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第二話 吸血鬼その八

 そしてそのうえでだ。十字はだ。

 二人にあらためてだ。その絵を見せたのだった。ムンクのその絵を。

 絵は不安定なままだ。見ているだけで人の心理を不安にさせる。

 その絵を見せつつだ。十字は言うのだった。

「気をつけてね。邪悪もまた音もなく忍び寄って来るから」

「悪い奴は何処にでもいてだね」

「そう。だからね」

 それ故にだと。自分と同じくその絵を見る猛に述べていく。

「くれぐれもね」

「悪い奴なら何人か知ってるわよ」

 雅は相変わらずの目で十字を見つつ述べる。

「学校にね」

「誰かな、それは」

「いつも猛に絡んでる奴等よ」

 幾分忌々しげにだ。そうした者達の話をするのだった。

「あの連中は本当に頭にくるわ」

「そういえば不良が何人かいるね」

「猛の他にも弱そうな子を見ればいつも絡んだりカツアゲしたりしてるのよ」

「そういう奴もいるんだ」

「そうよ。そういう連中も神様が裁くっていうの?」

「許されない邪悪を犯すとね」

 そうなるというのだ。

「そうなるから」

「安心していいっていうのかしら」

「そう。この世で許されない邪悪はないよ」

 それはだ。決してだというのだ。

 十字はこのことは決して譲らない。それは信念だけではなかった。

 知っているからこそだ。まそにそうした口調だった。

 そのことを言ってだ。今度は二人にこんなことを言った。

「ではね」

「それでは?」

「っていうと?」

「神に感謝してね」

 それでだというのだ。

「御祈りを捧げようか」

「御祈り?」

「そういえばこの画廊の隣は」

「そう、教会なんだ」

 つまり教会と一つになっているのだ。この画廊はそうなのだ。

 だからだ。十字はこう二人に言ったのである。

「けれど君達はだね」

「キリスト教徒じゃないから」

 雅が答える。

「特にね」

「僕も。ちょっと」

 猛もだ。雅に続く形でだ。

 それはどうかと言ってだ。十字に答えたのである。

「遠慮させてもらうよ」

「そう。わかったよ」

 十字もだ。二人に特に強制しない。そうしてだ。

 そのうえでだ。その二人にこう述べたのである。

「それなら僕が君達の分まで御祈りさせてもらうよ」

「別にそんな」

「いいよ。これは僕の務めだから」

 だからいいとだ。十字はこのことについて何でもないといった感じで答える。

 そしてだ。また言う彼だった。

「神に仕える者は自分のことを祈ってはいけないから」

「だからなの」

「僕達のことも」

「そう。それではね」

 またこう述べてだった。そうしてだった。

 二人に今度はだ。ある絵を見せた。その絵は。

「ただ。御祈りの前にね」

「その前に?」

「一体?」

「この絵を見てくれるかな」

 こう言ってだ。今度はルネサンスの頃の絵を見せたのだ。その絵は。

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