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永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第七章 ジルド過去編
75/110

第75話「北方軍はちょろくない」

前回のあらすじ……。


担当:ジルド・クロームド(半年前)

門の衛兵と話していたら、なんか捕まっちまった。

だがこれも好機、侵入する手間が省けたってモンだ。

両手を防がれようと術は発動出来るので問題は無いのだ。

人気のない所で黒こげにする事に成功した。

北方軍ちょろいぜっ!



――北方軍基地・地下牢――



「なんだ今の悲鳴は!?」

「上からだ! くそっ、侵入者か!?」

 しまった、思ったより悲鳴が響いてしまったらしく、階段の下に続いている地下牢にいる看守まで聞こえてしまったらしい。

 下から衛兵の声が聞こえる。


「こりゃあちょっとマズいかもねぇ」

 思わず苦笑いしてしまうが、どの道進むしかない。


「はっ」

 階段を一気に飛びおりて、下の階層へと進む。


「いたぞ!」

「貴様何者だ!!」

 二人の衛兵が長銃のようなものを向ける。

 それが魔導銃(ブラスター)なのか普通の長銃なのか判断できないが、どの道生身に喰らって無事では済まないだろう。


「疾風の刃よ――ウインドエッジ!」

 ならその武器を破壊するまでだ!

 オレは魔法を放ち、4つの風刃で長銃と足を切り裂く。


「ぎゃあ! あっ、足がぁ!」

 足を切られた為、二人の衛兵は倒れた。

 銃も無いしこれで暫くは動けないだろう。


「この野郎……本部! 第五棟で侵入者あり! 至急応援求む!! 奴は魔法を使っている!」

 と思っていたら、小型のテレスで仲間呼ばれてしまった。

 ここは早急にリナ嬢ちゃんを捜し脱出するしかない!

 オレは二人を放っておき、牢の方へ走りだした。


「えぇと……こいつじゃない、こいつでもない……」

 くっそぉ、牢が多い!

 ワルキスから後で聞いた特徴は金髪ショートで黒の瞳の少女らしい……。

 後は片っ端から名前聞いていくしかない!


「おいおっさん何者だ!? いやなんでもいいから俺を出してくれ!!」

「なあ頼む! 金なら隠し持ってる! ほらこれでどうだ!?」

 通った牢やから次々に声が聞こえてくる。


「ああうるさい!! 今はあんたらに構ってる余裕は無いの!」

 くそ、ロクなヤツがいねぇ!

 金髪の美少女はどーこだっ?


「居たぞ、侵入者だ!」

 前方から長銃を構えた衛兵が来た。

 先手打てるか!?


「くっそぉ、疾風のやい――」

「――撃てぇぇッ!!」

 やばい!

 オレは詠唱を解除して、曲がり角に身を隠すためすぐに後退した。


「くッ!」

 一瞬後退が遅く、長銃から放たれた水の弾丸によって左肩を抉られた。


「ちっ、不利か……」

 なんとか壁に身を隠すことに成功するが、これはどうにも分が悪い。

 魔法とて万能ではない。


 ましてオレが使っているのは過去の禁畏、ブラストレイズの一つなのにな。

 いやその気になりゃあこの建物一つ消すくらい簡単なんだが、どうにも使い勝手が悪過ぎて困るぜ。


 加えてここの地形も不利な要素だ。

 ここは前も後ろもL字型通路なので背後から衛兵を寄こされたら逃げ道がない。

 北方軍ちょろいぜっ! なんて言ってる場合じゃなかったなぁ。

 

「そっちに行ったぞ! 回り込め、挟み打ちだ!!」

 やはり、相手さんは地形を理解してる!

 こうなりゃあもうところ構わずぶっ放して混乱を誘うしか!


「母なる大地の怒りを感じ取れ! 愚者は地に伏せよ――グランドランガーッ!!」

 オレが魔法を発動すると、目の前の廊下の天井が裂け落ち、そこから岩が勢いよくせり上がり、道を完全に塞いだ。


「なッ! なんだこの魔法は!? くそッ、進めん!」

 さっき氷の魔導銃(ブラスター)を撃った衛兵の道は塞いだ。

 後は前から来る衛兵をなんとかしなければ!


