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勇者の嫁になりたくて ( ̄∇ ̄*)ゞ  作者: 千海
15 アーリアナ大空洞
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15−2



 今となっては“元”が付く、エルフの聖地と呼ばれた巨石群(メガリス)があった地を、不可視化魔道具(インビジブラー)で切り抜けた勇者パーティ+αは、一路ティンブルまで足を戻すと幼なじみをそこに置き、あとは何も無かったように東への旅程を取った。

 やはりというか、想定内で。大地が浮いた!そして降りたぞ!?な浮遊都市(エルファンディア)への渡航手段は、ネルドリア国内に留まらず大陸中を駆け回っている…ようである。現時点ではそれが浮遊都市に行く手段の一であることまでは未だ知られていないのだけど、イシュの秘書殿を筆頭にしたエルフ国再建チームは、大陸に散った七つの里にさっそく使者を出したらしい。忙しくなるよ、と言った魔道具越しのイシュルカさんは、しかし言葉の所々に嬉々とした音を込めていて。まぁ、楽しそうで何よりです、と私は心で呟いた。

 そうして、気付けばパーティは、ネルドリア王国の城下町を経由して、隣国・アルワナ王国の国境(くにさかい)に着いていた。

 何やら、国で一番に冒険者の出入りが多い先の城下町のギルドにおいて、ちょっとした依頼を受けたらしい。その依頼を念頭に、目的地まで移動しながら随所随所で話を聞けば、なるほど、どうやら“大空洞”で何かが起こっているようだ。これはしっかり確認をして他の冒険者に知らせなければ、と。東の勇者パーティは大空洞への準備を決めて、さっそくこの地に立っていた。


 アーリアナ大空洞。


 元々あった洞窟を掘り進み、遠い昔の人々が隣国へ攻め入る道とした、ものらしい。

 今は途中で崩落し、元の出口へは続いて無いが、そこそこの深度をもった洞窟系ダンジョンとして冒険者に広く知られているという。

 洞窟系は人気がないが、広く知られる、その理由。

 このダンジョン、通常装備が毒の霧、というやつなのだ。

 一歩入れば状態異常。回復しても回復しても踏み出す度に毒状態。

 このダンジョンを攻略するには解毒スキルを獲得するか、毒浄化——あるいは解毒、そして無効化——アイテムを装備する他ないのである。

 ここへ来るまで小耳に挟んだ話によると、さすがに人生経験豊富な大人の皆さまはしっかりスキルを獲得しており、あとはソロル氏とシュシュちゃんの二人分のアイテムを何とか手に入れようという雰囲気だった。それも少し前のギルドにおいて手配とかが済んだらしくて、レアな囲いの毒浄化アイテムを冒険者ギルドより借り入れての挑戦になる。

 追っかけの私の装備は、その昔、イシュがどこかから手に入れてきた遺物扱いの防毒面(ガスマスク)。

 どう?これ、何かの呪いのアイテムに見えるでしょ?———と言い、したり顔をした幼なじみに、あははな苦笑を言って返した記憶が鮮(せん)に甦る。ベルにあげるよ、と申し出られたので感謝を述べて頂いたのだが…まぁ、使う機会があって良かったと思う事にしよう。

 見た目はコレでもファンタジーな世界のもので、しかも遺物級である。使うにしても吸収缶(フィルター)は大丈夫かな?と当時の私は心配したが、フィルターこそが技術の高い魔法陣で出来てるんだよ、と言われれば。陣を維持する魔力の辺りは大気に漂う魔気云々…「まぁ、この世界から魔気が無くならない限り、壊れることはまず無いんじゃない?」な恐ろしい回答に、あぁ、だからこその遺物級…(´ー`;) と汗を流した思い出が。

 そう言う訳で。

 ソロルくんとかレプスさんにはすこぶる受けが悪いようだが、ガスマスクさまは素晴らしい装備品なのである。


 そんなこんなで大空洞の入り口付近に立った時、いそいそと装備を決めた木陰の私の様子を知って、勇者様は取りあえずだが「来るな」と言うのをやめたらしい。

 ここへ来るまで“いつ注意を促そうか”な彼のチラ見光線は、しっかり私に届いていた訳だ。だが嫁の地位を狙う私は、そんなに柔には出来ていない。

 今回ばかりは付いて来るな、な、つもりの彼は、私の装備を目の当たりにし、少し溜め息に似たやつを零しそうな雰囲気だったが。取りあえずでもそれを言うのを飲み込んだようだと知れば、ごめんなさーい、な慣れ慣れ口調で内心だけに謝罪を入れる。

 そして、隠れるな!本気で気味が悪いから!な少年の我が侭を聞き、足踏みだけをこっそりと、見た目でいうと堂々と、私は彼等が戦う背後をじわじわ付いて行ったのである。

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