10−1
「っ、待って下さいですぅ!ベルさんってばぁ!!!あっ…」
不意にいつか耳にした、アイタタター <(>_<;)>な口調が後方から飛んできて、ヒョイというような効果音の後、視界が一段高くなる。
「へぇ、君かぁ。勇者の嫁になりたいっていう女の子」
やや高い声と男が纏うには甘過ぎるような香りが漂い、褐色というには足りないが健康的に焼けたような肌色に、黄色に近いオレンジの髪が眩しく映る。
ぶら〜んと、おぉ首根っこ掴まれた!な状態で硬直すること数秒間。
野性味溢れる端正なお顔と共に視界に入る、斑模様のしっぽさま。
——これぞまさしく食肉類の獣人さん!!に、何故か首根っこ掴まれた!そしてガン見されている!
おぉーい、そこの通行人。
このいたいけな女子を助けてはくれないか?
まだ一応、外見はティーンズ女子なハズなんだけど……。
と、全身をいとも簡単に片手で持ち上げられてしまって、しょぼくれた気分に浸っていると。
「やっと追いつきましたですぅ。って、キーくんってば、女の子をそんな風に持ったらダメですよぅ!」
現れた小柄な女性がパシパシと男を叩き、それに気付いたその人はにっこり笑って私を下ろす。
*.・*くっ…若い男子の爽やか笑顔……ごちそうさまです、許します*.・*
ぐうの音を吐きながら、そっと顔をそらした私。
名前をベルリナ・ラコットという、ごく普通の18歳。
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いやいや、そのぅ…。
久しぶりなんですよ、ここまでの爽やか系男子って!!
今まではどんなに顔が可愛くっても無愛想なお子さまだったり、ものすごいイケメンだけど付き合いに困る大人とか、表面上は親切だけど腹で何を考えてるのか薄ら寒い感じがしてくる幼なじみの男子とか。一癖も二癖もありそうなのが多かったものだから。
最近の心労も相まって、ちょっと癒されちゃったとか…思わないでもないんです。
そんな私は俗にいう異世界からの転生者。
いい感じに前世の記憶というものがあっちゃったりするんです。