第8話「トレジャーハンター?」
前回のあらすじ……
担当:エルアス・ミルード。
やったぁ! 初めてのあらすじ担当なんだよ!
えっとぉ、今日は頼まれていた子
犬「ミルク」を探す為にちょっと早起きしちゃった。
とりあえず着替えて辺りを探したけど、どこにいるかなぁ。
あっ、見つけたー!
でもやっぱ私の足じゃ追いつけないよね。
素早い目標は魔法で牽制! って教官が言ってた!(対魔物用講座の話である)
私は言われたとおり牽制したんだけど、後ろの林に人がいたみたい!!
しかもぞろぞろと10人以上!!
え? なんなのこの人たち!?
あれ!? なんか私捕まってるよー!!
誰か助けてぇぇーーー!!
――モルゼスの森――
ざっしざっしと、森の中に出来た整備されたのか自然と出来たのか分らないような道を走る俺たち。
朝方というだけあって、朝日の木漏れ日がなんともいい感じに降り注ぎ、居るだけで気分が浄化されるようだ。
もしこんなことさえ起こらなければ今日はランニング日和だった。
いやまあ、俺としては走るより昼寝日和といった所だけど。
「しっかし、『領域』の外に出たのって結構久々な気がするなぁ……」
この世界中には、魔物が存在している。
それらから町を守るのが、通称『領域』だ。
なんでも『聖なる領域』なるものを一定範囲に構築し、邪悪な魔物の侵入を拒むものだそうだ。
ただ例によってその原理は解明されてないみたいで、帝国にとってもよくわからん代物らしい。
領域といっても、バリアみたいに壁的な物があるわけではなく、その境界線はあいまいらしい。
そのため『領域』が設置してある町の外れのほうには結構魔物とか入ってきたりする。
そしてさっき言ったが原理不明の理解不能な困ったモンなので町には必ず騎士団やら護衛ギルドやらがいて街を魔物から守っている。
「ああ、最近は台風のせいで村の修復作業とかで忙しかったからね」
そう、つい数日前まで台風直撃だったので、いつもみたいに外に出て魔物狩りとかはしていないのだ。
さすがに俺も一日中寝て過ごしている訳ではなく、そうやって剣術の練習とかをしている。
「僕はたまに騎士団の任務で外に出てるけど……っと、魔物だ!」
リードと俺は気配を察し、走る足を止める。
「どうせここいらには『雑魔級』程度しかいないだろ。楽勝だ」
目の前にいるのは2体の『バルード』というオオカミみたいな魔物だ。
赤い瞳で、腹の部分だけ白い茶色の毛並みで、耳が逆立っている。
キバも凄いが、どってことない。
本来何十匹単位の群れで行動する魔物だが、ここら辺には少数しか居ない。
ちなみに、雑魔級とは魔物の強さを表す段階的なもので、
雑魔級、魔獣級、魔戦級、魔王級の4段階がある。
「油断しないでね、今は魔法を使える人間が――って、聞いてないし」
俺は突進し、右手のダガーを水平に振る。
1匹目撃破。
2匹目が俺めがけてジャンプしながら大口あけて飛びかかる。
避けるまでもない。
左手のダガーを縦に振り、両断する。
2匹目撃破。
時間にして、約10秒、ってとこかな。
「まあ、君にこの程度じゃ役者不足ってとこなのかな」
呆れつつ笑いながらリードは言った。
「バルードくらいなら何体掛ってきても楽勝だろ」
「千体とかでも?」
「リード……限度を考えようぜ?」
珍しくリードがボケに回ったな。
去年まではツッコミしかできない駄目男だったのに、成長しやがったな。
え? それじゃ全然駄目男じゃないって?
まあ気にするな、こうでもしないと劣等感で泣きそうなんだ!
