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永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第七章 ジルド過去編
74/110

第74話「白銀の街ノウスフローク」

前回のあらすじ……。


担当:ジルド・クロームド(半年前)

今日もいつものように図書館で調べ物をしていた。

だが何の手がかりもつかめず、少し苛々していたところだったが、ここにきて大きな獲物が釣れやがった。

情報源は情報屋と名乗る大昔の海賊風の姿をした謎の男。

しかも頼まれた依頼は無茶苦茶と来たもんだ。

だが、いい加減何も掴めない日々はうんざりだ。

やってやるぜ。

オレはノウスフロークへと向かった。



――セトラエスト王国・白銀の街ノウスフローク――



「なるほど、白銀の街ねぇ。確かにその通りだわ」

 オレは駅から降りて辺りの景色を見渡してそう言った。

 あたり一面、完全な雪景色だ。

 というか、今もチラホラと降っている。

 道中の街で防寒着を買っておいて正解だった。


 にしてもこの国は便利だ。

 なんてったって長距離の移動にも“駆動列車”という交通機関が存在するからだ。

 これのお陰で離れた街でもすぐに移動できる。

 この国は、特に雷の元素について研究が進んでいるという。


 帝国のように古代文明ラスタードを研究、利用するのではなく独自の技術を用いて改良、応用して更に別の物を作るのが得意な技術大国なのだ。

 これは、帝国のように豊富な古代遺跡ベースが存在しなかった故の発展の仕方だという。


 オレはとりあえず駅から出て街の門を潜る。 

 門や駅の周辺には騎士、じゃない衛兵――この国の兵士が立っていた。

 やはり魔物に対する警備はどこの国でも同じだな、そう思っていたら、



「そこのお前! 旅の方かい?」

 街の門を通ろうとしたら、警備していた中年の衛兵に声をかけられた。

 白と灰色の迷彩服は北方軍専用の装備だろうか。


 この国の軍隊は、帝国と違って鋼の鎧を着ていない。

 武器も別系統の古代文明ラスタードである魔導銃ブラスターを使っているそうだが、正直ほかの国の事は良く分らない。

 そんな事を考えながら質問に答える。


「ああ。この地方は寒いって聞いてはいたが、予想以上でビックリしたぜ」

 なんだ、暇つぶしの雑談か?

