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永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第2章 疾風の翼
7/110

第7話「ある意味盗賊の方がツイてない」


前回のあらすじ……。


担当;アーク・シュナイザー。

物騒な男が俺にナイフを突きつけた!

と思ったらなんか別の男が助けてくれた!

しかもそいつは盗賊団『疾風の翼』のようで、瞬時に消えた。

俺はその家で腕輪をGET!

んで町に戻ったら盗賊団にエルがさらわれたとか。

ちょ、一遍にいろんなこと起こり過ぎ!

ちょっとは整理させろコンチクショー!



――村――



「エルがさらわれたって……なんでだよ?」

 俺は服を引っ張るダイチに視線を向ける。

「実はね――」

 ダイチが理由を話す。



――30分前――



 エルは迷子の犬を探す依頼を受けていたので、早朝に辺りを捜索していた。


「おーーい! ミルクー! どこにいるのー!?」

 もともとエルという人間は、朝には強かった。

 それで、早めに起きて辺りを探そうと、早朝4時にも関わらず行動を開始したのだった。


 奇しくもアークが家を出てから数分後の事だった。

 行動と言うのは、騎士団見習いの任務の事で、ある人から犬の捜索を頼まれていたのだ。


 騎士団は、軍隊であると同時に治安維持組織でもあるので、落し物の捜査から、盗賊団の討伐まで基本的には何でもしなければいけない。


 ただ、そういう簡単な任務はエルやリード達騎士団見習いへ流れて行ってしまうのがお決まりなのである。

 そんな訳で、朝早くからエルはミルクと言う名の子犬を探す。


「……あっ! いた!」

 エルは子犬を発見した。

 何か変な臭いでもしたのか、地面をくんくんと嗅いでる、白く小さい子犬だ。


 だが、一瞬声がしたエルの方を向くと、その小柄さからは想像もできないスピードで走り出す。


「あっ! 待ってーー!!」

 エルは走って追いかけるも、犬の足に人間は追い付けるはずがない。

 あっという間に距離が離れ、犬は茂みの中へと姿を消した。


「こうなったら、――聖なる力よ! ホーリーブラストッ!」

 ホーリーブラストとは、天聖属性魔法の基礎魔法である。

 杖の先に白いバスケットボール大の光球が現れ、杖を振る事でそれを発射する攻撃魔法だ。

 繰り返すが、“攻撃魔法”だ。


 エルは足止めのつもりで使用しているが、間違ってもこういう時に使ってはいけない。

 それがいつも失敗の原因になっている上に、今回はもっと厄介な事態を引き起こしてしまう。


 3連発はなった光球は、もちろん犬には当たらず、犬の背後の林へ当たった。


「うわああぁぁっ!」

 林では火柱ならぬ光柱が立ち上り、その中でそんな悲鳴が聞こえてきた。

 男の声だった。


「おいダッド! 大丈夫か!?」

 状況から察するに、ホーリーブラストが当たってしまった事以外考えられない。


「ええぇぇっ!? だっ、大丈夫ですか!?」

 これにはエルも驚くしかない。

 早朝にこんな場所に人がいる事自体がそもそもおかしかった。


 しかも数人と判明する。

 茂みの中からぞろぞろと人が現れたのだ


「お前……ッ!? 俺達の姿に気付いていたのかッ!?」

「くそッ! なんでバレたんだ! 物音ひとつ立てなかったはずだぞ!?」

「こんな時に団長はフラっといなくなっちまうし……」

「おい! こいつまさか……騎士団……!? いやっ、腕利きの傭兵ギルドの連中かもしれねぇ!」

 手にはそれぞれ剣や槍など。


 だがその男たちの腕輪には赤く光る『核』が付いていた。

 それは紛れもない古代兵器『レイズ』を意味する。


「今は1人みたいだ! 応援が来ないうちにずらかるぞっ!?」

「こいつはどうする!?」

「こっちは13人だ! とりあえずさらって逃げるぞ!!」

 気が付くと、エルは13人の男達に周囲を囲まれていた。

 頭に黄緑色のバンダナ。

 粗末だが身動きのとり易そうな身なり。

 そしてレイズ。


 それらが指し示すのは、違法な武装集団――盗賊団しかありえなかった。


「え? え? ええぇぇぇ!?」


 しかしエル本人は混乱していたのか、「なんだか男の人達に囲まれた」くらいにしか理解できず、なんだかよくわからないうちに、さらわれてしまったのだ。


 その一部始終を、ダイチは陰ながら見ていたそうだ。



――現在――



「って、どんだけ阿保な理由なんだよっ!」

 そもそも犬になんでホーリーブラストを使おうと思ったのか俺は聞きたい。

 殺す気なのか?


