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行動一番ささっと物陰に身を潜め、狐につままれた感覚が抜けきらないという様子の彼らを伺っていると、こちらの方に視線を向けて少年がぽつりと漏らす。
「なぁお前、いっそのこと、このパーティに入ったら?」
その言葉に他の2人が振り向いて。
「あぁ、確かにねぇ」
「いつも近くにいるくらいならその方がいいと思うのでござる」
続く言葉に金髪の少女がコクリと頷くのを見て、ふと勇者様の方を見る。
物理的に無理がありそうな大剣を背負った、記憶に懐かしい黒髪を持つイケメンさん。前の世界ではゲームや小説の中だけだったのに、この世界には当たり前に存在する“勇者”という職の人。始まりはほんの些細なミーハー心。それなのに、どうして人だかりをかき分けてまでその姿を見たいと思ったのか。今なら理由がよくわかる。
私はあの時、一目見て確信したのだ。
勇者クライス・レイ・グレイシス。
そう、貴方こそ私の運命の人なのだと。
——大丈夫ですよ。
静かに佇む彼の瞳に、私はそっと微笑んで。
「お気持ちはありがたいのですが、私の居場所はこの位置なのです」
今は、まだ———。
——だから安心して下さいね。勇者様、私はまだまだ待てますよ。
その瞳が語っていたから。
長期戦、もとより覚悟の上なのです。
*.・*.・*.・*.・*.・*
勇者の嫁になりたくて。
異世界からの転生者、ベルリナ・ラコット18歳。
大好きなあの人の隣に立てるその日まで、ゆっくり機会を伺います♪
Dec.20, 2011 短編投稿
書けば書くほど細かい設定を付けたくなるという、作者の悪い癖が露見しはじめた3話目です。
今回の主人公の心理状態は漢字ばかりで読みにくいものが多く、読者様には申し訳ないことをしたと思います。切羽詰まった様子を句読点なしで表現しようとしたのですが…チャレンジング過ぎたかなと反省。。反省はしたものの、特にクレームもなかったのでそのまんまな状態です。
真面目な本文のあとがき〜いつの間にか消えたあの子の行方について〜を書いておくと…
彼はゴースト・ハウスの周りを駆け回り、ときおり大地にじゃれつきながら、彼女の帰りを楽しげに待っていたのです。
だって命の危険なんか無かったでしょ?階段のとこはあの人に助けられてたし。
戻ってきた主人を見上げて首をかしげる仕草の中に、そんな声を聞いた気がしたのだとか。
犬一匹でも側に居れば心強かったかもしれないのに。ベルさん思わずorzです。
短編でこれを投稿した時、ちょうどクリスマスシーズンでした。クリスマスと言えばケーキ!ケーキと言えばロウソク!ロウソクと言えばアイツ!
そういう訳で、引っ張りだされたのがヤツでした…
着火男:火種アイテム。某国の民芸品。素材、デザインは様々。ベルが所有しているのはXLサイズのミャー人形っぽいやつ。名前はチャッキーさん。体長約15センチ。胸元にあるボタンを触ると体の一部から火を噴く。毎回、ランダム選出で異なる部位から発火する。そこ!?という驚きの場所からも。ただし制作者の良識がこうじて下ネタな要素はない。




