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永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第2章 疾風の翼
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第5話「幼少の記憶」

今回から新編、疾風の翼編へ突入します。


前回のあらすじ……。


担当:アーク・シュナイザー。

おなかいっぱい食べましたとさ。

めでたしめでたし。


……………………。


な訳ねェェーだろォォーー!!

殺す気かあの破壊的天然ちゃんはァァッ!!



――――



――それは、今から8年も昔、NC2101年。

俺が10歳を迎えた年の出来事だった。




夕方、家に1人の男がやってきた。

男は、どうやら、親父に仕事を依頼しに来たらしい。

その人は、派手な金髪に迷彩柄のコートに加え、鋭い眼つきをしていたので少し怖かった。


親父の仕事は、『古代遺跡(ベース)』から発掘された『古代遺産(ラスタード)』の鑑定をすることだ。

眼つきの悪い金髪男は、親父に鑑定して欲しい古代遺産(ラスタード)を渡す。

すると親父の顔は、極端に真剣になった。

重要な仕事なんだろうか。


その日の夜、結局仕事で部屋に篭りっきりで、食事も作ってくれなかった。

仕方ないので俺が簡単な食事を作り、親父に持って行った。

俺は驚いた。


部屋の戸を開けると、親父はやつれていた。

心配になるが、親父は少し疲れただけだ、とだけ言う。

俺は不安になったが、出来ることも無い為、寝た。


その夜。

既に深夜と呼ぶべき時間帯に、人の気配を感じ、俺は寝ぼけ頭で目を覚ます。



――アーク……、ブラストレイズを、頼む……。



確かに、親父の言葉だった。

何のことか全く分らなかったが、その言葉に胸騒ぎを感じ、上半身を起こす。

そこには誰の姿もなかった。


夢か……。

そう思い、俺はいささか不安を感じるものの、気にする程の事でもないだろうと勝手に解釈し、布団の中に潜った。



まさか、それが親父の最後の言葉になるとは知らず――。



翌日、親父は――



死んでいた。



――――



「――ッ!! ……はぁ……はぁ……はぁ……」


 俺は跳び起きていた。

 体中から嫌な汗が噴き出、体が新鮮な酸素を欲して荒い呼吸を繰り返す。

 ……嫌な夢、だ……。


 あれから……もう8年、か……。

 俺は布団を剥いで上半身だけ起き上がっていた。


「なんだってんだよ……今更……」

 ……俺は10歳の頃に、親父を亡くした。

 近くの森の奥で亡くなったそうだ。

 母さんはもっと前に病気で死んでいたから、俺は1人になった。

 その為、俺は今ここフェンネス家に住ませてもらっている。


 あの日から数年はよくうなされたが、最近そんな事は無かった。

 ホント、今更だ。


 死因は不明。

 だが自殺ではない事は確実で、騎士団によると何かの未知の魔法で殺された線が濃厚らしい。

 俺は当然騎士団に親父の様子と、謎の言葉『ブラストレイズ』について聞いたが、結局何も分からなかったそうだ。

  

 俺には夢は無い。

 だが、もし叶うのなら、親父を殺した奴の仇を……討ちたい。

 それが、俺の唯一の願望だった。


 もしも、あの日の夜、親父の言葉に反応できていたら。

 もしもあの日、親父をもっと問い詰めていたら!

 もしあの言葉の意味が、俺にも理解できたなら!!


 少なくとも、こんな悲しい結末は迎えずに済んだのかも知れない……。

 俺は、親父を救えなかった。

 危機に気付いてやることすらできなかった!

 ずっと一緒に住んでいたのに!