「灼熱の炎よ! 我が手に宿り自在に姿を変えよ――トリッキーファイア!!」

 手から放たれた炎は、オレの意思通りL字型通路を付きすすみ、


「うわっ、なんだこの炎! ぎゃああ!!」

 適当に壁に当たって爆発した。

 煙幕が出来れば十分だ!

 オレはL字型通路を進み、先ほど背後から挟み打ちを狙った衛兵3人を確認する。


「燃えろ紅蓮の炎――フレイムブラスト!!」

 速攻で火球をそこらじゅうにぶちまけた。

 狙いを付けている暇は無かったんでな。

 どうやらぶちまけたうちの何個かは当たったらしく、衛兵3人は気絶していた、


「ふう……ってか、早くしないとまた増援が来ちゃうねぇ」

「ちょっと、そこのアンタ。これ一体何の騒ぎ?」

 オレの真横から声が聞こえてきた。

 見ると、牢屋の中の15歳程度の金髪の少女がジト目でこちらを見ていた。

 ん……金髪の少女?


「もしかして……あんたがリナ・ベルナール?」

「そ。って質問の答えになってないんだけど」

 目標を発見というよりは、目標に発見されてしまった。



――北方軍基地・指令室――



「くそっ、たった一人の侵入者に何を手こずるな! 第二小隊の戦力を全部だせ! 帝国の犬を何としてもひっとらえろ」

 基地の司令官は、自分の基地がたった一人の侵入者に蹂躙されているのを見て、それでも勤めて冷静に指示を出していた。


 基地は多少混乱に陥っているが、司令官が慌てては話にならないからだ。

 今は、据え付け型のテレスに向かって第二小隊に通信を送っていた。


「相手がいくらレイズ使いでも、使える魔法なんて限られる。落ち着いて対処しろ! パターンさえ掴めばこちらのものだ」

「中将閣下! それが変なんです、侵入者、炎の魔法も風の魔法も、地の魔法も使っているんです!」

 テレスの向こう側で聞こえる声に、中将は顔をしかめる。

 一つの基地を束ねる司令官である以上、敵国の兵器はある程度知っている。


 魔法詠唱兵器(ファストレイズ)は一つの属性しか扱えず、加えてあらゆるレイズは、人間一人に対し、一つしか装備出来ないはずだ。

 つまり、人間一人では、幾つもの属性を操る事は不可能なはずだ。


「ヴィクトリア・マクラーレン大佐。君はこれをどう見る?」

 中将は指令室にいた衛兵を見る。

 ここ北方軍基地では珍しく、褐色の肌をしている。


「はっ! 帝国が研究している『古代兵器・コード006』の可能性があります」

 マクラーレン大佐は、立ち上がり、そう進言した。


「なに……? ではまさか帝国がついに我が国に侵攻してきたと?」

 中将は只でさえシワの多い顔をより一層鋭く睨む。


「いや、それはないでしょう。帝国軍は未だ00ナンバーを手中に収めたという情報はありませんし、おそらく元からの所有者でしょう。強奪しますか?」


「いや、ならばいい。過ぎた力は身を滅ぼす。なんにせよこのまま暴れられたら基地が持たん。大佐、侵入者は君に任せる」

 顔の力を抜き、指令室の机の椅子に座る。


「了解しました。必ず拿捕してまいります」

 そう言って、マクラーレン大佐は指令室を退室した。




「コード006、全属性の魔法を司る兵器、ミラージュの所持者か。くく、面白くなってきやがったな」

 拳銃に弾倉を入れ、腰のホルスターにしまいながらニヤリと笑った。


ヴィクトリア・マクラーレン。


覚えている方はいるでしょうか。

ドーイング編55話で出てきたロウの知り合いです。


何故王都軍に所属しているのかは……多分次で分かります。

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