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永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第七章 ジルド過去編
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第71話「ヴァナルガンド」

前回のあらすじ……。


担当:アーク・シュナイザー。

……よし、とりあえず落ち着いてあらすじを書いていこう。

ジルドの話によると、13年前に二人は出会い、鉱山都市デルヴァで生活をしていた。

本来ならそこに5歳の俺が居るはずだが、そんな記憶は無い。

不思議に思い、その事を口に出そうとすると、急に頭が痛くなった。

ラプターによって一時的に脳が覚醒した俺は、それを何かの呪いだと分析。

だが、結局なんの呪いなのかは分からないまま頭痛は治まった。

とりあえず今はジルドの話を聞く事にしよう。

話は、いよいよ確信に近づいていき、夜中に出歩く親父とジルドが出会う。

そこで何があったのか、親父はジルドに慎重に話してゆく……。



――8年前:ジルド視点――



「夕方、家に一人の男が訪ねて来たんだ」

 ラインは重い口を開け、真相を語ろうとしていた。


「その男は、俺にオーブの鑑定を依頼してきたんだ」

「依頼者か……それで?」

 ここまでは不思議な話ではない。

 普通鑑定作業は城の仕事場でやるそうだが、政府の許可証を持っていれば鑑定士クリアラーに直接依頼する事も出来る。


「だがそのオーブは、ブラストレイズ同様、魔核大戦で終局に用いられた戦略兵器……“ヴァナルガンド”だったんだ」

「ヴァナルガンド……なんだそれ、“賢者の書”にもそんなの載って無かったぞ!?」

 賢者の書、とはオレ達賢者がブラストレイズを受け継ぐ際に一緒に渡される魔導書だ。

 分厚い本には文字は一つも記入されていない。


 だが手にとって触れた瞬間、賢者の掟や、自分の持つブラストレイズについて自動的に頭の中へと入ってくる仕組みになっている。


「だがあるんだ。少なくとも、俺の記憶の中にその知識はある」

「ライン、お前まさか……記憶が……」

「まだ全部じゃない。だが、面影ぐらいは浮かび上がってきた。……ヴァナルガンドの鑑定を依頼した男は、当然政府の許可証なんざ持っていなかった。そして、今日の明朝5時。コダール遺跡の前で渡すよう言われた。拒否すれば、アークの命を奪うって言い残してな」


 脅迫か……。


「……騎士団には?」

「言うかよ。仮に言ったとしても、このヴァナルガンドだけは絶対に知られちゃいけねぇ。こんな恐ろしい兵器が……」

 ラインは手に持っていたオーブを見る。

 紫色の球だが、その色は禍々しくもあった。


「お前……渡すのか?」

「誰が渡すか! こんな物を、あいつに渡したらとんでもない事になる!」

 ラインは凄い剣幕で叫んだ。


「……俺はその脅迫してきた奴を、知っている。かすかだが、記憶に残っている。何者かは知らないが、俺の敵だ」

 ラインの握りしめた拳が震えていた。

 一体コイツの過去に、失われた記憶に何があるって言うんだ……。


「俺は、あいつに敵わない。だからせめて、この身を捨ててでも……」

「待てよ!! まさかその為にラプターを置いてきたって言うのか!?」

 それこそ自殺行為だ!

 ラプターを装備した状態でも勝てないっていうのに、その身一つじゃ……。


「あいつにはッ、勝てないんだよッ!! たとえラプターを使ったとしても……」

「うるせえッ! ……なら、オレが護ってやる」

 オレは右手首を見た。

 オレはしっかりと、ブラストレイズを持って来ている。


「お前は死なせない。お前はアークを残して、死ぬ事なんて許されない」

「ジルド……」

 ラインは親友だ。

 記憶喪失で、よく突っ込んでくれて、不思議なくらい気が良い奴で、たまに凄い才能を見せてくれて、ちょっと常識知らずで……最高の友人だ。



「オイオイ……一人で来る約束だっただろうが。まさか初っ端から裏切られるとは。トンだ誤算だァ」

 オレは反射的に振り替える。

 そこにいたのは、金髪の男。


 黒いシャツに緑色の迷彩服を着込みジーパンを穿いている。

 月明かりに照らされた顔は少し白く見えるが、それが更に真っ赤な瞳が際立たせていた。


「ザイル……ッ!」

 ザイル、それがこの金髪の名前か!


