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永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第六章 ドーイング騒乱
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第56話「バスキルト砦へ」


前回のあらすじ……。

担当:アーク・シュナイザー。

目撃情報は得られず、手詰まり状態だった俺達。

くっそ……早くしないとルネがヤバいってのに……。

そんなとき、リードからテレスで連絡が!

なんとバスキルト砦で金髪の男を見たという。

もしかして、ザイルじゃね?

という不確かな情報をもとに俺達は砦へ向かった。



――――



「ふ~、マジでなんもねーな」

 俺達は今、バスキルト砦へ向かっていた。

 今いるのは、茶色の岩肌がむき出しの荒野。

 シャノールからドーイングまでは草原だったのに、この辺はえらい違いだ。


「お? バスキルト砦、あれじゃない?」

 おっさんが指を指す。


 見ると、朽ち果てた城のような古代遺跡(ベース)があった。

 なるほど……あれがそうなのか……。


「あンなンが古代に建造されてやがったなンて、見る度に信じられなくなるがなァ」

 ジャミルはぼーっと古代遺跡(ベース)を見て言った。


「ん? ジャミルは遺跡見た事あるのか?」

 俺は気になって聞いた。

 実は俺、古代遺跡(ベース)を見るのはこれが初めてなのである。


 でもなんというか……そんな未来的な感じはしない……いや未来的な感じが何かと聞かれればそんなのは知らんが。

 見た目は小さな城だ。


 といっても当然普通の城とは違って、長方形の箱をドカッと横向きに置いたみたいな感じだ。

 そこに数本の突起があったりパイプみたいなのが走ってたりするが、それらは全て朽ち果てていて見事にコケやツタの餌食となっている。


「あァ、何回かな。『紅の剣』に居た頃、魔物討伐の依頼で行ったことがあるぜェ。朽ち果てンが、そもそも何千年も前にあった建物が生き残ってる事自体信じらねェと思わねェかァ?」

 確かにな……。

 しかもこの遺跡は、魔核大戦をも耐え切ったんだからな。


「ん?」

 グイ、とリナが引っ張る。

 なんだ?


「右、魔物」

 ん……?

 うわぁなんかいる!!


「おおっといつの間に~、やや、あれはアーバントだぁねぇ~」

 おっさんその緊張感0の口調は何とかならないのか!?


 アーバント、ゴリラ型の魔物だ。

 そう言えば前ジャミルから聞いた話によるとモルゼスの森で『蒼き刃』が返り討ちにあったそうだ。


 普段はザコだが、コイツも絶対凶暴化してるだろうな。

 でも1匹だったらなんとかなるはず!


「ブッ飛ばす! サンダーバレット!!」

 ジャミルは2丁の拳銃を構え、2発の雷の矢を撃つ。

 雷の矢はアーバントに突き刺ささる!


 だが敵は吠えるだけで倒れない!


 効いてないのか!?

 アーバントはそのままジャミルに突っ込む!


「うおおお! 来るんじゃねェ!」

 ジャミルは接近戦は不利だと悟ったのか、ジャンプで後退してアーバントの突進をかわした。


「どいて! ――燃え盛る火炎よ、敵を蹴散らせ! フレアスプラッシュッ!!」

 後方でリナが赤い魔方陣を展開し、魔法を放った。

 アーバントを中心に、激しい炎の爆発が発生!


 てかジャミル若干掠ってるんだが……。

 だがアーバントはまたも喉を震わせて自身の生存をその場に示す。


 まだ生きてんのかよ!

 アーバントはその場から高くジャンプした。


 標的は……俺か!?

 俺を踏みつけようとしたのか、俺めがけて着地したが、余裕でかわせるぜ!


 俺はすぐアーバントの背後に回り、4連撃!

 アーバントの右手が俺の腹を狙う!

 右フック!


 ――回避ッ!

 大丈夫だ、動きは遅い、そのまま攻めれば勝てる!!


 俺は一旦距離を取る。


「はぁぁ……ダイヴスラッシュ!」

 俺はジャンプ左ダガー振り下ろしからの右ダガー2連撃をアーバントに切り込む。

 いや――まだ!?


 アーバントはよろめいたがまだ生きていた。


 まずい!?

 左手が迫ってる!?


 ――ッ!?

 その瞬間、なぜか、アーバントの左手が吹っ飛んだ。


 唖然とする俺……だが今ならやれる!


「クロスエッジ!!」

 トドメを決めて、アーバントは沈黙した。


「ふう……ヤバかったぁ……」

 でもさっきの……あれはなんだったんだ!?


