第57話「合流!!」
前回のあらすじ……
担当;リナ・ベルナール。
アタシの担当久々ね、相変わらずだけどマジめんどい。
アタシ達はリードの情報でバスキルト砦へと向かった。
ここにあの金髪が居るのね。
色々あったけどなんか目的達成できそうね。
他はどうでもいい……と言いたい所だけどさすがに冤罪で打ち首寸前の知り合いが居たらほっとけないわね。
めんどいけど。
魔物に襲われつつ砦を目指し、やっと辿り着いた。
疲れたわね、早く帰りたい。
――遺跡内、第16混成団:リード視点――
「ゼークルトに気を取られすぎるな!! イヌッコロも油断すれば集られて終わりだぞ!」
「「了解!!」」
ロウ教官……じゃない、ロウ隊長の檄が聞こえる。
腹の底から声を出し、前を見る。
ゼークルトが3体、バルードは……多すぎて分からない!
こんなに多いなんて……さすが遺跡は違う!
「はぁぁぁッ!」
道を塞ぐバルードを切り捨てる。
一体一体は大したことが無い、ただ数には注意しなければ囲まれる!
前からゼークルトが走ってくる!
僕を捉えたようだ。
鋭い爪が迫る!
「甘いよッ!」
攻撃を見切り、すばやく身を右にずらして攻撃を避ける。
反撃を――駄目だ、左からバルードが来てるッ!
「聖なる力よ――ホーリーブラスト!」
後ろから光球が数個飛んできてバルードが散った。
「エル!」
「リード! 手を止めるな!」
「はいッ!!」
エルの援護を見ていたら、隊長に怒鳴られた。
僕も頑張らなければ!
「このっ、ショックブレードッ!!」
僕は剣を握り、直接ゼークルトを斬る。
この剣術は、衝撃波を飛ばすことも出来るが直接相手を斬るのにも向いている便利な技だ。
だがその分厚い皮膚に対しては、まだ致命傷には成らない様だ。
「フェンネス援護する! どいてろォ!!」
僕は咄嗟に身を引いた。
次の瞬間、飛んできた火球はゼークルトを直撃し、爆発。
その周囲のバルードまでもまとめて吹っ飛ばした。
「カレッジ少尉! 助かります!」
彼はここに来て知り合った、帝都即応部隊の正規騎士の人だ。
手に火線砲……火球を発射する筒を握っていた。
セトラエスト王国から流入した兵器の一つだが、世界的に普及している。
「はぁぁ――閃光斬ッ!!」
僕はすばやく懐に入り、光の魔素を使った斬撃を繰り出す。
効いてるぞ!!
だが止まってる暇は無い――後ろからバルード4!
「っ、次から次へと!!」
飛び掛る2体をかわし、後ろの2体を捉える!
「紅蓮斬!!」
燃え上がる刀身をそのままバルードにぶつける。
巻き上がる炎はゼークルトの硬い皮膚には効かなかったが、バルードの薄い毛皮には効果抜群だった。
「はは、やるじゃねぇかボーズ! 見習いにしてはいい動きだ!」
カレッジ少尉が火線砲を放ちながらこちらを見る。
「チッ、ロウ軍曹! 第五小隊の奴らが押されてる! 第二小隊と共に右翼の頭を抑えろ!」
この人は確か……第三小隊のベンリル隊長……だったか。
出撃前に簡単な名簿は貰ったけど、さすがに全員は把握できてない。
「了解! ロウ、ちゃぁんとヒヨッコの面倒見てろよ? さすがにそっちまでカバーしてる余裕はねぇぞ?」
第二小隊のジーニアス隊長がせせ笑う。
分かってはいるけど……こう馬鹿にされると悔しいもんだね!
「うるせぇ! この俺が教官やってんだ! 普通のヒヨッコと一緒にすんじゃねーぞ! ――うし、行くぞ移動だ!!」
「「了解ッ!!」」
言われて、反射的に反応する。
「ジャック、ハイジ、エルアス! 面制圧だ、ぶっ放せ!!」
ロウ隊長が威勢よく叫ぶ。
「「「了解!!」」」
三人は詠唱を始めた。
三人とも魔法詠唱兵器持ちだ。
「敵前衛を吹っ飛ばした後、突撃し第五小隊のアホ共を救う! ゼークルトは抑える程度だ、無理に戦うな! アホ共を救った後で個々撃破だ! なぁに、2、3人で掛かれば恐い奴じゃねぇ! いいかヒヨッコ共! こんなのは遊びと一緒だ! ヘマして死ぬんじゃねーぞ!?」
ジーニアス隊長が指示を飛ばす……と同時に、
「神聖なる天よ! 我らに仇なす者に天罰を――ホーリークロス!!」
エルが巨大な十字架で中央の敵を蹴散らし、
「地獄の業火よ! 灼熱の炎にて辺りを灰にしろ――ヘルブレイズ!!」
ジャックが中心の炎の球から無秩序に発生する炎で火の海を作り、
「乱れる荒風! 万物を吹き飛ばす剛風となり、我の意のままに破壊せよ――ブレイクストーム!!」
ハイジが放った竜巻が、その火の海を縦横無尽に駆け巡る。
凄い……臨時で加わったエルは兎も角、炎と風が相乗効果で攻撃範囲を拡大している……。
これが、“実戦”なのか……!
数十体のバルードが吹き飛ぶが、ゼークルトはダメージを負いつつも未だ健在だ。
「今だッ! 全員突撃ッ!!」
ロウ隊長が叫び、僕達は各自突撃を開始した!
