5−1
「お願いベルちゃん!おまけするからうちの食堂、手伝って!!」
「……いいですけど、一体何故に私を指名なのでしょう?」
「アイシェスが、ベルちゃんが賄いに作ってくれたご飯が美味しかったって!あの子が言うんだもの。相当美味しいご飯なんだわ。それなら私も食べてみたいと思うじゃない!」
「あぁ…なるほど。そのピンクの髪はアイシェスさんと同じ色……もしや姉妹であらせられたり?」
よく分かったわねぇ、髪色以外全然似てない姉妹なのに。
そんな風にポツリとこぼしたフワフワパーマの受付嬢。
以前、勇者様が立ち寄ったワーナウィーナという街で、時間つぶしと旅費のため、冒険者ギルドに併設された食堂の手伝いという依頼を受けた事があったのだ。その時に知り合ったアイシェスさんという人は同ギルドの受付嬢をやっていて、一度会ったら忘れられない独特の雰囲気を醸し出すお方だったという記憶がよみがえる。
*.・*確かにこれは、姉妹だなんて思えませんわー*.・*
どう転んでも普通に見える受付嬢をまじまじと眺めてしまい、バツの悪さに依頼を断れなくなってしまった小心者の私。
名前をベルリナ・ラコットという、ごく普通の18歳。
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丁度いま、遠い空の下にいる幼なじみなお方から「目頭モミモミ+溜め息+遠い目」のコンボ攻撃を受けたような雰囲気を、なんとなく感じておりますが。
それでも見た目は、ありふれた色を持つ中肉中背、平均身長やや低め、なごくごく普通の女の子。
ただ一つ異(ちがい)を述べるとするのなら……。
実は私、異世界からの転生者。前世の記憶と呼ばれるものが、あっちゃったりするんです。




