第65話「漢達の戦い」
前回のあらすじ……
担当:アーク・シュナイザー。
何とか騎士団から逃げ切った俺達は、そろそろ夜になるしということでテントを立てることにした。
しかし、メンバーが頭悪すぎるジャミル、トラブルメーカーのルネ、極論に突っ走るリナ、なに考えてんだか分かんないおっさんじゃ、そりゃ事がスムーズに運ぶわけがない……。
結果的にテント建設に2時間を要したがそれでもなんとか寝床は完成。
差し当たって次なる問題は夕食だ。
ところが、ルネが食料を持っていた上調理を申し出た為これに関しては解決。
したのだが……はたしてどんな料理が出てくるのやら……。
――――
「できたよ~!」
テントの外から、ルネの元気な声が聞こえた。
お、意外と早かったな!
もっと悪戦苦闘すると思ったのに。
「やっとかァ! もう腹ペコだぜ! どれどれ……」
ジャミルはテントの外に出て料理を確かめる。
続いて俺とおっさんとリナもテントを出る。
「ふふふ……じゃーーん!!」
ルネが差し出した皿を見てみると……。
おお!!
なんだよ! 普通にうまそうじゃん!!
絶妙な加減で焼かれた豚肉の上にはおいしそうなタレがかかっている。
さらにその隣の千切りキャベツにもいい感じにタレが掛っていて食欲をそそる。
「どうだっ!! あたしだって女なんだからこれくらいは出来ないとね~!」
と言いつつえっへん! と胸を張る。
そういやこいつ手先は器用なんだっけな~と今更ながら俺は思い出した。
ふう、とにかく心配が杞憂でよかった。
「よし! 腹も減ったしさっそく食おうぜ!」
俺が皿を取ろうとすると、
「ちょっと! まだ完成してないわよ~!」
と言って取り上げた。
「はぁ? どう考えても完成形だろうがこれ」
「ちっちっち……これだから素人は……これに1手間加えて最高の味が出来るのよっ!!」
そう言ってルネは懐から筒状の何か取りだした。
コショウ……じゃなさそうだな。
そして次の瞬間、俺は目を疑った。
「ちょお前何やって――」
ルネがいきなり真っ赤な粉を生姜焼きにかけ始めた!!!
それもドッサリと!!
「ギャアアァァァァァ!! ぬァんじゃそりゃァァァ!! アーク! 止めるぞ!!」
「もちろんだ! おいおっさん! 加勢しろ!!」
「おっさん寝てるから無理~、出来上がったら起こして~」
「おっさぁぁぁぁぁぁん!!!(怒」
「オイ、リナっ!! テメェも手伝えゴルァ!」
「別に。アタシは食えりゃなんだっていいわ」
「いやこれ100%食えねェからァァァァァ!!!」
「こなーーゆきーーねえーこーこーろまーーでしーーろく、そめらーーれたーーならーー」
「白くねぇぇーから!! 真っ赤ですからぁぁぁぁぁぁ!!!」
「まっかなーーちかーーい!」
「うるせェェェェェェェェ!!!」
結果、俺とジャミルの奮戦空しく、5つの皿のうち1つしか救うことができなかった。
他の皿には真っ赤な粉が山のように降り積もっている。
「む~っ、あたしの調理を邪魔するとはつくづく罰当たりな行為ね~っ!」
と言いルネは不満そうにむくれていた。
「んで結局なに掛けてたんだよ」
俺はルネに聞くと、ルネはなぜか上機嫌になって懐からアレを取りだした。
「これっ!!」
「ん~なになに~『辛さ100倍!!地獄の激辛スパイス!一振りでヒィィィィィィィィィ!!』……これはヤベーだろ……」
ちなみに、ヒィィィィィィィィィ! の部分にはキャラクターがムンクの叫びのような表情で口から火を吹いていた。
ヒィィィィだけに?
