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私がこのファンタジックな世界に、何の因果か転生をして、ダンジョンなるものがあるのを大体理解した頃に、不思議に思った事がある。
今居る大陸のみならず、この世界には多くの“ダンジョン”と呼ばれるものが存在しているのだが、とりわけ、“機械塔”なる高レベルダンジョンと、“研究所”と名のついたサイエンティフィックなその場所が、異彩を放っているような気がしたのであった。
もしかするとその不和感は、元々、魔法の要素が無くて、科学が発展していた場所で生きた記憶のせい…だったのかもしれないが。
たまに、どこそこのパーティが機械塔に挑戦したらしいぞ、などと風の噂を拾ってみれば、何の疑問も持たれずに、この地に生きる人々に受け入れられているんだなぁ、と。
もちろん、魔法がメインの世界だからと言って、機械仕掛けの製品が皆無という訳ではないが。何かをどうにかする事により、メカニカルな製品はその殆どが魔力と融合していて、この時代にも違和感無く収まっている…風である。
むしろ、100%純粋なメカニック製品にお目にかかった事が無かったり…なので。魔法があるのに、そうした物理的な技術というのが発展する余地というのが、過去の歴史にあったのかなぁ…?と。激しく疑問に思うのだけど、残された記録は無いし……だから、私の中でだけ。
で、少々話がズレたけど。
ルーデル第三研究所、という少し変わった名前のそれは、第一、第二研究所に次ぐ三番目の元・施設である。
雰囲気的には、前の世界のSF系…バイオハザードな生き物が、モンスターとなり徘徊している風である。
見た目的には“魔属性”だが、まだ実体を感じられるという点で、意味不明な怖さ…は薄い方だと思われる。この世界、恐ろしい事にリアルな魔属性さんは、低レベル帯のうちから精神部分に攻撃をしてきたりする奴なので…。ゴースト等とはまた違った怖さがあると、実は思っていたりする。
そして、お姉さんが語った所の“テンタクラー”なる敵は、ダンジョン奥のボスであり、触手系な奴である。
確か、第一研究所のは水棲系の触手さま、第二研究所のは植物系の触手さま、第三研究所のは動物系の触手さま…と思い返してハッ(゜口゜;)として。
——あ。まずい。ちょっと…というか、ヴィジュアルが……がっつり下ネタなボスさま、かも、ね…?
それを知ってかしらでか、で、さっさか進む勇者パーティの後に続いて。
何と言うか、いたたまれずにそっとその場で視線を外す。
ガチでそれだったらどうしよう…?だが、ここで変に後を追わねば逆に怪しま……いやいやいや!と。
——べっ、別に18なんだし、知ってたって変じゃないでしょ…!?
無性にどこかの誰かに向かい、言い訳っぽく叫んでみるが。
——でっ、でもでも!でも、ですね!!前の世界の夫のそれしか見た事ないっていいますか…!!
と、妙に正しく思い直して直後項垂れる私が居たり…。
なので、どうか、お願いだから、下ネタなボスじゃありませんよう…!!!
そう、ダンジョンに入る直前、神に祈っておいたのだけど。
いかにもゾンビな中型犬や、スライミーな奴を見て。
あっ、大丈夫かもしれない、と。
中ボスもキマイラ的な合成動物だったので。
やっぱり、大丈夫かもしれない、と。
暫く進んだ通路の先で、線の細いお姉さんが、ちょっと休憩しませんか?とか。
言って足を止めたので。
ついでに私も物陰で、腰を下ろしてみたのであった。