3−1
「すまない。火種を貸してもらえないか?」
「あ、はいー。どうぞ。付け方わかり…ますかね?」
「あぁ。“着火男”だなんて珍しいものを持ってるな」
「えぇまぁ。“着火女”とどっちを買おうか迷ったんですけど、故郷の思い出があるので…」
背後から声をかけられ火種グッズを渡そうと振り返ったところで、私は顔の造形がえらく整った牛乳紅茶色(ミルクティー)な御仁にギョッとして、あやうく声が消えかけた。気を取り直し“着火男”という名のついた製品を渡すと、その人はそれを興味深そうに手の中で転がした。
いやはやまったく。
改めてここが遠い記憶と余りにもかけ離れた世界なのだと思い出す。
ツヤツヤのミルクティーに焦がしキャラメルを配置した大層な男前。勇者様と同じベクトルの匂いがするが、配色如何でこうもタイプが違って見えるのかと感心する。
*.・*もはや後光を纏ってる域だわー*.・*
この世界の美形上限ってどうなってるんだろう、と物思いにふける私。
名前をベルリナ・ラコットという、ごく普通の18歳。
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えぇと…。
既にご存知かもしれませんが、容姿→凡庸、性格→至って正常、なごくごく普通の女子なのですが…。
実は私、異世界からの転生者。記憶もそのまま持ち越しです。




