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勇者の嫁になりたくて ( ̄∇ ̄*)ゞ  作者: 千海
9 デュソリス湿原
88/267

9−10



——うーん…参った。どうしよう。


 借金取り(?)に襲われて、返り討ち(?)にして逃げたらしい男性のゲームの穴を、誰に埋めてもらおうか…と。同じ空間に腰を下ろす数人を見渡して、どうやら誰も入ってくれそうにないことを感じ取る。

 それでも一応ダメもとで、レックスさんに声をかけると。


「悪いな。他人のやり残しのゲームは引き継がない主義なんだ。次に始める時もう一度声を掛けてくれ」


 そんな風に返される。

 まぁ、それは予想の範疇だったので。


「仕方ないです、ちょっとバランスが悪いですけど、3人で続けましょう」


 と、残る二人に声掛ける。

 すると、少し離れた場所でゴロッと体を横たえていた黒い毛並みの犬様が、タイミング良くのっそり起きてこちらの方へやってきた。


——おや?何か食べたい“おつまみ”あったかな?


 てっきりそうだと感じた私は、じっと机の上を眺めて、ジャーキー的な食べ物を物色しだす。

 エル・フィオーネさんには「何も食べさせなくて大丈夫」と言われたが、その後の様子から、それは食べられない訳じゃなく食べても平気というような雰囲気だったので、食べ物を広げていたとき寄ってきたなら食べさせる、という暗黙ルールができていたのだ。

 ただ、残念ながら犬と暮らした経験が無かったために、どんなものが好きだとか把握しきれてない私。これかなぁ?とソーセージ的な食べ物を差し出してパーシーの様子を伺うと、項垂れるような姿勢を取られてしまう。


——わーお…ソーセージはハズレか(´△`;)


 と。

 でも他にいけそうな肉(もの)は無いしなぁ……なんて。

 まさか豆類(ナッツ)をご所望か?とか、チーズっていけるのかしら?それよりアルコールが欲しいとか言われたらどうしよう…と、私の視線はせわしなくテーブルの上を行き来する。

 が、次の瞬間、彷徨えるこちらの心理を吹き飛ばすような出来事が。


『……ご主人、数合わせでよければ、おれが』


 その声を聞いた時、思わず私はポカンな顔で犬の方を振り向いた。


『大丈夫。人の姿は取れるから、サイコロだってちゃんと掴める』


 もういちど言葉を発した犬様は、すでに人の姿をしており、五本の指でサイコロを器用(?)にも摘んでみせた。

 一気に静まる宿屋の食堂。

 驚愕の表情で黒髪の男を見上げるゲーム仲間の男と女。

 我関せずと読書を続けるイケメンなレックスさん。

 その奥で凝視してくる絡みの無い旅人数名に、包丁を落としそうな勢いの女将さん。


——うん?この見上げる角度からしても、前髪の下は見えぬのか。


 と、長いそれに隠された色のわからぬ双眸に、現実逃避で疑問をぶつけ。

 いやいやいや、それじゃない、と首を振って深呼吸。

 さらにそれから一拍置いて。


——パーシー…!お前って!!お前って奴は!!!


 なんてこった。

 こいつ“人化”が出来たのか!!


——しかも人語も話せるなんてっ!!!!


 ようやく頭が追いついた挙動不審な私さんは、わたわたと立ち上がり、ポンポンと男を叩く。


——ほっ、本物の男の人だ…( ̄Д ̄;) あ、いや、オスなのか。


「よっ…よろしくお願いしますっ」


 何故だかそんな言葉が漏れて『まかせろ』と語ったパーシーは、何事もなかったかのように空いた席に腰を下ろして……そうして四人の“冒険者版スゴロク”は、何とも言えない雰囲気で再開されることになる。



*.・*.・*.・*.・*.・*


 勇者の嫁になりたくて。

 異世界からの転生者、ベルリナ・ラコット18歳。

 なんと連れていた魔獣さま、実は人語を話す上、人化とかできました…。

 今までの犬のフリって一体何だったのでしょう?


 ———とりあえず。

 気付いたら窓の外の雨が上がっていたようなので。

 明日から気合いを入れて勇者様を追いかけようと思います!

それでは後書きです。


魚の胴体に人の手足…手は付いて無かったけど、あぁタンノくん大好きだったなぁ…なんて。懐かしく思った私です。あのヴィジュアルは見ていて愛らしい感じがしますよね。え?お前だけ?いやいや、ばかな。そんなハズ…。

そういう訳で今回登場したモンスターさんですが、雨を降らせる伝説の生き物的なものをベースに…とグーグル先生に聞きながら探したら、西遊記にいきついたという話でしてね。

魚に人の手足って、元ネタは西遊記だったのか!という驚きがあったという報告です。

お恥ずかしながら、しっかり訳された西遊記って読んだことが無かったもので…知らなかったのですよ…(はい、タンノくんが好きだからって率先してパクった訳じゃないですよ、という弁解です)。


それにしても勇者様、やっと活躍(?)してくれました。

いやー、怪力って勇者が持ってるっぽい能力ですよねぇ。

何故に彼が大剣持ちキャラだったのか、ようやく説明できました。ちょっと清々しい気分です。



キング・ダイワーンLV75:魚体に人の手足を生やしたヴィジュアル。普通のダイワーンが魔気の歪みの影響でレベルアップして、さらに「紫水晶の首飾り」を取り込んで覚醒し“キング”になった。「降雨」能力あり。

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