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「お姉さん…弱そうだけど、大丈夫?」
「あはは。これでも私、強い人召喚できるので」
「本当に…?」
「本当ですよ」
な、少年からの確認と、どーんとお任せあれ!な押し問答を繰り返す。
ステラティア王国の小都市・リセルティア、その一帯を取り仕切る冒険者ギルドの壁に、依頼として小さく貼られたこの少年の要望を、ふと思い出しては微笑して。
移動あり、謎解きあり、簡単な戦闘ありの、どこかオリエンテーリングっぽい競技というか一大行事。リセルティア・フェスタと呼ばれる街一番のイベントへ、彼と共に参加する意向を伝えている所。
ざっと規約を読んだ限りでは、自分が契約している系も能力として使えるような記し方だったので。戦闘はパーシーくんに担当してもらおう、と。
クローデル峠の頃から「召喚で呼んで」と言うような、最早フィールドの移動にさえも付いて来てくれないスタイルに、どうやら落ち着いてしまったらしい最近の魔獣さま。そんな姿をちらっと脳裏に浮かばせてみたりして。
*.・*私と君とパーシーくんなら、きっと一位も狙えます!*.・*
そう鼻息も荒い感じで意気込む私。
名前をベルリナ・ラコットという、ごく普通の18歳。
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いつも仕事で忙しい母に、何かプレゼントをしたいです———。
景品に賞金がついてくるこのフェスタ。それに共に参加してくれるよう冒険者を募った彼は、なかなか受けて貰えない苦渋を味わった後、やっと現れた私を見遣り、逆に渋い顔をした。
なんて親孝行な息子さんなんだ!!と感動したこちらの方は、依頼料が低くても良い成績出すわよ!と。そんな意気込みを見せながら、大丈夫です、と再び語る。
要は戦闘を含めた感じの大人の障害物競走でしょ?と。
うわぁ、それって楽しそう♪な、気持ちも若干否めぬ訳だが。
何はともあれ、人助けです。ザ・人助け運動会!
……そんなイミフな言葉を造った私は異世界転生者。あまり役には立たないけれど、記憶もあっちゃう的、凡女。生まれた時代がほんと平和で良かったわ〜と。フェスタの空気を吸いながら、ぼんやり思う、顔合わせ日和です。
 