……うん……ごめん……。
「オイアーク」
「なんだよジャミル……」
「このまま取り合った所で喧嘩になるのは目に見えンだが……」
「どうした?」
「ここはひとつ、コイツでケリを付けねェか?」
そう言ってジャミルは拳を握って前に出した。
「結局喧嘩かよっ!!」
こいつ馬鹿なのか!?
「違ェ! ジャンケンだ!」
「分かりづらいよっ!!」
「おゥ……そうかァ……」
俺が0.1秒で斬り返すと急におとなしくなった。
「……よし、いいぜ? 来な!」
確かに、このまま奪い合うのもそれはそれで悲しい構図だ。
だったら……ここでケリを付けるのも悪くは無い!
負ければ地獄の激辛が待っている……。
こんなところで……俺は死ぬ訳にはいかねぇ!!
こんなところで負けられるか!!
「「最初はグー!!」」
俺達は同時にグーを出す。
俺はそうだな……ここは堅実にチョキを出そうか。
さて、あいつはどう出る!?
……!?
今一瞬奴の顔がニヤけた!?
どういうことだ……まさか既に勝つ自信がある?
何故だ……何か秘策があるというのか?
……まさか!?
俺の思考が読み取られている!?
俺がチョキを出すというのが既にバレているとでも言うのかッ!!
いや……だがこれはチャンスだ。
もしそうなら奴はグーを出すはずだ。
なら俺はパーを出せば……!!
ふ……この勝負、もらった!!
「「ジャンケン――」」
いや待て!!
今握られている拳の人差し指と中指が若干動いた!?
まさか!
奴の狙いはチョキだったのか!?
危ない……このままパーを出していれば真っ先にチョキの餌食になっていたところだった。
だが気付いた以上俺の勝ちだ!
さあ激辛にもだえ苦しむがいいさ!!
喰らえ俺のグー!!
「「――ポン!!」」
あっ……。
あいこだとぉぉぉぉぉ!?
馬鹿なぁぁぁぁ!!
奴はチョキを出すはずじゃ……。
「ふ……」
わ、笑った!?
まさか……。
俺の顔から血の気が引く。
俺は……奴の手の中で踊らされていたとでも言うのか!?
まさかそんな事が……。
だが奴は確かに笑っていた。
そうだとするならば……奴は相当な手錬だ!
こんな化け物のような奴が世の中にいるなんて……。
「「あいこで――」」
くそ……タイムリミットが迫っている……。
どうする……俺に勝てるのか……?
いや!
ここで負ける訳にはいかない!
奴の拳は依然握られたままだ。
どういうことだ……?
まさか、このままグーを出すつもりなのか……?
だとするなら俺はパーを出せば勝てるのだが……。
いや待て、ここは様子を見よう。
む!?
微かに拳の握り目が弱くなった!?
次第に拳が解かれていく……!
間違いない!
奴の次の手はパーだ!!
俺はチョキを出す!!
よし、勝てる、勝てr――何ッ!?
奴は急に拳を握りしめた!!
ば、馬鹿なぁぁぁ!?
このタイミングで選手交代だと!?
ありえん!!
俺もパーに変えなければ!
いや……無理だ!
俺の神経伝達速度をどう駆使したところで、信号が手に辿り着く頃には既に勝負は決まっている!
くそ……ここで終わりなのか……?
いや諦めるなッ!
奴の手の内は読めてるんだ!
まだ信号が辿り着かないと決まったわけではない!!
諦めたら、そこで勝負は終わりだ!!
もっとだ!
もっと速く!!
うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
喰らえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
「「――ポン!!」」
ぐうあああぁぁぁぁぁげおhvc;えqhんw@うqgd;おhhw」;kjdlwqh!!!!!
「負けたぁぁぁぁぁぁぁーーーー!!!」
結局、俺はチョキ、ジャミルはグーを出し、俺は負けたのだった……。
「まだまだだなァ……だが、良い勝負だったぜェ」
ジャミルはニカッと笑い、普通の生姜焼きの元へと去っていった。
俺は泣く泣く地獄の激辛料理を食す事になった。




