表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の嫁になりたくて ( ̄∇ ̄*)ゞ  作者: 千海
15 アーリアナ大空洞
156/267

15−9



 ダンジョンの変質による“武器の腐食”問題を、無事に次の得物を手にしてクリアした前衛二人。槍のお姫様に怒鳴られて、見逃して来た通路の遺品探しはまた今度、な雰囲気が漂ったのだが、私がすかさず埋めてきました!と手にしたそれらを差し出すと、しぶしぶながら「感謝する」と言い勇者様が頭を下げた。

 いいえ、私もマップを埋めて、このぶんだと地図が売れますからね!

 簡易地図でも喜ばれそうな難有りの大空洞。だからこその臨時収入ですよ!とちょっと嬉しく語ってみれば、まるで「こいつ太いな」という心の声が漂う無言に、勇者様はほんの少しだが詰めた息を吐いた気配だ。

 図らずも神器を手にしたライスさんだが、その時が来るまでは秘密にして欲しいな、と。むしろずっと秘密にしたい、な雰囲気をビシバシ飛ばし、パーティのメンバーは「了解した」と頷いた。

 ソロルくんが帰りがけ、お前が言った腐食のことを実際に見てみたい、的な話を振って来たので、何本かの短剣(ナイフ)を引き抜き、それをブラブラさせて歩いた。

 植物等を採取するとき切断するのに使ったりする“鉄のナイフ”を先頭に、その他この世界に存在している何かの金属元素を含む改良されたナイフの諸々が、まぁだいたい値段に合わせて次々腐食する図を見遣り、彼等はしっかり納得をしたらしい。最後に残った“無銘のナイフ”をソロルくんが手に持って、複雑そうな顔をしながら二本をぶつけて確かめたので。


「良かったらそれもあげますよ」


 と。予備に持ってりゃいいじゃない、と何気なく呟いた。

 すると。


「…なぁ、お前、何でこんなの持ってたんだよ?」


 と変な事を聞いてくるので。


「その辺で拾ったんですよ」


 と、いつも通りの答えを返す。


「こんな質の短剣を、んなに何本も拾うものかよ」


 やけに小さい声音のままに、食い下がって言ってきたので。


「まぁ、そう言われても…こうして実際拾った訳で、私に他意とか無いんですけど…」


 同じく小さく呟けば。

 少年はチッと舌打ちし、話し止める事にしたらしい。


 そのまま何の問題も無く、入り口に近づいた頃。

 ギルドより借り入れた少年少女の浄化アイテムが、腐食により壊れるというアクシデントが起きたりとかして。残り百メートルな入り口までの直線帰路を、彼等は大変苦しい思いで歩き抜ける事となる。

 ダンジョンを抜けて直ぐ“毒消し”を飲んだ彼等は、幸いな事として“解毒”スキルを手に入れた。対する大人三人は、どうやら“順応”スキルというのを獲得したらしい。

 まだ日が落ちていなかったので、近場の村に取って返して。

 翌日、最寄りのギルドに寄って、勇者様は報告をした。

 洞窟系ダンジョンの“変質”は二百年ぶりの発見らしく、そのギルドのギルド長は慌ただしく消えたという。依頼達成の判を押されて感謝の言葉を受けた彼等は、引き止められる気配を悟り、隙を突いて町を出た。

 取れた宿屋でホッとしながらぼんやりしていた私の元に、いつぞやの青い小鳥がふんわりと飛んできて。


「今夜発つ」


 な深良い声がそこから漏れ出てきたのなら。


——おっ、教えてくれるんですか??えっ、なんで?どうしてです?(//・_・//)


 なちょっと嬉しいパニックに、顔と心をふにゃりとしながら、私はいそいそ荷物をまとめ。こっそりと、素早い動きで町を出ていく彼等の後ろを、早足で追いかけた。

 たまにチラッとこちらを伺う黒髪の勇者な人に、うわぁ、うわぁ、とドキドキしつつ。

 ホント、夜で良かったですよ、と。

 赤い顔をしているだろう自分の姿が見えない事を、感謝しながら付いて行く。



*.・*.・*.・*.・*.・*


 勇者の嫁になりたくて。

 異世界からの転生者、ベルリナ・ラコット18歳。

 ちょっと優しくされたりすると、舞い上がってしまうんですよ…!!

 だから私は悪くない…!悪くない筈なのですっ!!

 とか。思ってしまった夜なのでした。

今回は特に残す話も無いので…いつも通りアイテム話を。


魔竜の腕輪:魔種に属する竜である魔竜の皮で作られた腕輪アイテム。実はただの魔竜ではなく、魔竜の最上位、五公爵アル・ケイオスが竜化した時の皮製なのだが、そこまで勇者が読めているのかは不明である。革を繋ぐ金属部分と剣のチャームは魔皇石(まこうせき)で出来ており、魔力を流すとそれらを核に魔剣が創造される。ベルは魔鉱石と思っているが魔皇石(まこうせき)が正しくて、こちらも実は魔王様しか生み出せない石だったり…とか。その昔、血気盛んなアル・ケイオスが煩くて、魔王さまが戯れに相手をしたが、もちろん圧勝で終わると共に「お前の皮を寄越せ」なノリで。制作者さえ魔王様という、だいぶレアな武器アイテム。


神槍・娑羅流々花:シャラルルカ、という精が宿った神器レベルのお槍さま。ボス戦フロアの奥の辺りに何となく落ちていて、土で汚れてはいるけれど凛として綺麗な槍だなぁ、と、ライスさんが一目惚れ。貴女様を持ち帰っても良いですか?と紳士の礼を見せた相手に、うむ、と彼女は心で返し、触れた所で把握した相手の技の熟練度とか、手入れをこまめにしてくれそうな性格とかを理解したなら、妾を扱う事を許すぞ!と「所持」を許可。苛烈な感じの性格とは裏腹に、宿属性は「風・水・木花」。さらるるか、と読んだりすると怒ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