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「そういえばこの近くだったよねぇ、ユノマチは。急ぎの仕事も入ってないし、少し寄って行かないか?ソロルもベリルも初めてだろう?」
「え、いいの?僕、名前しか知らないんだよね。温泉っていうのがあるんでしょ?」
「そうでござるよ。確かに、しばらく休みをとっていないでござるから。どうであろうか、クライス殿」
砂原(さげん)を抜けて、やや緑が戻ったフィールドで、薄暗くなり始めた空間に焚き火を囲び、彼らの中に不意にそんな話題が上がる。話を振られた黒髪勇者は考える素振りをみせて。
「…それは私も行ってみたい」
な、金髪ポニテの少女の声で、そこへ行くのを決めたらしい。
「余り長居はできないが」
そう言って進路を変更し、東に向かうルートを逸れて温泉郷へと向かう姿は、いつもと同じ筈なのに五割増しで良く見える。
*.・*やりました!温泉です!!あわよくば浴衣な彼を激写です!!!*.・*
あ〜、何でこの世界、技術は充分ありそうなのに、写真が発明されてないかな。
あったら絶対隠し撮るのに。
はっ。それって犯罪か…!!?
危ない、危ない、お巡りさんに捕まってしまうとこだった…と、ぎりクールダウンした私。
名前をベルリナ・ラコットという、ごく普通の18歳。
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なーんて言ってみましたが。
ふっふっふ。実は最近、勇者様に名前呼びとか許されちゃったりしたんですよね〜、私てば。
彼のファンなら間違いなく羨むだろうこの待遇…!!
ごく普通の18歳→名前呼び許可有り18歳、に変更ですよっ!
とテンション高めな私ですけど。
その実、中身は異世界転生者。
記憶とかもあっちゃったりするテンプレ凡人乙女です☆