そんな感じで魔物を蹴散らしながら走る俺達。
っていうか、船まで意外と遠いな……。
ああやべ、そろそろ帰りたくなってきた。
疾風の翼は、人間には危害を加えないが、だからといってエルが即座に開放されるわけじゃないし、さらわれたときは魔法詠唱兵器を持っていたらしいし、やっぱ助けに行くべきだな。
「そういえばアーク」
ふと、リードが俺に声を掛ける。
「君いつの間に鍛えたんだい? 正直この距離を走って平気な顔で僕についてくるとは思わなかったよ」
「……あ? 確かに……」
そういえば、おかしい。
俺は戦闘以外ではほとんどリードに負けている。
当然体力も劣っているので、いつもならこれ程長くは走れない。
でも今は違う。
なんか、なんか知らないけど、息が切れないのだ。
エルがさらわれたことによって火事場の馬鹿力的な何かを発揮しているのか?
いや……なんかそれだけじゃない気がする……。
「いやまあ、ついにこの俺も本気を出したという事だよリード君」
でもまあ、気にすることないだろ、と思ったので適当に流しておく。
どうせ明日になったらいつも通りに戻ってるに決まってる。
ある日体力が無限大になりました、なんて説明不可能なラッキーイベントなんてあるはずがない。
とか思っていると、草むらからがさごそ、と音が聞こえてきた。
「アーク!」
「ああ。分かってるって」
俺らは武器を構える。
いくらバルードだからって、油断していたら怪我の1つや2つは負うからな。
だがその草むらから現れたのは、魔物ではなく女だった。
「ぶっはぁ~~~っ! やっと出れたぁ! うはっ! 服の中草だらけじゃん!! くっさぁ!」
シャレか!!
じゃなくて、こいつ誰だぁぁぁーーー!?
「ん? 何アンタ達、はっ! まさかストーカー!」
「違ぇよっ! 冤罪にも程があるだろ!!」
「じゃあ、なんだってこんな所にいるのよっ!」
そう怒鳴るのは、見た目ハタチくらいの謎の女だ。
茶色の長髪で、緑系の服を着ている。
中くらいのショルダーバッグを持っていた。
服装は身軽そうな布の服で、短パンにブーツという変な格好だった。
両足のふとももにクナイを刺していて忍者? とも思ったがそれにしては騒がしすぎる気がした。
ブーツだし。
「待ってくれ。彼の言うとおり、怪しい者じゃない」
リードが俺の前に出て口を開く。
謎の女は黙って話を聞いている。
俺の言う事は聞かなかったくせに!!
「僕達はラシアトス城下町の住人だ。今は盗賊団『疾風の翼』にさらわれた友達を助けに来た。この辺に疾風の翼の空駆船があるという情報を聞いて探しに来ただけなんだ」
リードは1から順に懇切丁寧に説明した。
「空駆船? ああ、丁度あたしその船に侵入してきたとこなのよ~!」
謎の女は何故か得意げに話す。
「侵入? っていうかお前は何者なんだよっ! お前の方が数倍あやしいぞ!?」
俺は思ったことを口にする。
下手したらこいつ盗賊団の奴かもしれね―しな。
「お前じゃないわよっ! あたしにはね、ルネ・アーサスって名前があんのよ!!」
「知らねーよ始めて聞いたし! んでお前は何モンなんだよさっきから!」
そう聞くと、女――いやルネは胸を張り、
「ふふん、よくぞ聞いた!あたしは、世界を又にかけ金銀財宝を探し求める、素晴らしきトレジャーハンターよっ!!」
とババーーン! と効果音がなりそうなくらい強調するルネ。
「あの船なら、ここからまっすぐ言ったところに停まってるわよ。お宝無いか探しまわったんだけど、盗賊団のクセに目ぼしい物は無かったわね」
ちッ! と不機嫌そうな顔で舌打ち。
……つーかそれ普通に窃盗じゃね?
新キャラ登場!
トレジャーハンターのルネ・アーサスさんです!
主人公パーティに加わるメインキャラの一人です。
騒がしいヤツですがどうか暖かく見守ってやってくださいな。