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14−5



「空魚(スカイフィッシュ)って、こんなにバリエーションに富んでいたんだなぁ」


 とあるフィールドに突入し、さっそくエンカウントしたモンスターの姿を見遣り、ライスさんがのほほんと言う。視線の先には色とりどりの胴体に、多種多様な翼が生えた浮遊する魚体が五体ほど。


「あの翼、一通り種類を揃えて売ったら結構なお金になりそうだ」


 あぁ、根元に薄い宝石を付けて栞にしたり、羽根ペンに加工するのもいいかもなぁ。

 ぽつりと呟く幼なじみに、商人の魂ここまでか…!と。驚愕なのか感心なのか微妙に不明なラインで以て内心で突っ込んで。


「すみません、商品にしたいので、羽根部分を残すように倒して貰っていいですか?」


 な、性急な要求に、一人「ははは…」と空笑う。

 初対決間違いなしな相手に対し、最初っからこっちの戦力抑えながらで戦うのかよ!?と、何だかいろいろ疲れそうな要求なのに、勇者様らは自然に頷き受け入れた。

 もうね、懐の大きさとかが半端ないです、勇者様!!

 と。一人のままで感動を覚えていると、スィという背景音が似合いそうな物腰で、空魚の群は空中を優雅に泳ぐ。


——うわ、早い…!


 ここは海です、オレ等の庭です。前の世界の海中を行く立派な鱗のお魚さんが、まるでそんなことを言うように。空中が庭のお魚さん等は散けながら我らをぐるりと取り囲み、攻撃の隙を伺っているようだった。

 ほどなく交戦し始めた東の勇者パーティは、初めこそ魚の動きに少々翻弄されていたけど、動きのコツを掴んだらすんなり止めをさしに掛かった。五体のうち四体は比較的低地を泳いでいたのですぐに勝負がついたのだけど、うち一体は攻撃を受ける度、上空へと逃げるので。時間が取られて何となく厄介なタイプだなぁ…と。気が短めの私はふっと、レプスさんの攻撃を上手く避け、またしても上空へと逃げ果せた黄色の一体を振り仰ぐ。


「レベルの割に回避能力が高いなぁ」


 と、ぼんやり気味に呟いたライスさんに同意して、幾人かが無言のままに頷いた。

 それを受けてか、算盤(そろばん)装備のお隣の商人さんが。


「さっそく僕の出番のようですね」


 と、にっこり笑い。

 スッと掲げた算盤に、ふと表情を真面目に戻して、瞬間、ジャザッとそれを振る。


「ご破算で」


 やや沈黙に包まれていた空間に、イシュの声音は良く響き。

 続く耳慣れた。


「願いましては」


 の呪文の後に。




「金貨200枚也———!」




 と、唱えた彼は。

 この時、最も神々しくて。

 よく考えれば暴挙と思える金銭的な発言に、一同、遅れて頭が真っ白になる。

 加えて“声”に反応し、シャリンなよくある効果音が厳かに原野に響き渡ると、顕現した効果というのが。

 俺の装備はコインだが?な前の世界のゲームよろしく、硬貨サイズの丸穴が開く物理攻撃が打たれた後に、中空に現れた黄金に輝く閃光が追い撃ちをかけるがごとく地面に向かって降り注ぐという…中々えげつないですね…な攻撃なのだった。


——物理攻撃と魔法攻撃が同時に来たよ…。


 一度で二度おいしい武器か…と、我に返ってしみじみ見ると。


「とまぁ、僕の武器はこんな感じで。初戦だったのでちょっと飛ばしてみましたが」


 という爽やか笑みが返される。

 それを受けたソロル氏が。


「…戦える商人って初めて見た」


 と、夢うつつ気味に呟いて、コクッ、コクッ、と間違いなく二度シュシュちゃんが頷いた。


「初めて見る攻撃でござる。物理攻撃と魔法攻撃が一体になって降るでござるか?」


 同じ事を思ったらしいレプスさんが質問すると、イシュは首を横に振り。


「いえ、見た目はアレなのですが、一応、無属性攻撃に含まれるみたいです」


 と、手に持つそれをジャッと振り抜き、元の鞘に収めにかかる。


「この武器での攻撃はレベル依存ではなくて、口にした金額依存の威力を発揮するものなので…」


 まぁまぁ僕も役に立つと思われますよ、と。

 サラッと言ったセリフの内に「うわぁ…」な要素を嗅ぎ取って、いそいそと死体の羽根を毟りにかかる幼なじみの背中を見遣る。


「手伝いますよ」


 な声を掛けると何もしてない私はささっと空魚(スカイフィッシュ)の羽根毟りに参加して、少しでも進む時間の短縮を!と、イシュの要求を受け入れてくれた勇者様に恩返し。

 モンスターにエンカウントするものの、相変わらず朗らかな雰囲気漂うフィールドに。


「こんな場所なのにモンスターと交戦しなきゃならないなんてな…何だか変な気分だよ」

「人の気配が全く無いですからね。踏み荒らされた形跡が無いこういう場所こそ、聖地だという気がしてきます。モンスターが湧くなんて考えられないくらい、美しい平野ですからね」


 という、ライスさんとイシュによる和やかな会話を耳にしながら。

 幾度かのエンカウントにもちろん勝利で幕引きをして、3度ほど浮き島を渡った頃に、我々はようやく目的地らしき構造物を頂く島を眼前に収めたのだった。

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