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勇者の嫁になりたくて ( ̄∇ ̄*)ゞ  作者: 千海
18 クラーウァの丘
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18−8



 丘で四つ葉をあげてから、それきり黙ってしまった人をどうしようかと伺って…尚もチラリと伺って、困った顔をしていたら。そのうちに、ぼんやりとした瞳が動き、真っすぐこちらを見定める雰囲気が漂ったので。私の方は居たたまれずに、その場で小さくなっていた。

 勇者様、どうしたんだろう?———訝しく思っても、ちょっと上げてぶつかる視線にどこか真剣な色が見え。ついでに何かゆらゆらと揺れ動くものが混ざる気配に、“わからない”私の方はただ困惑するだけだ。


——いや、別に、今回のコレはお礼とかいらないです、よ…?


 プレゼントが主旨のお祭りなのだし、この丘の四つ葉ちゃんにそんな効果がある、だとか。たぶん、誰も知らないだろうし、そういう文化が無い世界なら、探そうとしたのは私だけ。

 突き詰めれば、つまり、事故。

 幸いなのは、幸運寄りの事故だった。と、いう事で。


——そろそろちょっと…そういう真面目な雰囲気とかを……。


 どうか仕舞って貰えませんかねぇ…?

 と。

 シリアスが苦手な私はタジタジになり。


——そういや、前の世界の夫な人も…真面目な人だったよなぁ。


 と。苦く笑う、で苦笑して。

 すると目の前の勇者様、すっかり困った様子の私に、漸く気付いてくれたらしい。

 すぐに、すまない、と小さく言って。


「…埋め合わせは、いつか、必ず」


 そんな味気ない返答を口に乗せるものだから。

 固い表情を張り付けながら、今も何かゆらゆらしている不可思議な人を見て。困惑も困惑で、一周回って笑いが戻るお気楽な私の方は。


「どうせなら喜んで貰った方がいいかな〜っていいますか…そういう“埋め合わせ”の方が嬉しいっていいますか」


 と。

 よっ、と腰を持ち上げて「勇者様てば、堅い、堅い」と。丘の上に広げたままの敷物を目指すついでに、すれ違い様、めちゃくちゃ気安くポンポン腕を叩いたりして。

 斜面をちょっと登った所で。


——うわっ。これってセクハラ未満…か…!?今現在の親密度だと…スキンシップは御法度かしら!!?


 そっちの方へと思考が逸れた残念な私の方は。

 堅い、と言われてハッとした後、それでも揺れる想いのままに、ただ困惑に翻弄される真面目な人を…。

 最後まで目にする事は、なかったのである。




 その後、丘に居座るあいだ広げまくった私物らをそそくさと片付けたベルさんは、やっぱりどこか変な感じの勇者様を連れ立って、時折オレンジが照りつける坂道を、無言のままに下って行った。

 さすがに村の広場まで隣を歩く勇気はなくて、既に閉じられ片付けられた登り口の柵を越えると、じゃあ私はこの辺で、と右手をあげてサヨナラを。ここで躊躇う動きを見せて呼び止められちゃ困るしなぁ…とか。まぁ、無いとは思うけど…と、一応否定を入れながら。気持ち早めに足を動かし、遠回りして宿屋に戻る。

 もともと無口な方だけど、それにしたってあの雰囲気はかつてなく変だよなぁ…と。一晩寝たら治るかな?とか、勇者様の事を思って。


——あっ、村を出る前に蜜酒を買っておかなくちゃ。


 ああ見えて甘いお酒が好きなイシュのお土産に丁度良い。

 と、そんな事も考えながら。


 まさかその時、これまでとは比べ物にならない程に、彼の意識が急激に変化している事を…。

 露ほども知らない私は、鼻歌まじりに道を行く———。



*.・*.・*.・*.・*.・*


 勇者の嫁になりたくて。

 異世界からの転生者、ベルリナ・ラコット18歳。

 その場の空気に耐えられず、意地で探した巨大な四つ葉を勇者様に渡してみたら、上げ方が確定されてない“幸運値”を上げちゃって…。

 とんでもない事しちゃったみたい☆と、ちょっと反省したけれど。

 良い事故だから気にしない!と思った私は…やっぱり心の太い娘(こ)?です。

ベルの無言の告白にどうぞニヤッとしてください。

それでは続きへどうぞ。

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