 だから……親父を殺したヤツを、同じように殺す。

 俺が親父に出来ることは……それだけだ。


 そんな事をしたって、親父が帰ってこないのは馬鹿な俺だって分かってる。

 でも……あの日以来、俺の時間は止まったままだった。


 ……やめよう。

 こんな事考えても仕方がない。

 俺は暗闇に慣れて来た目で時計を覗く。


「……まだ、4時かよ……」

 俺の起床時間には早すぎる。



――――



 早朝四時。


「………………」

 俺は外に出ていた。


 あのまま家にいても、多分眠る事は出来ない気がした。

 人によっては起きている人もいるのかもしれないが、この町ではそう言う人は居なかった。


 だから町は静まり返り、いつもとは全く違う雰囲気を醸し出していた。

 なんだか、全く別の知らない町を歩いているようだった。

 小鳥がさえずり、夜明け前の独特の青暗い空を数匹が飛び交う。


「小鳥は早起きだな……」

 そんな、意味のない言葉を呟いてみる。

 

 特に、目的があった訳でもない。

 ただ歩いていただけだった。

 それなのに、気が着くとある家の前に立っていた。

 町の最果てにある、木でできた家だ。


「…………」

 だが木は腐り、屋根は抜け落ち、ガラスは割れ、植物が生い茂る、見るも無残な姿になっていた家だ。

 8年前に、家主が死に、息子が出ていった家。

 そう、俺が住んでいた、家。

 

 俺は入り口の前で立ち尽くしていた。


「…………なんで来ちまったかな……」

 一言だけ、呟く。

 俺はあの日から今まで、無意識ながらこの場所を避けていたはずだ。

 無駄に過去を振り返りたくは無い。


 感傷に浸ったって、ウザいだけだ。

 幼馴染だったリードの家に厄介になる事でいる必要も無くなったし、元々村の1番外れだったので家前を通る事も無かった。


「まだ、残ってたなんてな……」

 それでも、実際に目にしてしまうと何とも言えない感情が心に入って来る。

 それは懐かしさであり、悲しさでもあった。


 この家は、親父が自分で建てた家だった。

 そんな不格好な家が、8年という歳月を経てなお、こうして形を保っているのは驚いた。

 一度、取り壊しが計画されたんだ。


 でも俺は、何故かそれを断った。

 ……今でも、あそこに親父が居るような気がして、壊したくは無かった。

 近づいて、中に入って、親父が居ない事を確認するのが嫌だった。


 まあ、そんなものは幼い俺がショックのあまりに考えざるを得なかった幻想だってのは今なら分かる。

 親父は間違いなく……死んだんだよ。

 だから、俺は意を決して中に入って見ることにした。


 崩れたドアを開ける。

 ぎしり、と木がきしむ音がして、その後バタン、と扉ごと倒れてしまう。


「はは、ハリボテ屋敷かよ……」

 先へ進む。


 たまった埃と塵が、俺の目と鼻を攻撃してくる。

 俺は目を細めて埃から護りながら先へ進む。

 ああ、ここは親父の書斎か……。

 そうだよ、ここに毎日座って古代文明(ラスタード)の研究をしてたっけなぁ……。

 そしてこっちは、俺の……。


 ――ガタン!!


 音がした。

 今の音は……なんだ!?


 ――ミシッ……ミシッ……。


 足音。

 それ以外には考えられないような音。

 俺以外に、人がいる――のか!?


「――動くな」

 突如響く鋭くドスの利いた男の声。


「………………ッ」

 何も言えない、それどころではない。

 首元に、銀色に輝く何かがあった。


 首が動かせない為、眼球を下に向けても全体は見えないが、確認するまでもない。

 鋭利に研ぎ澄まされた、ナイフだった。


 心臓が早鐘のように鳴り響いた。

 ごくん、と唾を飲み込む度に体が強張る。

 その動作をきっかけにして、相手が動き出すのではないか、そう考えてしまう。


「動けば、殺す」 




 この日から、俺の日常は姿を変えていく事になる……。


まさかのシリアス展開。

うまく書けてるかなぁ……不安だー。


今までの展開は設定とか世界観とかキャラを明確にするための話だったので、これから物語が進んでいきます!

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