターのそれを思わせるデザインの胸をガードした青い制服に同じ色のミニスカートの制服だ。だがガードされている筈の胸がかなり目立つのはそのスタイル故だった。

 その女の子と向かい合って座る男子は茶色の収まりの悪い髪に子供めいた顔立ちをしている。サッカーをしていそうな、そんな元気のよさそうな顔をしている。

 眉は細く長い目の光は今は戸惑っているが目自体は大きく明るい感じだ。背は女の子と同じ位でだ。細めの引き締まった身体を青いブレザーと白いズボンで包んでいる。ネクタイも青だ。

 その二人が向かい合って座ってだ。そのうえで言い合っていた。

「だから。望はね」

「トマト食えってんだよな。ったく春香は」

「何よ、食べないの?」

「ああ、わかったよ」

 嫌々の口調だがそれでもだった。望と言われた彼はだ。

 春香と呼んだ少女の言葉を受けてだ。渋々ながらもだ。

 そのトマトを自分の箸で取って食べる。それから言うのだった。

「全くなあ」

「トマトも美味しいでしょ」

「だから俺はトマト嫌いなんだよ」

 見ればその表情はとても嫌そうである。その顔でだ。

 彼はだ。また少女に言うのだった。

「こんなの食わなくても死なないだろ」

「私イタリア料理得意だから」

 ここで何故かだ。こんなことを言い出す春香だった。

「だからね。慣れてもらわないと困るのよ」

「慣れる?」

「そうよ。イタリア料理ってトマトよく使うじゃない」

 春香はこのことも望に話した。

「だから。絶対にね」

「スパゲティ食えってのかよ。春香の作った」

「他にもラザニアとか。後はピザとか」

「それでもトマトは嫌いなんだよ」

 有無もない、そんな口調でまた返す望だった。

「こんなの何処が美味いんだよ」

「美味しいじゃない。それに」

「イタリア料理によく使うからか?」

「それもあるけれどトマトは身体にもいいのよ」

 春香は望に対して力説する。

「だから。絶対にね」

「食わないと駄目なのかよ」

「好きにならなくてもいいけれど慣れてよ」

 春香の口調は次第に切実なものになってきていた。そのうえで自分の向かい側に座っている望に言うのだった。

「さもないと私」

「困るのかよ」

「イタリア料理食べてもらえないじゃない」

 春香の作った、それをだというのだ。

「だから困るのよ」

「そんなこと言ってもな。嫌いなものは嫌いなんだよ」

「じゃあスパゲティは何を食べてるのよ」

「カルボナーラとかペペロンチーノとかな」

 つまりトマトを使わないソースのものを、それを食べているというのだ。

「トマトなくてもスパゲティは食えるだろ」

「駄目よ、それじゃあ限られるしそれに」

「それに?今度は何だよ」

「スペイン料理もギリシア料理もよ」

 イタリア料理に限らなかった。春香はさらに言うのだった。

「そういう国のお料理もね。トマトたっぷり使うから」

「だから俺に慣れろってのかよ」

「そうよ。だからどんどん食べてよ」

「全く。しかも何で毎日弁当二人分作ってくんだよ」

 望は今度はこのことを言った。首を傾げさせながらそのうえでの言葉だった。

「それもわからないんだけれどな」

「えっ、それは」

 その話になるとだ。春香はだ。

 急に戸惑った顔になってだ。言葉を詰まらせながら言うのだった。

「だって私達幼馴染みで」

「幼稚園の頃からの付き合いだけれどな」

「それにね。中学も高校も一緒だし」

「それで何で毎日俺の分まで弁当作ってくんだよ」

「おばさんに言われたからよ」

 こんなことを言う春香だった。やけに言い訳がましく。

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