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第一話 キュクロプスその九

「君がそう言ってくれたことがね。そして思ってくれることがね」

「嬉しいんだ」

「白は神の色で」

 そしてだと。また言うのだった。

「それが僕に似合っているのならそれ以上の喜びはないよ」

「だからこそなんだ」

「うん。僕は神の僕だから」

 それ故にだと言うのだ。しかしこう言ってもだ。

 その顔には笑みはなくだ。無表情のままだった。白く整ったその顔にだ。無表情はこのうえなく合うものだった。だが仮面めいたそれだった。

 その仮面を思わせる顔でだ。十字はまた言った。

「この絵にしてもそうだね」

「白が多いね、そういえば」

「宗教画は多くがそうだね」

「うん、その神様の色だからだよね」

「白が多くなるんだ。それにね」

 ここでまた言う十字だった。今度言う言葉は。

「白を絵に使うと。他の色がね」

「あっ、映えるね」

「そうなるね。だから余計にね」

「白を使うんだ」

「絵にはね」

 そうするというのだ。

「もっとも僕は模写が全てだけれど」

「オリジナルの絵は描かないの?」

 部員は彼にこう尋ねた。今尋ねたのはこのことだった。

「それはどうなの?」

「オリジナルの絵だね」

「うん、描けると思うけれど」

「描けるよ」

 実際にそれはできるとだ。十字は答えた。

 だがすぐにだ。彼は言った。

「けれどそれでもね」

「描かないんだ」

「今はね」

「それはどうしてなの?」

「僕は今はこれが義務だから」

 それ故にだというのだ。

「こうして過去の人達の絵を描いてね」

「ええと。そこから」

「そう。人の美醜を描いてね」

 そしてだ。それからだというのだ。

「それを皆に見てもらうことが義務だからね」

「何か変わった義務だね」

「神が僕に与えてくれた義務だよ」

 ここでも神だった。やはり彼には最初に神が来た。そしてその神に基きだ。

 再びだ。彼は言うのだった。

「だからそれ故にね」

「そうして昔の絵を描いていくんだ」

「そうするよ。じゃあ一区切りついたら」

 絵を描くことでだ。そうなればだというのだ。

「丁度部活が終わる時間かな」

「そうだね。何か日が落ちてきたし」

「日が落ちて」

 その少しずつ赤くなってきようとしている世界の中でだ。十字は呟いた。そしてその呟きを共にだ。窓の外のその日を見て述べたのである。

「月が出て来るね。多分だけれどね」

「多分って?」

「今宵の月は赤いだろうね」

 こんなことをだ。十字は彼に言ったのである。

「赤い満月だろうね」

「満月であることはわかるだろうけれど」

 月の満ち欠けを見てということだ。これは彼にもわかった。

 だが何故色までわかるのか。それが不思議で十字に問い返した。

「けれどどうして月の色までわかるのかな」

「罪が裁かれる日だから」

 それ故にだと答える十字だった。

「だからね。そう思うんだ」

「罪が裁かれる日だから」

「月に赤いものが宿るのはね」

 それが何かとまでだ。十字は述べた。

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