 そう思って言葉を返したが、


「観光ならお勧めしないぜ。あんたも知ってるだろ? この町で暴動があったの」

 暴動ねぇ。

 出来ればこの辺で詳しい話を知っておきたいけど。


「その暴動って、どんなだったの? おっさん、遠くから来たもんでよく知らねぇんだわ」

「駄目だ。その話はしちゃいけないって上から止められてんだ。……まあ、まだ色々ゴタゴタがあるからさ、出来れば余所者はあまり入らない方が身のためだぜ」


「へぇ……なるほどねぇ。そう言えば、殺人事件もあったんだって?」

 良い機会だ。

 ここで引き出せるだけの情報は引きだしておこう。


「貴様……その事をどこで?」

 目付きが急に険しくなった。


「……街に知り合いがいんの。そいつに聞いたんだって。そんな顔で睨んだっておっさん怪しいモンじゃないってば」

「村に知り合い? そいつの名前は?」

 衛兵は、名簿と思わしき紙を出して聞いてきた。

 おいおい……そんなに情報規制が進んでるとは思わなかったぞ。


「はは、忘れちまった。年取ると記憶が持たなくてねぇ」

 ここまで来たらもう言い逃れは出来なそうだ、と諦める。

 どうやら殺人事件があった事すら秘匿されていたらしい。

 しかも、街人全員に情報規制を掛けて漏えいを防いでいるようだ。


「お前達、拘束しろ。北方軍基地に連れて行け」

「はっ!」

 あっという間に、オレの手は手錠で封じられてしまった。

 だが、これはチャンスだ。


 これでリナ・ベルナールが捕まっている北方軍基地まで侵入する手間が省けたと思えば儲けものだ。


「全く、なんだあの変人は……わざわざ捕まりに来たのか?」

 こうしてオレは、二人の衛兵と共に北方軍基地へと連行された。



――北方軍基地――



「ふぃ~。寒い寒い。おっ、あれが北方軍の基地? 結構デカイんだねぇ~」

 オレは基地の外観を見て言った。

 場所はノウスクロークの更に北側、山肌に沿って建物が建っている……というよりは山に半分埋まっている状態だ。

 なるほど、ありゃあ中は相当広そうだ。


「あっちには陸砲車まであるし、結構な軍隊だわ」

 陸砲車とは、読んで字の如く陸上で大砲を撃てる車の事だ。

 旧来は大砲とは、どこかに設置して固定するか、馬にけん引させるかが普通だった。


 だが、世界に古代文明ラスタードが広がり始めてからは、魔力を原動力に大砲を自走させることに成功した。

 それに戦闘用の装甲をプラスして出来たのが陸砲車だ。


「おい貴様、少しは黙れ! 自分の状況分かってるのか? 貴様は今捕まってるんだぞ!?」

 一人の若い衛兵が、オレの頭に拳銃を突きつけた。


「ひいいいぃぃぃぃぃぃーーーーーー!! 殺さないでぇぇぇぇぇーーーー!!」

 頭を抱えて、その場でしゃがみこんで震えたフリをする。


「うわっ! わかった、もう付きつけないからさっさと歩け……」

 少し驚いた様子で拳銃をしまい、衛兵は歩くのをせかす。


「あっはっはー、分かってくれればそれでいいのだよチミ達~」

「ホントなんなんだよこのおっさんはよぉ……」

 もう一人が呆れ、片手で顔を覆いながらため息を吐いた。

 やばい、なんかコレ楽しくなって来た。

 新たな趣味に目覚めそうだ。


「街正門の警備小隊から話は聞いているか?」

「聞いている。通行を許可する」

 基地敷地内にいくつかある建物のうちの一つに行き、入り口で衛兵が手続きを取って中に入る。


 帝国ではあまり見ないが、どうやらここ北方軍基地では鉄製の建物が積極的に取り入れているらしく、建物の中を歩く度にカンカンと甲高い音が鳴る。

 しかも気温がかなり低いため、ところどころ壁や床が凍ってしまっているので危なっかしいことこの上ない。

 

「ところで、今はドコへ向かってる訳?」

 どうせおとなしく行く気は無いが、試しに聞いてみる。

 今は一階から階段を下に降りているため、どうやら地下へ向かっているようだ。


「地下牢だ。取り調べまで多少入ってるだけだからすぐ出られるけどな」

 さっきから無駄な雑談を話しっぱなしだったので、めんどくさくなって来たのか少々イラついた様子で答える。


「へぇ。もう着くの?」

「ああ。そこの角を曲がってまっすぐ進めばすぐだ。だからもう少し黙ってろ」

「そうかい。じゃあ最後に一言だけ――灼熱の炎よ! 我が手に宿り自在に姿を変えよ! トリッキーファイア!!」

 意識を集中させ、詠唱呪文を唱える。

 すると足元に魔方陣が展開し、手から炎が出る。

 


「なっ!」

「なんだこれはッ!?」

 拘束された手から放たれた炎は、オレの意思通り二人の衛兵を飲み込んだ。


「ぐああぁぁぁぁ!」

「ぎゃあぁぁぁぁ!」

 気絶する程度にこんがりと焼き、ついでに手錠も破壊した。

 こんな時の為に普通の魔法も習得しといて正解だった。

 爆熱の焔エキスブレイムや 天光の御剣ティルヴァング等の高度な魔法は、術式を構築する為に例のカードを引っ張り出さなければいけないが、あれがなくても基本的な魔法は使えるようになった。


 その上ここ王国じゃあ、魔法なんてそうそう見れるものじゃないので、いい不意打ちだな。


「捕まえる前にちゃぁんとレイズ持ってるか確認しなきゃ、三流以下の衛兵だわ。それじゃ、道案内ご苦労さん!」

 オレは二人の黒こげの衛兵に挨拶をして、目標の地下牢へと向かった。

 そこにリナ・ベルナールが居る筈だ!

外国なのになんで言葉通じるんだ!?

という突っ込みはスルーします(苦笑



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