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ステップ11 あっ、それは! 心苦しいプレゼント

 次の日、登校するといつものメンバーはみんなすでに教室にいた。

 僕が少々寝坊してぎりぎりだったから、というのもあるのだけど。


 昨日あれだけ魔流に壊された教室は、何事もなかったかのようにもとどおりだった。

 いったい、どうなっているのだろう?

 砦の魔流の件は、遠い過去の出来事ではなく、昨日あった現実のはずなのに。


 桜さんが霊力でもとに戻してくれたのかな?

 実際、あの破壊しつくされたままの教室では授業なんてできる状態ではなかっただろうし。

 気にはなったけど、普段どおりの教室になっているのなら、僕も普段どおりに生活すればいいだけだ。


「……おはよう」


 僕は一瞬躊躇したものの、主に星奈さんに向けておはようの挨拶をかける。

 躊躇したのは、いつもどおり星奈さんの席とその前の初吉さんの席に、中和田さんと鯖月のコンビと小松さんも集まっていて、お喋り中だったからだ。


「今日もいい天気だねぇ~」


 明るい声で、中和田さんが言う。その声は、いつもと変わらないように感じた。

 だけど昨日のことを忘れている、というわけでもないだろう。鯖月も小松さんも若干複雑そうな表情を浮かべているのだから。

 おそらくは、とりあえず昨日の件には触れないようにしておこう、といった感じなのだと思う。


 信じられないような事態だったのだから、それも当然の反応かもしれない。

 初吉さんに関しては、ほのかな微笑みを浮かべてほわ~んとした空気を作り出しているだけだから、昨日のことをどう考えているのかは想像もつかなかったけど。


「あははっ! 初吉さんって、ほんっと、お嬢様って感じよね~。すっごいお金持ちの家なんでしょ?」


 小松さんが楽しそうに笑う声に、初吉さんはいつもどおりのたおやかな笑顔を返す。


「うふふ。いえいえ、そんなことないですよ~。私なんかより、鳥河くんの家のほうがお金持ちなのではないかしら」

「え? そうなの?」


 僕は、ちょっと驚いた。鳥河がそんなお金持ちのお坊ちゃんだったなんて。

 そういえば僕は鳥河と仲よくしているけど、あいつの家のこととか、全然知らないんだった。

 鳥河もあまり自分のことを話すような奴じゃないし。


「そうだよ! この辺じゃ結構有名かもね。かなり大きな家だから! とはいっても、鳥河くんのお父さんは普通にサラリーマンやってるらしいし、単に昔はすごかったって感じなのかもだけど」

「確かおじいさんが昔、この学園の理事長をやってたはずだしな。でも、そういうことを言ったら、今の理事長は富永の伯母さんなんだから、富永こそ、現在最もすごい家柄って言えるのかもしれないよな」

