19−6
機嫌が良ければ「まう〜」と嘶く、マウマウなるポニーな騎獣は、はっきり言って鈍足だ。
頑張って自転車程度、1日最長4時間だ。だがまぁ、無いよりずっといい。
マウマウは帝国領ではありふれた移動手段で、特に免許や申請が必要な動物ではなく、どの町にも大抵数カ所レンタルしてくれる店がある。勇者様等が乗りこなす馬っぽいヤツに比べて、町娘でも気軽に借りられる乗り物だ。
とりあえず今日の所はこれで2つ先の町へ行き、峠を下り来るだろう勇者パーティを待ち伏せよう。そんな予定で領都を発った。
このタイプの騎獣さんはあまり急がせ過ぎたりすると、一気にやる気が落ちると共に平均速度も落ちるので、適度な休憩を与えつつ背に股がって先へ進んだ。昼過ぎには隣の町へ、日が落ちる頃には予定通りに更に先の町へ着き、いつも通りのランクの宿で一先ず私は落ち着いた。
次の昼には峠の先から勇者様達が見えるだろう。
そう私は予想して、町で時間つぶしをしたが。そこで1日が経過する時間になっても、彼等の姿が見当たらない。
——もしかして、間違えた?
と、もう一方のルートを思うも、いやいや、絶対こっちへ来るよ、と直感が告げてくる。
——これは、あるいは何かの“事故”が…起きちゃったパターンか…?
ふとそれに思い至ると、私はいそいそ準備を始め。
門番さんの隣に腰掛けたおじいさんから「この時間から外に出るのはやめておきなさい。峠にはたまに山賊が出るんだよ」との、情報を貰いつつ。
実はわたくし、すごい魔獣と契約してたりするんです、と。
ニヤリな笑みを迫真の演技とかで浮かべてみせて。
するっとゲートを突破したなら、そのまま闇夜に続く道へと、勇者様を追い消えたのだ。