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ステップex. おいでませ! 階段下のマイホーム

 その後、階段下のあの場所、星奈さんの『家』はどうなったのかというと、今でもまだ、彼女の家のままだった。


 以前までと変わらずふたりの住む家。

 以前の住人のひとりである桜さんは、もういないけど。

 その代わりってわけでもないけど、今は一緒に住んでいるのだ。

 ……この僕が。


 あのあと、伯母さんはもうひと部屋くらい用意できるからと、星奈さんを自分の家に住まわせてあげることを提案したのだけど。

 星奈さんはそれを丁重にお断りした。


 ここには両親の思い出が残っている。

 ここには桜さんの思い出が残っている。

 だから、この場所に住み続けることを望んだのだ。


 この場所に、これからも住まわせてください。

 涙ながらのお願いに、伯母さんは当然ながら首を縦に振った。

 そんなわけで、星奈さんはこうして今でも変わらず住み続けている。


 僕のほうはといえば、みんなの前でキスまでしてしまって、小松さんが言ったみたいに完全な公認の仲となってはいたものの。

 いまいち進展できすにいる。

 といっても、少しは頑張ってみたのだ。


 なるべく星奈さんのそばにいたいと思う気持ちは、公認の仲となったことでどんどんと膨らんでいった。

 泉ちゃんの言葉に刺激されたというのもあって、その想いは爆発しそうなほどに強まっていたと言える。

 そのため、僕もこの階段下の家に住むことを申し出た。

 星奈さんに断られたらさすがに遠慮するつもりだったけど、彼女はほのかに頬を染めながらも頷いてくれた。


 前に一度、一緒の布団に入って夜を明かしたりはしたけど、ここはいつ誰が通りかかるかもわからない場所。

 いくら公認の仲になっているとはいえ、一緒の布団で寝るのはいくらなんでも恥ずかしい。

 なので、僕は伯母さんの家から布団を持ってきて、星奈さんの布団の隣に並べている。


 未来がどうなるかはわからないけど、泉ちゃんのいる未来の世界へと正常につながっていけるように、僕は星奈さんとともに歩んでいくつもりだ。

 もっとも高校を卒業したら、ここに住み続けるわけにはいかなくなるだろう。

 でも僕は、心に決めていた。

 少なくとも卒業するそのときまでは、星奈さんと一緒にここで暮らしていこうと。


 そう、この階段下のささやかなマイホームで。



 ☆☆☆☆☆



「おーおー。今日もふたり仲よくお話中ですかぁ~?」


 黄色い声を上げているのは、言わずもがな、中和田さんだった。

 その横には鯖月が寄り添っている。

 そのふたりがいれば、当然のごとく初吉さんもいる。


「あははっ! 放課後になったと思ったら、すぐにこの場所にこもってお話タイムだもんねぇ~。毎日毎日飽きもせずに……。夜寝るまで話し続けてるんでしょ~?」


 小松さんも笑いながら明るい声を飛ばしてくる。


「まったく、暇な奴らだなお前たちは。ま、お似合いのカップルってことか」


 鳥河がそう言いながらデジカメを構える。

 なんというか、校内新聞でネタにされることにもすっかり慣れてしまっていた。

 そのせいで、クラスメイトだけでなく、学校中の生徒たちが様子を見にやってきたりするようになっているのだけど。


「というか、そういう鳥河たちだって、こうしてここに集まってきて毎日毎日飽きもせず、暇な奴らじゃないか!」

「まぁまぁ、いいじゃないか」


 そう言いながら、鳥河はパシャリとまた一枚写真を撮る。


「ふふふ。せっかくですから、キスシーンも写真に残しておきませんか?」


 おっとりした感じの声で、初吉さんがとんでもないことを提案してきた。


「おお、いいねぇ、ほら富永、ぶちゅっと!」

「うんうん、いっちゃえいっちゃえ! 校内新聞にでかでかと写真を載せて、全校生徒に仲のいいところを見せびらかしちゃいなよ!」

「あははっ! ほら詩穂、恥ずかしがってないで! ……もう、ダメねぇ、押さえ込んで無理矢理させちゃうよ?」

「え~~~~っ? それはやだよぉ~~~~!」

「なら自分でしなさい!」

「う~、でもぉ~……」

「ほら、早くぅ~!」


 面白がって囃し立てる中和田さんや小松さんの黄色い声に、上目遣いで僕のほうに向き直る星奈さん。

 そのまま目をそっとつぶる。

 ……って、こんな面白半分のひやかしの言葉に、なんで従ってるのさ!

 素直なのは悪くないけど……ってそういうことでもないし!


「早く~、じゃない! 中和田さんも小松さんも、からかわないでよ! ……鳥河も、デジカメ構えるな!」


 僕は恥ずかしさを紛らわすために、鳥河を追いかけ回す。


「うぉ! 富永が怒った!」

「あははっ! ちぇ~っ! せっかく詩穂が本気になってたのに!」

「あらあら、星奈さん、すごく残念そうな顔をしていますわね、ふふふ」

「え、べ、べつに私は、そんな……!」


 こいつら、僕たちをからかうことで楽しんでやがる!

 ……だけど、それは全然嫌ではなかった。これも、楽しい学校生活のひと幕だ。


 今日もそんな仲間たちのひやかしの声に包まれながら、僕と星奈さんのマイホームは明るい色に染め上げられていた。


以上で終了です。お疲れ様でした。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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宜しくお願い致しますm(_ _)m

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