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「すまないでござる、ベル殿。魔法使い用の杖を持ってないでござるか?」
「ありますよー。って言っても1本しか持ってないんで選べませんが……」
「充分でござる。今は初級者用の木の杖(ウッド・ステッキ)でもありがたい。ダンジョンを抜けるまで借りてもいいでござるか?」
「かまいませんよー、レプスさん。私達の仲じゃないですか♪」
心底困ったという顔をして、真っ白い兎耳をひこひこ動かしながら魔法使いのおじいさんが頭を下げた。その手には折れた星型ステッキがあり、先の戦闘で杖を破損してしまったらしいことが伺い知れる。
私はおじいさんへ向けた視線の延長線上に世界一愛する勇者様が入るようにすかさず体をずらし、銘入り高級革袋(ブランドバッグ)からブツを取り出す。
*.・*いつ見てもひこひこお耳が可愛いわー*.・*
さり気なさを装ってしっかりそれを見つめる私。
名前をベルリナ・ラコットという、ごく普通の18歳。
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ごめんなさい。
嘘いいました。
何故か毛先だけふわっとカールする茶色の髪に茶色の瞳の容姿を持つ、ごくごく普通の女子なのですが……。
実は私、異世界からの転生者。ついでに前世の記憶を持っていたりするんです。