「おいアーク、テメェさすがだなァ。あの一瞬でアーバントの腕を斬り落とすたァ」

「確かにあれは凄かったかも」

 ジャミルとリナの賞賛が届く。

 ……え? いやいや俺じゃねーし。


「俺やってないんだが……リナ……な訳ないよな?」

「はぁ? 馬鹿? アタシは火しか使えないわよ」

 分かったからそのゴミを見る目をやめてください。

 確かにあれは鋭利な刃物で切ったような感じだった……当然ジャミルじゃないだろうし、まさかおっさんな訳ないしなぁ……。


「あれ……ていうかおっさんは?」

「あっちの方でうずくまってるわ」

 ん?

 あ、ほんとだ。


 頭抱えて震えてるよ。

 大丈夫かあのおっさん……。


「お? どうやら終わったようね。いや~、チミ達やるねぇ」

「おいおいおっさん……戦えないなら危ないから村に帰った方が良いんじゃないか?」

 当然おっさんの面倒まで見る気はないし。


「いやいや、こう見えておっさん逃げるのは得意中の得意だってばよぉ!」

 いや……むしろ逃げ足しか速そうじゃないもんな……。

 

 そんなこんなで、俺達は何とか砦内部に侵入した。



――ドーイング駐留軍・屯所・駐留軍長室――



「ウェルナー大尉! ブエノース大佐殿が意識を回復させました!」

 一人の若い事務官が慌てて軍長室へ入る。


「そうか……ご無事で何より。医師はなんと?」

 ウェルナーと呼ばれた人が振り返る。

 30代後半の茶髪の男だ。


「はっ! 治癒術をかけましたが完治には至らず、全治三週間程の怪我だそうです」

「ふむ。報告ご苦労」

 そう言って、デスクに向き直ったが、事務官に引き止められた。


「あの、大尉! 大佐殿が事件の証言をしていたのですが……」

「……証言?」

 ウェルナーは気になって、もう一度事務官に向き直った。


「大佐殿によると、犯人は金髪で迷彩服を着た男、だそうです」

 それを聞いたウェルナーの顔が真っ青になってゆく。


「な……に……?」

「その……現在拘束しているルネ・アーサスでは該当しないのでは……」

 控えめに事務官が言う。


「(くッ……まずい……。これが冤罪だと分かれば、私の立場は終わる。ブエノースめ……余計な事を……)」

 ウェルナーは苦虫を噛み潰したような顔をする。


「(だいたい、あの状況下で何故犯人があの娘ではないのだ! 明らかに窓から侵入した形跡があったし、正門は鍵が掛けられていた。子娘は血の付いた剣を持っていたし、あの屋敷にはブエノース以外住んではいない。立派な現行犯だ! ……クソッ! 私は忙しいのだ! 何の為にここまで頭を下げて帝都からの応援を呼んだと思っている! こんな無用な傷害事件の犯人探しなんてしている場合ではない! ただでさえ兵力を消耗しすぎたのだ。これ以上私の手腕が問われる事はあってはならぬと言うのに!!)」


「……加えて、そのルネ・アーサスはブエノース大佐の姪のようです。親族であるなら、あの屋敷に居ても不思議は無いかと……」

「なに? 親族、だと?」

 その言葉にウェルナーは食い付いた。


「(親族……そうか、まだ手は残されている! ブエノースは親族を庇う為に出鱈目を言っている! こうすれば……こうすればまだ私は救われる! いや……だがブエノースを外に出してはまずいな……)」

「いや。犯人は、ルネ・アーサスで決定だ」


「……大尉?」

 低い声で言うウェルナーに、事務官は不信感を抱く。


「大佐殿にはしばらく軟禁させてもらおう。いいか? 何があっても外には出すな。絶対安静とでも伝えておけ」

「はっ……しかし……」

 事務官は言いよどんだ。

 これは明らかに不正だった。


 しかも、自分の失態を隠そうとする最悪なものだ。


「君の現在の階級は……確か曹長だったか?」

 ウェルナーは唐突に話を振る。


「はっ! そうでありますが……」

「ふむ。本日付で中尉に昇任だ。給料は三倍に跳ね上げよう」


「ッ!! それは……しかし……」

 一瞬の歓喜。

 しかし、それもまた不正だ。


「君には、嫁と娘が居たな。確か借金もあったと聞いているが?」

「……はい」


「家族にいい物を食わせてやれ。その代わり、この事は絶対に内密に、頼むぞ?」

 そこまで言われては、事務官も折れざるを得なかった。

 これは自分の為じゃない。


 少なくとも、自分が不正の片棒を担ったとしても……それで家族が幸せになるなら……。

 そういう逃げ道を見付けてしまえば、後は納得するまでは簡単だった。


「は、はいッ! ありがとうございますッ!!」



 犯人は、ルネ・アーサスに決定した。


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