「あ~~~~、そうだねぇ~! 富永くんと結婚したら、玉の輿? なんちゃって!」


 中和田さんと鯖月のコンビが、いつの間にか話題の矛先を僕の伯母さんに、そして僕に向けてきた。


「あのねぇ。僕の家はべつにすごくなんてないよ。ごく普通の家だし。そりゃあ伯母さんの家は、それほど大きくないにしても、綺麗な感じだけどさ」


 当然のごとく否定する。だって、僕の実家は本当に普通の家なのだから。

 普通どころか平均より下になりそうな気もするけど、その辺りはわざわざ言うこともないだろう。


「理事長さんといえば、よく学園内を見回っていらっしゃいますよね~」

「あははっ! そうだね~! それだけこの学園を愛してるってことなのかな!」

「いい人そうだもんね~。富永くんの伯母さんとは思えないよね!」

「あははは……、中和田さん、それはちょっと言いすぎ……。いくら富永くんだって、傷ついちゃうかも……」

「星奈さん、いくら僕だってって、それもちょっと……」

「あ……ごめんなさい!」


 そんな他愛ない会話。

 やっぱり友達っていいな。そう思える時間だった。


「理事長って、よく用務員のおじさんと話してるよな」

「あっ、そうだね~、あたしもよく見かけるよ!」

「実は恋仲だったりしてな……って、それはマズいか」

「あははっ! 富永くんの伯母さん、結婚してるもんね。不倫になっちゃう!」

「こらこら」


 ……なんだか、微妙に変な話になったりもしたけど。

 もちろん友達だからこそ、軽いノリで言っただけだ。僕もそんなことをいちいち気にしたりはしない。

 それどころか、一緒になっておかしな妄想話に加わって笑い声を上げるのだった。


 ふと、周りを見回してみた。

 このいつもどおりの輪の中に、鳥河が入っていないと思ったからだ。

 もっとも、いつでも一緒にいるというわけじゃないし、さほど不思議なことではないのだけど。

 ただ、鳥河はまだ登校していないというわけでもなかった。


 鳥河は星野さんと話していた。

 親しそうに話しているという感じにも見えない。どちらかというと深刻な表情にさえ思えた。

 僕の視線に気づいたからなのか、星野さんは、「あっ、もうホームルームの時間も近いし席に戻るね」と少しわざとらしくも思える大きめの声で言って自分の席に着いた。


「は~い、みなさ~ん、ホームルームを始めますよぉ~!」


 すぐにチャイムが鳴って、琴崎先生が入ってきた。僕も慌てて席に着く。

 ホームルーム中に少しだけ後ろを振り返り、


「星野さんとなにを話してたんだ?」


 と鳥河に訊いてみたけど、


「ん、ああ、ちょっとな」


 といった曖昧な返事しか返ってこなかった。


 休み時間になっても、やはり鳥河はいつものメンバーとは合流しなかった。

 チャイムと同時に素早く教室を出ていく鳥河。少し遅れて教室から出る星野さん。

 トイレに行ったりとかはするだろうし、べつに不可解な点はないはずだけど、どうしても鳥河と星野さんが僕たちを避けてどこかで話しているとしか思えなかった。


 鳥河の奴、いったいどうしたのだろう?

