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木漏れ日が射す林道を行き、木々の密度が薄まってきた空間に、大きな屋敷が建っていた。
古びた柵の門を過ぎ屋敷の玄関へ歩いて行くと、明るい空が段々暗くなっていく。
いつも思うが、ダンジョンのこういう所が嫌だよなぁ…。
妙に凝ってる造りというか。
わざわざ怖い空気というのを作らなくてもいいのにな。
おそらくジト目になっただろう己の両目を思いつつ、早くパーシー来ないかな、と立ち止まって待ってると。何故か黒い魔獣さま、一向に現れず…。
勇者様らが屋敷に入って結構時間が経った後、そろそろ追いかけ始めたいけど…うぉおい、パーシー!!(( ;д;))どこ行った!?と。そこから更に数分間待ったけど、やっぱり黒い魔獣さま、一向に現れず。
そして。
——お化け屋敷といかずとも、アンデッド系がうろうろしてると聞いていたこちらとしては、できれば付いて来て欲しかったのに!!!
私は涙目になりながら、これ以上は待てないです…と仕方なしに歩みをとって、玄関の方へと向かって行った。
ほどなく着いた玄関先には珍しく人の姿があって、職員さんぽい服装に一応声を掛けてみる。
「このダンジョンに入ろうと思うんですけど」
そう語った私を眺めて、青灰色の髪をした職員さんはニコッと笑う。
「ここはレベル25付近のモンスターが出るダンジョンだけど…君ひとりで大丈夫?」
「はい。たぶん大丈夫です」
次は冒険者カードの提示を求められるかな、と鞄に手を入れ準備をすると。
「ん、了解。じゃあ扉を開けるから」
と、あっさり通してくれる感じで、軒に掛かった透かし彫りの二つのランプへ手持ちの火種を灯してくれた。
——おぉ、透かし模様がこの玄関の鍵なのか!
緻密な模様が施されている軒先ランプは、火が灯されると、光と陰を扉に浮き上がらせた。二つの模様は上手い具合に重なって、魔法陣を創出し、それを刻まれた扉が一瞬ほのかに光る。
それを確認した職員さんがドアノブに手を掛けて、扉を観音開きにし。
「気をつけてね。いってらっしゃい♪」
そんな言葉と満面の笑みで私は見送られたのだ。