「エルねーちゃんを阿保とか言うな~!」

 むす~っと睨みつけるダイチ。


「阿保だろ! 絶対阿保だろ! そもそもなんでお前は4時に起きてたんだよ!」

 俺は話の途中で疑問に思った事を上げてみる。


「う~、それはエルねーちゃんと一緒にミルクを探そうと思ったんだよ……」

 そこまでするか?

 まあ、コイツがエル好きだと言う事は知っている。

 今はそれよりもしなきゃいけない事があるしな。


「あ、アァァークッ!!」

 向こうからリードがやってきた。

 服装は一般の物ではなく騎士団待機服だった。


「おいリード! エルが盗賊団に――」

「知ってるよ。っていうか君は今までどこにいたんだ?」

 それを話すと話がややこしくなりそうなので話題を変える。


「まあまあそれより騎士団は動かないのか?」

 リードが着替えていると言う事は、町に盗賊団が侵入した事は既に騎士団にも知れ渡っているはずだ。


「実は貴族街の方でも盗賊団数名が見つかってね、結局取り逃がしたんだけど、追撃するかどうかはまだ議論中なんだ。被害は実質的にエル1人だけだし……」


 あごに手を当ててリードは言った。

 ったく、肝心な時に役に立たない組織だな。


「情報によると、盗賊団は『疾風の翼』だ。君も聞いたことくらいあるだろ?」

「ああ。つーかお前から聞いたんだがな」

 疾風の翼。

 近年出来た新しい勢力で、武力による略奪、強盗を主とする『紅蓮の覇王』という最大最凶の盗賊団とは正反対で、人目につかず疾風の如く盗みを働く盗賊団らしい。


 なんと殺人数は0人で、絶対に人を殺さないのが決まりらしい。

 その上狙いは貴族達や他の盗賊団のみで、噂によるとその盗品や資金を貧しい村に配っているとかいないとか。


 義賊じみたところはあるが、どちらにせよ騎士団からすれば法を犯す武装集団という事には変わりない。

「その空駆船がモルゼスの森にまだ停泊中らしい」

 空駆船とは、まあそのまんま、空を駆ける船、の事だ。

 小型のものは空駆艇、軍用、武装した物は空駆艦と呼ばれている。


「よし。リード、行くぞ」

 場所を教えたと言う事は、俺がこう言う事を知ってたんだろうしな。


「君ならそう言うと思ったよ」

 安心したかのような顔でリードは呟き、腰の剣に手を添える。


「お、オイラも行く!」

 そこで思わぬ立候補が現れた。

 そういやいたんだっけ……。


「駄目だ! 君はまだ子供だろ? 危険すぎるよ」

 リードはダイチを止めようとする。

「子供じゃないやい! それにオイラだってエルねーちゃん心配だよ!」

 わあわあ、と騒ぐダイチ。


「エルの事は僕達に任せて。必ず連れ戻して来るから」

 手をダイチの頭上に置き、優しく撫でるが、

「やだやだやだー! 絶対行くー!」

 ダイチは言う事を聞きそうにない。

 やれやれ、リードの堅い頭じゃ子供の説得は無理だな。


「おいダイチ、お前に頼みたい事があんだが」

 俺は腰を落として目線を合わせる。

「え?」

 ポカンとするダイチ。


「俺達はエルを取り返してくる。お前はその間、他のクソガキ共が暴れ出さないかみててほしいんだ。お前までこっちに来たら誰が面倒みるってんだよ」


 村にもまだ沢山の子供がいる。

 エルは子供好きであり、子供はエル好きなので騒ぎだしたらひとたまりもない。

 まあ、ただの建前なんだけどな。


「そっか……分かった! 町の子供たちは任せてよ! だからアーク兄ちゃん達は必ずエルねーちゃん連れて来てね!」


 一気に元気になるダイチ。

「よし! ダイチもしっかりな!」

 と俺はダイチの肩をポン、と叩き立ち上がる。

「うん! じゃあね!」

 と言って、ダイチは走り去っていた。


「……なんていうか、子供の扱いが上手いね、君は」

 リードが君には敵わないよ、と付け足す。

「お前は頭が固すぎんだバーカ」

「いや、アークの精神年齢が近いからなんじゃないの?」

 こいつ……言いやがる。


 そんな感じで、俺らは空駆船が停泊しているモルゼスの森、というところに向かった。


ダイチ単純だなぁ……まあ子供って事でOK?

そしてまた三人称。

視点に落ち着きが無くて申し訳無いです。



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