 気にはなったけど、隠れて追いかけるというのもさすがに気が引ける。


 鳥河には話していないけど、星野さんは僕と星奈さんの幽体、さらには幽霊である桜さんの姿を見て怯えていたことがある。

 その様子に鳥河が気づいて優しくしてあげている、というのもありえる話だろう。

 鳥河はあれで、面倒見のいい奴だ。僕に最初に話しかけてくれたのだって、あいつがそういう性格だからとも言える。


 星野さんは、優しく接してくれる鳥河のことを信頼して、いつしか仲よくなった。

 うん、そういうことなのかもしれない。


 星奈さんにそっくりな星野さんと、っていうのが僕としてはちょっと複雑な気持ちではあったけど、星奈さんと星野さんは別人なのだから変に意識するのもおかしい。

 それよりも、親友である鳥河に仲のいい女の子ができたことを喜んであげるべきだろう。


 それに、もし星野さんに危険が降りかかったとしても、鳥河がヒーローのように助けてあげられるかもしれない。

 鳥河自身もその危険に巻き込まれてしまう可能性はあるけど、星野さんひとりでいるよりはずっと安全なはずだ。

 僕がそんなことを考えてぼけーっとしているうちに、休み時間はあっさりと終わってしまった。



 ☆☆☆☆☆



 昼休みになった。

 いつもはお弁当を作ってもらっている僕だけど、今日はお手伝いさんがお休みとのことで持ってきていない。

 仕方がない、購買でパンでも買うか。

 そう思って席を立つと、不意に背後から声をかけられた。


「ねぇ、富永くん。……ちょっと今から、一緒に来てくれないかな?」


 星野さんだった。

 じっと見つめてくる深い真っ黒な目は、おとといの夜、校舎で向けられた怯えたような目ではなかった。

 なんとなく、強い意思のようなものが感じられた僕は、黙って頷いた。


「それじゃあ、行きましょう」


 僕が肯定の意思を示したのを確認すると、星野さんは抑揚のない声でそう言って歩き出した。

 黙ってついていくと、星野さんは階段を上り、二階、三階、四階……そのままさらに上を目指す。


「あ……あの、星野さん。屋上へ行ってもドア開いてないと思うよ?」


 屋上へのドアは、普段カギがかかっていて入れないようになっている。

 だからこそ生徒が通ることはほとんどない。

 誰にも聞かれたくない話だから、屋上のドアの前のスペースを目指しているのだろう。

 そう考えてはいたのだけど、黙ってついていくことに耐えられなくなって、思わず言葉を発してしまっていた。


 だけど星野さんはなにも答えず、ただ黙って階段を上っていく。

 僕たちは屋上へと続くドアの前までたどり着いた。


 と……。

 おもむろに星野さんがドアノブに手をかけて回した。

 ガチャッ。

 ドアは軽い音を立てて、すんなりと開いてしまった。


「あれ? 開きっぱなしだった? ってわけじゃないよね。……もしかして星野さん、あらかじめカギを借りて開けておいたの?」


 その問いにも、星野さんは答えない。

 でも、それはありえないように思う。なんの理由もなくカギを貸し出してもらえるわけはないからだ。

 とすると他に考えられるのは、カギを無断で拝借したか、それとも――。


 黙ったままの星野さんは、屋上へと足を踏み出す。

 風が髪を撫でて通り過ぎていく。

 それほど強い風ではないからか、スカートがたなびくのも気にせず、星野さんは柵状になっている屋上の端まで歩いていった。

 僕も黙ってそれに続く。


「えっと……、いったいなんの用なのかな?」


 僕に背を向けたままの星野さんに声をかける。

 なんとなく嫌な予感はしていたけど、相手はクラスメイトの女の子だし、危険だとはさすがに思えない。

 黙って振り向いた星野さんは、手のひらになにかを乗せていた。

 それは、ハート型の飾りがついたペンダントだった。


 手にそれを乗せて差し出しているのだから、僕に渡そうとしているのだろうけど、いったいこれはなんだろう?

 プレゼント……なのかな?

 だとしても、男の僕にハートのペンダントなんておかしいし、だいいちプレゼントなら包装してリボンでも掛けたりするのが普通だろう。


 僕が頭にハテナマークを浮かべていると、星野さんはそっとそのペンダントと僕の手に乗せ、ぎゅっと握らせてきた。


「これを……」


 僕の手が星野さんの手のひらに包まれると、なにやら妙な感じがした。

 なんだろう、この感覚……。

 そして星野さんは、僕の目を見つめ、


「これを、星奈さんに」


 と言った。

 ああ、なるほど。

 星奈さんへのプレゼントなら、ハートのペンダントっていうのも頷ける。

 ……って、そんなわけはない。


 どうして星野さんが星奈さんに?

 それに、星奈さんへのプレゼントだったとしても、包装もしていないそのままの状態だなんて。

 自分が使っていたものをどうしても使ってもらいたくてプレゼントするとか、理由をこじつければこじつけられなくもないけど、それでもやっぱり不自然だ。


「これね、鳥河くんの家から持ってきてもらったの。鳥河くんとは親戚みたいなもので、小さい頃はよく一緒に遊んでたんだ。私が遊びに行ったときに鳥河くんの家にこのペンダントを忘れて、そのまま引っ越してしまったのよ。まだ捨てずに取ってあるって言うから、こうして十年ぶりくらいに私のもとへ戻ってきたの」


 そうか、だから鳥河と話していたのか。

 小さい頃の記憶なのに覚えていたくらいだから、これは大切な宝物だったのかな。

 それなら忘れたまま引っ越したりするなよ、とも思うけど。

 まぁ、ちゃんと星野さんの手もとに戻ってよかった。


 ……あれ?


