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永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第五章 帰省と旅立ち
48/110

第48話「出会った男は……」


前回のあらすじ……


担当:アーク・シュナイザー

俺の旅立ちは、すっかりリードとエルに知られていた。

隠していたつもりだったが、お見通しだったようだ。

俺の気持ちをリード達は理解はできても許可はできなかったようでお互い熱くなってケンカしちまった。

結局リードとエルは町に残り、俺はザイルを殺す為、酪農の町ドーイングへ向かう事になった。



――――



 案の定、雨は降ってきた。

 しかも結構土砂降りときたもんだ。


 ったく、マジでどうしようもない旅立ちの日だよまったく。

 しかも傘を持って来てないと気付いた時には死にたくなったね。


 結構な雨だったので、テントでも建てたい気分になったが、リナを待たせるわけにはいかないし、そんなもの持ってないし、何より次の賢者の命が危ない。

 俺が行ってどうなる問題じゃないけどな。


 そんな訳で足を止めてる訳にはいかない。

 唯一の救いは服装がたまたまフード付きだったって事か?


「おォーい!! そこのヤツ!! ちょっといいかァ!?」

 遠くの方から叫び声が聞こえた。

 その黒い雨合羽を着た男は近くに走って来て言った。


「なァ、帝都に向かうにはこっからどう行ったら――って! テメェアークじゃねェかっ!!」

 あ……れ……?


 その男は、赤髪の不良、ジャミル・ハワードだった!


「ジャミルかよっ!! お前こんなところで何やってんだ!?」

 ちなみにここはモルゼスの森を抜けてちょっと行った草原だ。


 まっすぐ行けば『荒風の村シャノール』へたどり着く。

 俺はそこから馬車に乗り、ドーイングへ向かう予定だった。


「いやァ、馬車を探して帝都に向かってンだが、どうにも道に迷っちまったらしくてなァ…」


「……は?」

「ンだよその呆けた顔ァ?」

 眉間にしわを寄せ、マジで喧嘩売ってる不良みたいな顔だったがもう慣れた。


「帝都なんてこっから真逆だよ! お前絶対方向音痴だろ!?」

 こいつの出身はブルーム村だろ……?

 そこから帝都なら……迷う方がおかしいくらい道はカンタンだ。


「なァッ……!? し、しょうがねェだろッ! 雨で濡れて地図が見えなくなっちまったンだからァ!」

 いや……地図が必要な時点でもう……。


「……じゃあ、こっから一番近い村はァ?」

「ここからだとシャノールだな。要は馬車が出てればいいんだろ?」


「あァ。ンでテメェは何やってんだァ? 傘も差さねェで」

 俺達はシャノールに向かって歩き出した。


「俺はシャノールから馬車でドーイングに行くんだ。ちょっと用事があってな。傘は忘れたんだよ」

 どうせジャミルはシャノールでお別れだろう。


 だったら別に目的地くらい教えてもいいかな。

 と思った俺の予想は盛大に外れた。


「マジかァ。俺も最終的にはドーイング行きてェんだが」

「…………」

「ンだァその嫌そうなツラはァ!!」

 ……まじかよ。

 まさかジャミルにもザイルの事説明するわけにはいかないしなぁ。


 どうすっかなぁ……。

 そんな事を考えながら他愛のない話をて歩いていると、いつの間にか雨は止み、最初の目的地『荒風の村シャノール』についた。



――荒風の村・シャノール――



「うおォォォ! 風強ェェェ!!」

「荒風の村ってぐらいだからなぁぁ!! 俺もリードから聞いただけだけどぉぉぉ!!」

 にしてもこりゃすごい!!

 ジャンプしたらそのまま風に乗って空を飛べそうだ!!


 リードから聞いた話によると、季節風?みたいのが年中吹き荒れる村らしい。

 その為村の家は基本的にドーム状で風に強い。


 村人も足に何とおもりを装着しているらしく村人は総じて足の筋肉が凄まじいという話だ。

 だが俺達の目的は観光見物ではない。


「すみませぇぇーーん!! 乗せてくれますかぁぁーーー!」

 つい体に力が入り、大声で目の前の馬車を呼んでしまう。


「おう! いいぞ!」

 馬車にいるオヤジが返事をした。

 あんたは何でそんな平気そうな顔をしているんだ!!



――馬車――



 オヤジにドーイングまで頼むと俺は料金の1000Jのうち500Jを払った。

 残りはジャミルだ。

 ジャミルと出会う事によって奇しくも運賃が半額になるというメリットが生まれたのだった。


「なあそう言えばお前はなんでドーイングになんて向かってるんだ?」

 馬車に揺られながら、俺はシャノールに行く目的は聞いたけどそっちは聞いてなかったなぁと思い聞いてみる。


「はァ……」

 俺がそう尋ねるや否やジャミルは深くため息をついた。


「どうしたんだ?」

 聞き返す。


「実はよォ、村に戻ってさっそく紅の剣に顔を出したンだが、イーリス……いや、団長が相当お怒りで、なんか罰としてドーイングまで行ってドーイング牛のステーキ用の肉を人数分買ってこいとかいう謎のペナルティーを俺に課したモンでなァ……はァ」


 それはまた……無茶苦茶な団長さんもいたもんだ……。

 ジャミルも苦労してるね。


「ハハ…ハ……同情するよ……」

 俺は苦笑いを浮かべて言った。


「そういうテメェはどうなンだ?」

「へ?」

「ドーイングに行く理由だよ」


 しまったぁぁぁーーー!!

 ジャミルに聞いたら、聞き返されるのが当たり前だよね~!


 この話題は本来避けるべきだったのだ!

 見事に自爆しました。


「ええと……なぁ、実はちょっと……リナと待ち合わせしてて……」

「リナって……あの無愛想なガキかァ?」


「そうそう……そんで……ちょっと、な?」

「ちょっと? あァ! さてはやっぱり駆け落ちかァ!?」


「しねぇよ! お前どんだけ駆け落ち好きなんだよ!!」

「その過剰反応は怪しいぜェ? そォいやあの時間にあそこにいたってことは出発は夜中かァ……おォ! これは駆け落ち疑惑濃厚だぜェ!?」


「お前いつからそんなキャラになった!?」

「照れンなよォ~! 応援してっからなァ!?」

 最悪だぁぁぁーーー!!

 最悪な誤解されたぁぁ!!

 その時、馬車が急に止まった。


「ん? …ついたのか?」

 しかし周囲は草原。

 何もない。


「あ、あいつらは……てぇへんだ!!」

 馬車の親父の顔が青ざめた。

 そこで馬車を通せんぼしていたのは、現在最凶と名高い盗賊団――紅蓮の覇王だった。



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