「悪いが話は全部聞かせてもらったぜ。ラインは死なせない。もちろん、その息子もな」

「ほォ? それはどういう意味かな? 鑑定士、ラインさんよォ」

 ザイルは、尚も楽しそうに、狂った笑みをラインに向けた。


「そのまんまの意味だ。悪いが依頼は破棄だ。そしてアークも殺させない。俺がいる限りな!」

 ザッ、とラインは一歩踏み出し、二刀流のダガーを構える。


「ぎゃははははッ! ミスティックスレイヤーもラプターもお預けか!! そんな貧弱な装備で何が出来るってんだよぎゃははははははッ!!」

 そう言って、左手を前に突き出した。


「避けろッ!!」

 ラインがそう叫んで、オレは咄嗟に右へジャンプした。

 次の瞬間、ザイルの左手からまるで触手のように三本の黒い塊が伸びて、オレとラインが居たあたりの地面にぶつかった。


 土砂が吹き飛び、地面は抉られてしまった。


「なぁッ……!! なんだよこの能力は……」

「次が来るぞラインッ!!」

 ザイルの左手から、また黒い触手が伸び、オレを狙う。


「くッ!!」

 オレはまたも間一髪で黒い触手の直撃を逃れた。


「はぁぁぁッ! クロスエッジッ!!」

 その中、ラインはザイルに接近し、我流剣術で攻撃する。


「ぎゃはは! やっぱラプターがねぇとその程度かァ!!」

 ザイルは攻撃を軽々と受け止め、左腕に黒い触手を纏わせてラインを殴った。


「ぐはッ!!」

「ライン!!」

 防御できず、直撃で吹っ飛ばされてしまう。

 こうなったら、ミラージュを使うしかない!


「出でよ! 万物を司る源よ!」

 右手を水平に振り、カードを出現させる。

 この状況で使えそうな魔法は……これかッ!


「清浄なる天光の煌めきにて、邪悪なる使いを両断する! 我に悪を断つ剣を! 天光の御剣(ティルヴァング)ッ!!」

 ミラージュの中から、天属性の最高魔法を選び、発動。

 俺の手から光の筋が1m、2m、ついには5mにまで天高く伸びていく。


「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」

 それを一気にザイルに向かって振り下ろすッ!!

 直後、まるで光の壁でも出来たように、剣の筋にしたがって光が飛び上がる。


 凄まじい轟音と衝撃が辺りに響き渡る。


「我ながらすげぇ魔法だ……これなら流石に……」


 絶句した。

 土煙と光の粒子が晴れた時、ザイルは光の剣を先ほどの黒い三本の触手で受け止めていた。


「惜しかったなァ。初めてにしては上手くいった方なんじゃねェの? 最も、本物の“悪魔”相手にゃあ今一つ魔力足りねェがなッ!!」

 やがて光の剣は消滅し、三本の触手のうち一つが――気が付け目の前にあった。

 避け切れないッ!!




 ――ぐしゃり、と気持と悪い音。

 



 目の前には腹に黒い触手を貫通させた、ラインがいた。


「ラ……イン……?」

 黒い触手は腹部を貫通していた。

 その触手が抜かれた瞬間、糸が切れたようにラインは倒れ、一つの血だまりが出来た。


 動けなかった。

 何が起こったのか理解できない。


「ぎゃはははは! 惚ける暇あんなら避けて見ろよォ!」

 その言葉に反応する間もなく、オレの腹部にザイルの拳が突き刺さった。


「がッ……はぁ……ッ!」

 まるで馬に撥ねられたかのような衝撃が体を遅い、気がつくと数m後方の地面に横たわっていた。

 電気が走るような焼けつく痛みが体中を支配する。


 呼吸は荒くなり、体中から汗がにじみ出た。

 微かに目を開けると、そこには腹部から血を流し、倒れるラインが見えた。


 そしてそのすぐ近くでザイルが見下ろしている。


「あっけねェ最後だなァ。ま、今に息子も一緒に逝くだろォから寂しがん――!?」

「あああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 ラインは、突然起き上がり、ザイルの首元を掴み腹にダガーを突き刺した。


「グッ……オマエ何を――」

「麻、酔さ……、人間相手にゃ、致死量だが……ゴハッ、お前なら、せいぜい一分は行動を止められる……!!」

 オレはその光景を、薄れゆく意識の中はっきりと見ていた。


「……ジルド、済ま、ねーな……。やっぱ、こうなっちまった……」

 こちらを振り向かず、静かにそう言った。


「は……ぁ? お前……なに、を……」

 嫌な予感がする。

 オレは未だ大量に出血するわき腹を気にせず、上半身だけでも起き上がる。


「……良く、考えてみろよ……。俺がなんで、コイツを持ってきたのかを……!」

 ラインの手には、紫色のオーブ、ヴァナルガルドが握られていた。


「オマエ……? まさか、やめろォォォォォォォッ!!」

 ザイルが必死に暴れだす。

 だが、麻酔はまだ効いていた。


「ま、てよライン……!! お前ッ……!!」



「――暗黒の力、我が命をッ、喰らい……我が、望むものをッ、永久の闇に、葬り去れぇぇぇッ!!」




 その瞬間、紫のオーブが砕け、中から禍々しい黒い霧が発生し二人を包みこんだ。


「ラインッ!! うわああああぁぁぁーーーーーーーーーーッ!!」

 オレは手を伸ばした。

 ひたすら手を伸ばした。



 その手が届く事は無く、霧が晴れた後には、ラインとザイルの死体だけが残っていた。


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