「でもそれなら、どうしてそれを星奈さんに……?」

「それは……」


 と、そこで星野さんは突然、言葉を切った。


「それよりもさ、もっと私の目をよく見て」

「え?」


 さっきから、じっと見つめ合うような体勢ではあった。

 恥ずかしさを感じて、僕は少し目を逸らしていたのだけど。

 それが星野さんの気に障ったということなのだろうか?


 そう思い、素直に星野さんの目をじーっと見つめ返した。

 やっぱりちょっと、恥ずかしい。


「もっと近づいて、よく見て」

「え……もっと?」


 これ以上近づくのは、いくらなんでも危険だ。

 いくら単なるクラスメイトといっても、相手は女の子で、しかも気になっている子と同じ顔をしているのだから。

 自分の理性が抑えられるか、正直わからなかった。


 そうは思ったものの、星野さんの真剣そうな表情に圧倒された僕は、高鳴る鼓動を抑えつつ、顔を近づけて瞳をのぞき込んだ。

 きらきらと輝く綺麗な黒い瞳――。


「もう、もっと近寄ってくれなきゃ……。いいわ、こっちから」


 そう言うと、星野さんはすっと背伸びをする。

 星野さんの顔が、ぐっと近くなった。

 距離がゼロになってしまうのではないかと思うほどの至近距離。そこで星奈さんは止まる。


 こんな近い距離で、女の子と見つめ合っているなんて。

 ドキドキドキ。

 僕はどうしていいかわからず、その場で固まっていた。

 と、星野さんがひと言。


「後ろ……」


 僕は反射的に振り返った。

 そこには――、

 星奈さんが、立っていた。


 目が、合った。

 その途端、星奈さんは走り出していた。

 ドアを抜け、階段を駆け下りていく。


「え……、なんで星奈さんが……?」

「それよりいいの? 追いかけなくて」


 えっ?

 再び振り返り、星野さんに視線を向ける。


「星奈さんの位置からは、キスしてるように見えたと思うわよ」


 ニヤッ。

 星野さんはそう言って笑っていた。

 僕は、すぐに走り出した。その手にはさっきのペンダントがしっかりと握られている。


「そのペンダント、ちゃんと星奈さんの首にかけてあげてね! 肌身離さず身に着けてもらえるように言うのよ~!」


 走り去る僕の背中を押すかのように、星野さんの声が届いてきた。



 ☆☆☆☆☆



 階段を駆け下りる。星奈さんの姿は見えない。

 とはいえ、階段を駆け下りていく足音は聞こえていたのだから、一階まで下りていったのは間違いない。

 僕は二段抜かしで、階段を駆け下りるというよりも、飛び下りるくらいの勢いで追いかけた。

 一階まで下りて辺りを見回す。


 ――いた!