健在とは言えゼークルトはだいぶダメージを負っている。
僕は先ほどの魔法の、燃え盛る炎を頭の中にイメージする。
よし、今ならッ――!
「このッ、紅蓮斬ッ!!」
剣先から炎が舞い上がり、斬ると同時にゼークルトが炎に包まれた。
「いい腕してんじゃねぇかヒヨッコ! その調子だッ!」
ジーニアス隊長から賞賛を頂いた。
「第五小隊、バルツァ少尉! 無事か!!」
ロウ隊長が叫ぶ。
何とか第五小隊と合流出来たらしい。
「済まないな! 敵に押されている、前面を頼む!」
バルツァ隊長は女性だった。
この人は確か、ドーイング駐留軍の騎士だ。
「よし、リード! 突っ込むぞ! ジーニアス、左翼にバルードが多い、対処を!」
「了解! オイお前らァ! 暴れ放題だ! 斬って斬って斬りまくれ!!」
「「「了解!!」」」
ロウ隊長の指示に、ジーニアス隊長が従っている。
……多分、この2人は戦友なんだろう。
階級は軍曹と少尉だけど、それ以上の深い信頼を感じる。
「くッ……!!」
ロウ隊長と前面戦闘を任されたが、やはり敵の数が多い!
僕はゼークルトの爪に弾き返され、柱に背中を強打した!
「リード! ――天よ! 我に聖なる活性を……エイド!!」
エルの杖から流れる温かい風が僕を包む。
その隙にロウ隊長が僕の前に入り込む。
「はぁぁッ! 紅蓮斬ッ!!」
隊長の大剣でゼークルトを斬ると、そのまま炎がゼークルトを包み込んだ。
「ッしまった――ロウッ! 後ろからも来てるぜ! このままじゃ囲まれる!!」
ジーニアス隊長の叫び声が聞こえる。
「何!? こっちは無理だ! 手が離せないッ!!」
バルードの大群と、少数のゼークルトに押されている!
エルが回復に回ってくれているが、それも長くは持たない。
「く、このッ!!」
言ってるそばからバルードが飛び掛る。
避けてる余裕は無い!!
剣を縦に振り、両断!
「背後の敵はこちらで対処する! 戦線を固めつつ、一時後退!」
バルツァ隊長の声だ。
バルード3匹に、ゼークルトが1匹。
ゼークルトは今ロウ隊長が相手をしている。
いや――2匹目が狙いをつけている!
「エルッ、すまないがバルードを頼む!」
「了解! 聖なる力よ――ホーリーブラストッ!!」
数個の光の弾が敵を撃ち抜く。
その隙に、ゼークルトの側面に飛び込む!
「やらせないッ! 閃光斬ッ!!」
光の剣撃で一撃――って受け止められた!?
その衝撃で剣が手から離れてしまう。
ゼークルトは雄たけびを上げ、鋭い爪で突き刺そうとする。
まずい――避けられな――、
「――クロスエッジッ!!」
え!?
僕の前には、見慣れた幼馴染がいた。
「ぼさっとすんなリード! 剣取れッ!!」
「あ……ああ!」
僕はすぐに剣を取って構えた。
「ダイヴスラッシュ!!」
「紅蓮斬!!」
僕とアークの技が同時に決まり、ゼークルトはようやく息絶えた。
「あ゛~ったく、トカゲ野郎強すぎ、マジ疲れるわ!」
そう言いつつ、向かってくる三体のバルードを斬りつける。
戦闘中でも君のその余裕はホント見習いたいよ。
「助けてくれてどうも! ジャミルとリナも一緒だったんだね」
後から来た2人を見て言う。
「あァ! この敵の多さにゃ驚いたがなァ! にしても、息ぴったりじゃねェか! さすがは幼馴染って言ったところかァ!?」
ニヤニヤしながら喋りつつ、射撃で中距離からゼークルトを抑えるジャミル。
「そうかい? ダガーに合わせるのってなかなか大変なんだけどね!」
ジャミルが抑えている間に、僕とアークが挟み撃ちを掛ける!
「なんだよ! こっちだってそんな長物振り回されてりゃ動き辛いくてたまんねーよ!」
言いつつ、アークは側面からゼークルトに“クロスエッジ”を仕掛ける。
その背後からバルード五体!!
「それ、この場に居る全騎士侮辱してるわよね。別にどーでもいいけど!」
マイペースでそのバルードを炎に包み込むリナ。
「あのガキ共……ったく何処から出てきやがったんだか……」
ロウ隊長が呆れて半笑いする。
気が付けば、ほぼ戦闘は終了していた。
「ハハハ、いいじゃねェかロウ! そのガキ共のお陰でこっちはなんとかなりそうだぜ!」
ジーニアス隊長は上機嫌だった。
「こちらも同意だ。あの少年たちには感謝せねばな……しかし、彼らは一体……? どこかのギルドの連中か?」
バルツァ隊長が疑問を口にする。
ザイルを探しに来て偶然遭遇したんだろうけど……それはさすがに言えないしね。
「しらねぇが、何にせよ大尉に見付かったら色々面倒だな。助けてくれたことは嬉しいが、正直早めに帰らせたほうがいいだろぉなァ。死なれちゃ困るしよォ」
ジーニアス隊長が頭を書きながら言った。
「リード。ジン大尉に見付かったら……どうなると思う?」
不意に、エルが聞いて来た。
「うーん……一応騎士以外立ち入り禁止区域だしなぁ……良くて厳重注意、最悪投獄なんだけど……アーク達、絶対その危険、分かってないような……」
まったく、いくら僕が教えたからといっても、ここまで無茶やらなくても……。
しかしそれで助けられてしまったら、もはや何とも言えなかった。