6−1
「うっ…ぐすっ……ふえっ…うぅぅ…っく……ぐずずっ」
「………あの」
「っ、ふあっ?」
「手伝いましょうか?そこから降りるの」
後ろ髪を引かれるような、まるで子供の泣き声がして、切ない気持ちで先を急ぐ勇者様の背中のあたりを見送った。
フィールド中にまばらに生える木々の一つ、大人の腕を広げて作った輪っかくらいの太さの幹にぐるぐる巻き付く蔦さんに、ものすごい体勢で手足を取られた少女が一人。
むしろ、一体全体どうやって?と思えども。
親切なお嬢さんと言われる私は、視界の端に彼女の姿を見止めてしまい、愛する人を涙ながらに見送って、こうして近くにやってきた。
木の上で蔦が体に絡まって…って。普通に起こる事なのか。
*.・*恐ろしいわー…この世界のキャパシティ*.・*
これが世に言うドジッ娘(こ)さんてやつかしら、と。妙な哀れみを感じた私。
名前をベルリナ・ラコットという、ごく普通の18歳。
・
・
・
・
・
いや、その。
普通だと思うんですよ、自分では (;゜△゜)ツ
そんな私がただ一つ、普通じゃないと思える点は…。
実は私、異世界からの転生者。前の世界の記憶という名のお土産を、抱えていたりするんです。
※キャパシティ:物事を受け入れる能力、受容力と取ってください。