第58話「遺跡の中で」
前回のあらすじ……。
担当:リード・フェンネス。
遺跡の中を突き進んで行く僕達。
金髪迷彩服の男を見たという話を聞いて、急いで連絡した後、一息つくまもなく戦闘が始まった。
寄せ集め部隊とは言え、やはりベテランの騎士達は動きが凄い。
初対面同士の筈なのに連携が取れている。
一方でロウ隊長の足元にも及ばない自分が情けない。
そんな時、ゼークルトに剣を弾かれてしまう。
焦った次の瞬間、助けてくれたのはアークだった。
やっぱ君は強いね……。
努力に才能が勝てない瞬間を見せ付けられて、少し悔しい。
が、以前の直観力とセンスに頼った戦い方より、腕輪『ラプター』のお陰で体力、筋力などが増加したためか、安定した戦い方になってきている。
殆ど努力せずにその力を手に入れてるなんて……ホント羨ましいよ。
――――
「ったく……アークにお前達……何だってこんなとこに?」
驚愕の表情で言ったのはロウさんだ。
あ~、そういやロウさんってリードの教官なんだってな。
そのせいで、俺は良くロウさんに無理やり剣術を教えられていた。
鬼のように厳しい、マジで。
「お久しぶりっす、ロウさん。実はちょっと込み入った事情で――」
「――ロウ軍曹ッ!! その民間人は誰だ!」
やべっ、なんか偉そうな人が睨んでる!
「済まない、私の知り合いでな、すぐ帰る様伝える」
それに対し、落ち着いた様子で対応するロウさん。
なんかかっこいい。
「(おいアークッ! なんでこんなトコに居るのか知らんが危ないから出て行け! つーかお前のせいで俺民間人連れ込んだ変な奴になったぞ! どうしてくれる!?)」
小声で俺に訴える。
前言撤回。
意外と必死だったようだ。
「(悪い悪い退散するわ! あっ、リード、情報ありがとな! なんか気をつけろよ!)」
俺はリードに小声で言いながらそそくさと退散する。
これ以上ここに居たら偉い騎士様に睨み殺されそうだ!
「なんか気をつけろって……どんだけ曖昧なんだ君は……」
リードがそう呆れて呟いた頃俺達は既に退散していた。
――――
「騎士団の戦闘に割って入るなんて頭おかしいの? ホント馬鹿なんじゃないの?」
なんかリナが無表情でボソッと言った。
「だってよー……リード危なそうだったからつい手が」
「そ。でも騎士に見つかったら追い出される。常識ね」
ピシャリと言い返される。
「戦闘中の古代遺跡に侵入しようなんて馬鹿ァ、そうそういねェだろォからなァ」
ジャミルがさらに追い討ちを掛けてくる。
「だぁぁもう分かったよっ! 俺が悪かったスミマセンでしたっ!」
だいたいたまたま遭遇したんだからしょうがねぇだろうが!!
「……なァ」
ジャミルが何かに気付いたようで、ふと足を止める。
「どうしたジャミル? 腹減ったとか言うなよ?」
「言うかァ! つーかよォ……オッサンいなくねェ?」
ん……?
周囲を見る。
おっさんの影は無い。
「そ。死んだのね」
「断定早いよ!!」
リナに俺が突っ込んだ。
「つーかマジで居ないし! おっさん迷子かよ!?」
元からふらふらしてたけど……まさか消えるとは。
つーかおっさん武器持ってんのか?
大丈夫なのか?
……まあなんかしぶとそうだけどさ。
「めンどくせェなオイ。俺らに散々迷惑掛けたから死という天罰でも落ちたンじゃねェの?」
「いや死んでる可能性に絞るなよ。……まぁめんどくさいというのには全面的に同意するが」
……といってもおっさんを探してる時間は無いが。
「ホント面倒ね。金髪探しながらオッサンも探すわよ」
リナが珍しくまともな意見を提供し、とりあえずそうする事にした。
――――
「紅蓮斬ッ!!」
僕はゼークルトの片腕を斬り落とす!
炎は上がるものの小さい。
「まだまだだなリード、よく見てな! 紅蓮斬ッ!!」
ロウ隊長が僕の前に入り、剣を振る。
隊長が斬ると、ゼークルトから勢いよく炎が上がり敵は丸焦げになった。
「こうやるんだぜ?」
と隊長は二ッと笑って僕を見る。
そんなに簡単にできたら苦労もしないのになぁ……。
「ほー、すごいですたいちょー!」
エルはにっこり笑って拍手をする。
「エル! まだ1体残ってる! 気を付けて!」
一応気付いていると思うが言っておく。
「分かってるよ! ――神聖なる天よ! 我らに仇なす者に天罰を! ホーリークロス!!」
エルは白い魔法陣を展開し、呪文を唱えた。
ゼークルトの中心に白い十字架が刻まれ、ダメージを与える。
「はぁッ! ショックブレードッ!!」
僕は一気に距離を詰め、衝撃波を纏った剣で直接敵を斬った。
僕の攻撃で何とかゼークルトは倒れたようだ。
「おお、お見事お見事、なかなかいい連携だったぞ?」
ロウ隊長は剣を納めて拍手をした。
「ありがとうございまーす!」
エルが元気よく返事をする。
「ロウ軍曹、突然だがヴィクトリア・マクラーレン軍曹を見なかったか?」
話し掛けてきたのは作戦の指揮官、ジン大尉だ。
「先程軽い会話をしていましたが……なにかあったのですか?」
「ふむ……先の戦闘から姿を確認していない。逸れた可能性がある。一応先行偵察隊へ連絡しているが、発見次第報告を頼む」
「はっ!」
ロウ隊長は敬礼をして、ジン大尉を見送る。
「ったく……ヴィクトルの奴、何やってんだかなぁ」
はぁぁ、と呆れた様子で溜息を吐いた。
《全騎士に告ぐ。先行隊が遺跡の最深部前へ辿り着いた。中は魔物の巣窟となっている可能性が高い。注意しろ」
同時に別の部屋から魔物を駆逐し終わった騎士たちが集結してくる。
「――よし、突入!」
部屋の隔壁を破壊し、正規の騎士達が次々と突入していく。
「エル、リード! 覚悟はいいな!? 行くぞ!!」
「はい!」
「了解!」
僕たち見習い部隊も突入した。