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プレリュードその二

「恐ろしい顔で死んでいたらしいな」

「全身血塗れで」

「こいつを殺したのと同じ奴か?」

 刑事は社長の無残な骸を見ながら述べた。

「課長とか部下の連中を殺したのもな」

「ですかね。だとすると」

「殺した奴は化けものだ」

 刑事は戦慄している顔でだ。苦々しげに言った。

「人間じゃないかもな」

「だから化けものですか」

「ああ、心は人間じゃないな」

「しかも証拠は一切残ってないですしね」

「殺し屋か?どいつもこいつも相当な恨み買ってたのは間違いないしな」

 悪事を働けばその被害者から怨みを買う、それだけのことだった。

「だから。殺し屋か」

「ですかね。けれど殺し屋にしても」

「こんなキチガイじみた殺しは普通はないぞ」

 まただ。刑事は被害者の骸を見た。断末魔の顔を凍りつかせてこと切れているその顔を見てだ。

 そのうえでだ。また刑事に言ったのである。

「時間をかけて絶望と恐怖、苦痛を与えて殺してるからな」

「ううん、ここまでする奴は一体」

「何者だろうな」

 こんなことをだ。話す彼等だった。そうしてだ。

 八条学園高等部二年A組にだ。一人の生徒が転校してきた。その彼は。

 金髪をショートにしている。黒い目をした白い肌の少年だ。

 背は一七五位ですらりとした長身だ。白い詰襟の制服を着ていてだ。中性的な欧州の彫刻を思わせる整った顔立ちをしている。その彼を見てだ。

 クラスの女子達がだ。口々に言うのだった。

「うわ、何か違うわね」

「金髪奇麗よね」

「それにすらっとしてるし顔もいいし」

「アイドルになれるんじゃないの?」

「そうよね、あの顔だと」

「なれるわよね」

 こう口々に話す。そしてだ。 

 少年はだ。先生を横にしてこう名乗ったのである。

「佐藤十字です。宜しくお願いします」

 何処か女性的な硬質の声だった。清らかで澄んでいる。

 その声でだ。彼は淡々と語ったのである。

「家は教会です」

「教会!?」

「教会っていうと」

「神父さんなのかしら」

「いえ、牧師さんでしょ」

「まだそうした仕事になる年齢ではないので」

 女の子達の言葉にだ。その彼十字から応えてきた。

「違います」

「あっ、そうなの」

「違うの」

「神父様の下で学んでいるところです」

 旧教だというのだ。カトリックだった。

「それで教会の御世話になっています」

「教会っていうと?」

「この学園から少し東に行った」

 十字がこう言うとだ。女の子の一人がはっとした顔になって言った。

「あっ、あの隣に大きな画廊のある」

「はい、あの画廊もです」

「教会の画廊だったの」

「そうです。その教会の御世話になっています」

 そうだとだ。彼はその女の子に微笑んで答えた。

 それからだ。こうクラスの面々に言ったのである。

「ではこれから宜しくお願いします」

「うん、それじゃあね」

「宜しくね」

 こうして十字は八条学園高等部二年生となった。その彼は。

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