 特別教室棟へとつながる廊下に、星奈さんの背中を見つけた。

 僕は再び駆け出す。


「星奈さん!」

「…………」


 答えはない。

 僕は必死に追いかけ、ほどなくして追いついた。

 思いきり右手を伸ばす。


「星奈さん!」


 再び呼びかけながら、左腕をつかんだ。

 星奈さんは腕を振りほどいたりはせず、力なく立ち止まると、僕のほうを振り向いた。

 その瞳からは……涙が流れていた。


「どうして追いかけてくるのよ! 星野さんと一緒にいればいいじゃない!」


 目は合わせず、声を荒げる星奈さん。


「星野さんとは、べつになにも……」

「嘘っ! だって、……キス……してたじゃない……」

「してないよ!」


 否定の言葉にも、聞く耳を持たない。


「嘘嘘嘘っ! あの子、私とそっくりなのに! 富永くん、胸の大きいほうがいいってことなんでしょ!?」

「え……?」


 なんでそうなるんだよ、と思ったけど。

 そういえば星野さんが転入してきた日にも、気にしていた感じだった。

 その日に現れた魔流も、なぜか星野さんとそっくりな胸が大きいシルエットで、そんな魔流に異常な対抗意識を燃やしていた。


 確かに星奈さんの胸は、ちょっと控えめな感じではあるけど。

 べつにそんなの、気にしなくてもいいのに……。

 僕としてはそう思うのだけど、女性としてはやはり気になってしまうものなのだろうか。


「星奈さん……」

「それに、れーこちゃんが言ってたように、私は半分、れーこちゃんの霊力のおかげで生きていられるだけ……。だから、半分死んでるようなものだし……」


 れーこちゃん……桜さん。

 昨日の話で本名は聞いていたわけだけど。取り乱した星奈さんにとっては、長年そう呼んでいた名前のほうが思わず出ていたのだろう。


 突然話の矛先が変わった感じではあったけど、考えてみたら今日、星奈さんはやけに静かだった。

 ずっと思い詰めていたに違いない。

 そんな星奈さんの苦悩に、僕はまったく気づいてあげられなかった。


「変な魔流なんて化け物とも戦わなくちゃいけなくなって、本当はすごく怖いよ! もうやだよ! 富永くんまで巻き込んじゃってるし!」


 星奈さん本人もなにを叫んでいるのかわからなくなって、まったく制御できないような状態なのだろう。


「私なんて、あのとき死んでいればよかったのよ……!」


 星奈さんの顔は、涙でぐしゃぐしゃだった。

 僕は、叫んでいた。


「そんなこと言うなよ! 死んでたほうがよかったなんて、そんなことあるわけない! 半分桜さんの霊力のおかげだったとしても、星奈さんは星奈さんだ! 今僕の目の前で、こうしてしっかりと生きてるじゃないか!」

「富永くん……」


 少し驚いた様子ではあったものの、僕の言葉が本心であることは伝わったようで、星奈さんは一瞬顔をほころばせる。

 だけどすぐに、表情が陰った。


「でも、富永くんは、星野さんのことを……」

「星野さんは関係ないよ。それに僕は巻き込まれたなんて思ってない。魔流ってのがなんなのか、今でもよくわからないけど……僕だって怖いけど、それでも放っておけないのは確かだし。星奈さんと一緒に、頑張っていこうって決めてるんだ!」


 星奈さんの言葉を遮って、僕は自分の思いを叫び上げる。


「怖かったら僕を頼ってよ! 僕が絶対に星奈さんを守るから!」


 僕は星奈さんの腕をつかんだまま力説していた。

 その腕が赤くなるほど、強くつかんでしまっていたようだ。


「あっ、ごめん……」


 僕は慌てて右手を離す。

 星奈さんの左腕は、重力に引かれるままにダラリと垂れ下がった。

 瞳から流れる雫をきらめかせながら、星奈さんは僕を見上げていた。


「ううん……、あ……ありがとう……」


 星奈さんは、それだけ言うとうつむいてしまった。

 ふと、僕は左手に握ったままになっていたペンダントのことを思い出す。


「そうだ、これ……」


 すっ、と星奈さんの首の後ろに手を回す。

 不思議そうに僕を見つめる濡れた瞳が、すぐ目の前にあった。


 チャリ……。

 ペンダントの鎖がこすれる音を残して、僕は手を離す。

 星奈さんの制服の胸の辺りで、ペンダントのハート型をした飾りが揺れていた。


「これ……、富永くんが私に……?」


 ペンダントのハート飾りにそっと手を添えながら呆然とつぶやいた星奈さんに、僕はただ小さく頷いた。


「嬉しい……」


 瞳はまだ濡れたままではあったけど、すべてを吹き飛ばしてしまうほどの笑顔が輝き出す。

 そんな星奈さんに、このペンダントが星野さんから渡された物だなんて、今さら言えるはずもなかった。


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