22−1
『ま、そういう訳でさ。美鈴さん、引き取る事にしたからね』
「はっ?えっ??大丈夫なんですか!?仮にも美鈴ちゃん、神国の勇者でしょ…っ」
『うん、まぁ…上手くいくか半々だったけど。ちょっと都合も良かったんだよね。おかげでカードを切らなきゃいけなかった訳だけど…後悔はしてないし、予定が狂ったつもりもないよ』
だから大丈夫、娘さんの事も合わせて安心してよね、と。
魔道具越しのイシュルカさんは笑みすら浮かべた声を響かせ、気のせいか、もの凄くご機嫌モードなようである。カードを切ったという事は、それ即ち特殊スキルを持ち出したという話な訳だが…。いち国家から、持て余し気味とはいえど、勇者たる存在を引き抜けるほどの信頼を持つ彼のスキルといったなら……改めて、マジ、パネェ!な感想である。
さすが神国、さすがイシュ。
丁度、紫(ネブラ)の系譜のエルフだった付き人殿を、浮遊都市(エルファンディア)再建チームのチーフに配置していて、空きがあったから、と。美鈴さんを付き人(秘書)に雇うよ、と軽やかな声で彼は囁き。あ、起きたみたいだ、じゃあ行くね、と。突っ込む隙をくれないままに、あっさりとこちらとの通話を切った。
*.・*………まっ、待て待て!起きたみたいだ、それってつまり!?*.・*
えぇっ!?えぇえ!!?(゜Д゜||)
まっ、おまっ、mtkr(ま・て・こ・ら)ぁ!!
持ち帰って、そのまま一夜を明かしたクチかっ…!!!?おかーさん許しませんよ!?あっ、でも成人してるか!!はっ、それに“元”が付く母!?
うぎゃー!ばかー!!それやっていい事かー!?と内心で罵る私。
名前をベルリナ・ラコットという、ごく普通の18歳。
・
・
・
・
・
うーん。でも、まぁ、イシュだから…。
一晩で、そんな関係とかになってたりはしないよね…≧(´▽`;)≦と。
落ち着け、落ち着け、言い聞かせながらポーダの斜塔に挑んだ翌日、私は何も無い通路に躓く事13回…。
空高く、澄み渡る風が吹く落ち着いた街道を行き、国境を跨いだ先は古代都市国家・ステラティア。この国も、これまた長〜い歴史があるんです…と、コメンテーターよろしく思った私は転生者。過去の記憶を保持しているのは良い事なのかどうなのか。たまに深〜く考える事もある…ような凡人です。




