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第二話 吸血鬼その十四

 彼はあの白い枢機卿、本来は紅い筈のその服を着てだ。その服で礼拝堂にいてだ。そのうえで神父に対してだ。礼拝堂の主の前で向かい合って話すのだった。

「一つお願いできるかな」

「はい、何でしょうか」

「八条学園高等部にね。神が裁かれるべき者達がいる様だけれど」

「その裁きの準備をでしょうか」

「それを頼むよ。今のうちにね」

「わかりました。それでは」

「今度の裁きはね」

 その裁きはだ何かというとだ。

「水を使おうと思っているけれど」

「その時が来ればですか」

「他の裁きの道具も用意してくれるかな」

「いつも通りですね」

「そう、それも」

 こう話すのだった。そしてだった。

 今度はだ。彼自身がと言うのだった。

「けれど。調べるのはね」

「枢機卿御自身がですか」

「うん、そうさせてもらうよ」

 このことをだ。神父に淡々と述べた。

「いつも通りね」

「何でしたら」

「いや、これは僕の務めだから」

 だからだというのだ。

「神が裁かれるべき輩のことを調べて全てを裁くのはね」

「それもまた、ですか」

「貴方は貴方の務めを果たしてくれればいいから」

 あくまでだ。それだけでいいというのだ。

「そして僕は僕の務めを果たすんだ」

「それぞれの務めがありますか」

「そう。それにしても一介の高校生がね」

 どうかというのだ。高校生、今の彼等がだというのだ。

「普通に焼き肉やお寿司を食べられるものかな」

「普通の高校生がですか」

「そう、僕はこの国に来てまだ日が浅いから」

 それ故にだ。わからないというのだ。

「その辺りは疎いけれど」

「はい、それでそういったお店でしょうか」

「日本には普通に食べ放題や安いお店が多いらしいね」

「そうです。焼き肉も食べ放題がありお寿司も回転寿司があります」

「そういうお店は安いんだね」

「ですがその彼等はどうなのでしょうか」

「どうやらそういう安いお店じゃないみたいだね」

 十字のその話を聞いてだ。神父はだ。

 すぐにだ。こう答えたのだった。

「それは絶対に有り得ません」

「高校生の行く店じゃないね」

「はい、断じて」

 こう話すのだった。十字に対して。

「そこまで経済的な余裕のある方はです」

「そう。じゃあやっぱり」

「誰かスポンサーがいるのではないでしょうか」

 そうではないかというのだ。神父も怪訝な顔になっている。

「ですから彼等に資金援助をしているのは誰か」

「そこが問題になるね」

「それを調べられるのですね」

「そうするよ。ではね」

 やはり笑わない十字だった。しかしだ。

 その彼にだ。神父は今度はこう言ったのだった。

「ではお話も終わりましたし」

「それならだね」

「夕食にしますか」

 こうだ。彼に言ってきたのである。

「これから」

「そうだね。今宵の夕食は何かな」

「まずは主の血と肉と」

 ワインとパン、この教会に欠かせない二つのものとだ。

 それと合わせてだ。他にあるのは。

「人参にブロッコリー、カブにジャガイモを茹でました」

「いいね。ボイルドベジタブルだね」

「それとソーセージです」

 そういったものだというのだ。

「それで如何でしょうか」

「あらゆる食べるものは」

 こう言ってからだ。十字は神父に述べる。

「神の恵みだからこそ」

「枢機卿がいつも仰っていることですね」

「頂くよ。それにね」

「そうですね。神にお仕えする者は」

「質素でなくてはいけない」

 このこともだ。彼は言ったのである。

「だからこそ。今の食事を」

「はい、頂きましょう」

 こうしてだった。二人でその夕食を摂るのだった。他の者が見れば実に質素なその食事も彼等にとってはこのうえない馳走だった。神の恵に他ならないからだ。



第二話   完



                      2012・1・14

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