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研究所の一角で小休憩を取った後、パーティはボス戦フロアまで順調に進んでいった。
順調と言ってみたけど、大きな怪我がない、辺で。時間のロスはそこそこあった。
彼等の平均レベル的には楽勝のようなダンジョンだけど、前の世界のゲームのようにサクサク進んで行けない理由。それは、モンスターの攻撃の自由度が高い事、加えて種類が多い事、だ。
徘徊場所の制限も一部のダンジョンを除外して殆ど無いようなものなので、うっかりすると高密度でエンカウントする場合がある。
このダンジョンはモンスターの湧きが早いという点と、人造の動物達がモデルのせいなのか。モンスターとしては珍しい連携攻撃を得意としている風である。
さすがに入り口付近ではエンカウントも単体だったが、中ボスを過ぎた頃から複数体になってきて、ボス戦を目前にするフロアの辺では、細かな連携をするように。
力押しで押し切れなくもないけれど、何となく厄介な雰囲気だ。
そういや此処も冒険者には余り人気が無かったなぁ…と。勇者パーティの仕事柄、他の冒険者な人達と滅多に重複しない現場を今更ながら思い出し。今回はギルド依頼の仕事じゃない系なんだけど…と。結局奥まですれ違わない、閑散とした現場を思う。
——まぁ、そんなことを考えたって詮無いって話ですよね。
少し前、シュシュちゃんが打ち抜いた人面鳥の死体を横目に。
全く、昔の人達は何造ろうとしたんだか…と。消失が起きるまで暫くそのままなのだろう、苦悶に満ちた表情で横たわるそれらを越えていく。
おそらくメインな生き物を培養・育成していただろう厳重管理なエリアへと。彼等が足を進める後を、それとなく付いて行く。
あまり岐路の無いダンジョンなので、彼等がスルーした部屋とかを確認して戻っても、戦闘中なその場所にすぐ追いついてしまうのだ。
そうしているうち景色が変わり、更に厳重管理なエリアに足を踏み入れる勇者様。
古代語とか言われる文字で“関係者以外立ち入り禁止”と書かれたドアを——まぁそのドアは半壊なのだが——、素知らぬフリで通り抜け。すぐ先にある昇降機(エレベーター)にメンバーが乗り込んだ。
エレベーターの行き先表示で彼等が降りて行くのを見遣り、移動を終えた気配がしたら自分用にボタンを押して。ほどなく着いたエレベーターにいそいそと乗り込んで、一つしか無い行き先ボタンを「ポチッとな〜」と押したなら。窓の無い薄暗い箱はゆっくりと下降を始め、数十秒後、私をその地に誘った。
一歩踏み出し廊下に出れば、いやに光を反射する白塗りの床面は、アクリル板に似た素材で出来ていて。よほど此処が特別なのか、その先にある扉の向こうを悟らせない無風景。
所長室です、と言われれば納得するような気もするし、会議室です、もいけるだろう。まぁ、ボス戦のフロアしか残っていない訳なので、その先が研究室であるというのはバレバレだけど。
そんな味気ない廊下を進み、ドアの前に立ったなら。
「ほんっと!しつこい!!」
という、苛立つ少年(かれ)の声がして。
ピピッ、フォアン、なドア開閉の効果音後(のち)、トゲトゲの枝に追いかけられるソロルくんが目に入る。
——ええっと…アレだ!アルラウネ!!
ボス戦のモンスター等がそっちに気をやってる隙に、私はササッとフロア・イン。入り口から一番近くの物陰に身を潜め、そろっと顔を覗かせた。
※無風景:たぶんそんな熟語?は無いです。雰囲気でどうぞ。




