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第二話 吸血鬼その十

 その次の日の放課後だ。画廊にだ。

 柄の悪い、十代と思われる連中が来た。どれも男だ。

 目つきも悪ければ顔付きも姿勢も態度も悪い。ついでに言えばそれぞれの制服の着こなしもだ。

 彼等はその如何にもといった歩き方で画廊の中に入りだ。そしてだ。

 ガムをくちゃくちゃさせながら絵を観ながらだ。十字に言ってきたのだった。

「おい、そこの色男」

「いいか?」

「何かな」

 その彼等にもだ。十字は無表情で応えた。

「この画廊の絵を観てきたのかな」

「ああ、そうだよ」

「来てやったんだよ」

 如何にもという柄の悪い態度でだ。彼等は十字に応える。

 そのうえで一枚の絵を見つつだ。それで言うのだった。

「この絵何なんだよ」

「変わった絵だな」

「これも手前が描いたのかよ」

「この画廊の絵は全部僕が描いたんだ」

 不良達にもだ。このことを話す十字だった。

「模写だけれどね」

「何だよ、コピーかよ」

「盗作なんだな」

「違うよ。模写だよ」

 不良達にまた言う十字だった。やはりその言葉の感じは淡々としている。

 その淡々とした口調でだ。彼はまた言った。

「バチカンから許可を得たね」

「バチカン?何だよそれ」

「何処なんだよ」

「ローマにある。カトリックの総本山だよ」

 そこだとだ。十字は不良達に簡潔に述べた。

「そこから許可を得ているからね」

「だから描いてもいいのかよ」

「問題ないのかよ」

「そうだよ。問題ないよ」

 こう答えるのだった。

「君達が気にすることはないよ」

「おい、何だよその言い方」

 不良の一人、乱れた茶髪の男がだ。十字の今の言葉にだ。

 すごんだ顔になりだ。その顔を前に突き出し十字に向けて問い返したのだった。

「御前喧嘩売ってんのかよ」

「だよな。前から思ってたけど変にすかしてるしな」

「女にキャーキャー言われてな」

「ハーフだ?それがどうしたってんだよ」

 他の三人、それぞれスキンヘッドに赤髪に太ったのもだ。それぞれだった。

 十字を囲んでそのうえでだ。絡んできたのだった。

 だが十字は囲まれても冷静だ。その冷静さがだ。彼等を余計に刺激した。

 そうしてだ。こう彼に言ってきたのだった。

「おい、御前普通科の佐藤だよな」

「美術部にいたよな」

「俺等のこと知らないのかよ」

「どうなんだよ」

「君達の名前は知らないよ」

 それはだとだ。やはり淡々と返す十字だった。

「ただね」

「ただ?何だよ」

「どうだってんだよ」

「君達のことはわかるよ」

 彼等自体はだ。そうだというのだ。

「すぐにね」

「何?わかる?」

「わかるっていうのかよ」

「そう。君達は大した人達じゃないね」

 実に素っ気無くだ。彼等に述べたのである。

「下衆っていうのかな。取るに足らない者達だね」

「手前、死にたいのかよ」

「俺達に何言ってんだよ」

「ふざけたこと言ってんじゃねえよ」

「ふざけたことは言ってないよ」

 やはりだ。ここでもだった。

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