7−1
「かくまって…」
「え?どうしたんですかベリルちゃん」
「追っ手が…」
「あぁ、なるほど。じゃあすこーしじっとしてて下さいね〜」
少女の指差す方角から厳つい容貌の男達が駆けてくるのを確認して、私は手早く鞄から目的のブツを取り出した。
「…?」
「割烹着っていうんですよ。料理人の戦闘服です♪ここから袖を通していただけますか?」
弓使い特有のグローブと背中の大きな弓を取り外してもらい、ちゃちゃっと上に羽織らせて後ろの紐をリボンに結ぶ。
「失礼しまーす」
言いながら、サラサラ・ツヤツヤの金髪ポニテを手早くクルンとひとまとめ。アクセサリー用のチョップスティックをグサグサと突き刺し固定して、地味色のスカーフをかぶせたら、ハイ完成!お惣菜屋の売り子さん!
*.・*美少女は、地味な服でも、よく似合う。字余り。なんちゃってー*.・*
あ、やばいやばい。
「なんちゃってー」などと口走ったら、生きてた年代がバレてしまう。と、心の中で焦りの汗を流した私。
名前をベルリナ・ラコットという、ごく普通の18歳。
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あっ、そういえば。
ここは前とは違うファンタジー世界なのだから、向こうの時代がわかるやつはいるまい、と。その焦りを払拭し。
難しい顔をして立ち尽くす割烹着姿の美少女に「笑顔、ここは笑顔ですよベリルちゃん!」と力強く囁いた。
そんな私はこことは異なる別世界からの転生者。
前世とかいう記憶を持ったごくごく普通の女の子…のハズなのですが。
授かった特殊スキルが、若干、チート寄りなのかもしれません。




