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永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第五章 帰省と旅立ち
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第47話「最悪の旅立ち」


担当:アーク・シュナイザー

村へ帰郷し、とりあえず目立たぬよう夜中の出発を試みる俺。

そんなわけで昼間は暇つぶしをする事にした。

成り行きでロータスのおっちゃんと話をするのだが、ちょうど俺が旅立った辺りから魔物の異常行動や凶暴化が目立つようになったらしい。

孤島で出会ったドラゴンウルフがいい例だ。

物騒だな~っとなんとなく考えていたが、まあ俺にはどうすることも出来ないので深くは考えない。

そんな感じで、夜を迎えるのであった。



――夜中――



 ……結局、父さんは帰って来なかったな。


 村を出て行く前に顔ぐらい見せられればとも思ったが、俺だってこれ以上ここでのんびりする訳にもいかないからな。

 リナにまた遅いって怒鳴られそうだし。


 現在午前3時。

 俺は自宅……フェンネス家の布団の中にいる。


 隣にはリードと母さんが寝ている。

 起こさないように、そーっと出ていくとするか……。


 出かける服に着替え、ダガーを腰にセットして家を出る。

 賑やかな村も夜じゃこの静けさ……。

 まるで別の村みたいだな。


 そういえば、ザイルと初めて会った時もこんな感じだった。

 思えばあん時は何も知らなかったな~。


 あれから暇だった15年間も随分変わったもんだ。


 暇、だった?


 ……いや、親父が生きてた時は少なくとも暇はしなかったな、はは。

 親父かぁ~。


 そういやどっかの森ん中に連れて行かれた(強制連行)時、星座とか教えてもらったっけな。

 空を見上げると、そこにはきれいな星空……って曇りかよ!!


 あ~、しかも雨振りそうなくらいどんよりじゃねーか。

 ついてねーな。

 そんなどうでもいいことを考えながら俺は村の外に出ようとした……のだが。


「どこに行くんだい?」

 後ろから声!?

 俺はあわてて振りかえった!


「りっ、リードッ!? ちょ、おまっ、なんでここに!?」

 俺は完全にパニックになっていた。

 なんでバレた!?


「無人島で重傷を負ってから君の様子がおかしかったからね。昨日もどこか思いつめたような顔をしていたし、何かあるんじゃないかと思って、気にかけていたのさ」

 なんだよこいつ……さすがに怪しまれてるとは思ったけど、まさか後を付けられてるとはな……。


「なーんだ、そう言うことだったの」

 がさがさ、という音がして目の前の草むらからエルがひょっこりと顔を出した。


「「え、エルっ!?」」

 俺達は2人揃って驚いた。


「まさか、エルも……?」

 リードが言う。


「うーん半分ハズレかな。私はリードの様子がそわそわして気になってここに来たんだよ。どうしたんだろうと思ってねー。夜中に出て行く姿を見たから、つけてきちゃった」

「そ、そうだったのか? 俺は全然気付かなかったけど……」

 ザイルの事で頭が回らなかったのかもな……。


「まあいいさ。何があったのか、話してくれるよね」

 リードは言い寄ってきた。

 まいったな……。

 ここまでされれば、いっそ話しちまった方がいいのかもしれない……。


「ええと……実は――」



 俺は事の経緯を話すことにした。

 ザイルが親の仇だった事、魔核大戦やブラストレイズの事、親父が賢者だった事、ザイルが世界破滅を望んでいる事……とか色々。



「――って訳なんだが……信じてくれるか?」

「魔核大戦……ブラストレイズ……リーヴァスレイズに……賢者か……。聞き慣れない言葉ばかりだったね」

 リードは目を閉じて俺の話を整理しているようだった。


「じゃあその腕輪……一応古代兵器……なんだ」

 エルが俺の腕輪をみて言った。


「そう……みたいだな。しかも最終兵器のかけらだってよ……びっくりだぜ」

「でも、君はその話を信じている」

 リードは目を開いて言った。


「さあな。世界がどうとか、俺には分かんねーよ。ただ、俺の親父を殺したのがザイルなら……俺は迷わずあいつを殺しに行く。これだけは譲れねーよ」

 声を押し殺して言ったつもりだった。

 でも、感情ってそう簡単に制御できるもんじゃないらしいな。


 リードとエルは多分止めてくる。

 でもそれでも、俺は仇打ちを止める気はない。


「アークッ! 君は今、自分が何を言ったか分かってるのかッ!?」

 リードは俺の肩をがしっと掴んできた。


「ああ分かってるよ! あいつを殺すってことは、俺が殺人犯になるって事だ! 騎士団に捕まって牢獄にぶち込められるだろうな! でも、それでも親父を殺した奴をそのままになんてしておけねぇ!」

 くそ……こんなに怒鳴るつもりなんて無かったのに……。

 でも、言ってることは事実だ。


「世界がどうとか、分かんねーよ確かに。でも、親父は俺にブラストレイズを頼むって言い残したんだ。この問題は多分……俺が継がなきゃなんねーんだよ」

 俺は極力冷静に言った。

 その甲斐あってかリードも心を落ち着かせたようだ。


「その件に関しては、一度騎士団に相談して――」


「こんな根も葉もない話、騎士団は信じねーだろ。なあエル」

「うん……私は信じるけど……ちょっと難しいかもしれないね……」

 エルの言葉にリードも一応は同意したようだ。


「じゃあ……僕もついていこう」

 やっぱり……最終的にはそう言うと思ってた……。

 でも……。


「駄目だ。お前騎士団はどうすんだよ。見習いとは言えこれ以上騎士団離れたりしたらいくらなんでもまずいだろ」

 さすがにまたリードとエルがいなくなったら、タダじゃ済まないだろうな。

 エルはともかくリードは出世街道まっしぐらなんだから、こんな所であぜ道に引っ張るような事は出来ない。


「それはそうだけど……アークの方が心配だよ!」

「俺はお前らの方が心配だって。せっかくあこがれの騎士様になれるんだ。胸張って生きてけよ」

 エルの言葉に俺が返す。


「でも! 僕たちは親友だろ!? こんな重要な事を……君1人に背負わせるなんて……」

 はぁ……。


 案外めんどくせーのな。

 まあリードとエルの諦めの悪さは知ってたけど。


「俺は好きでやってんだからいいだろ」 


「だからって――」

「親友だろ? だからこそ、ここは俺に任しとけって。お前らは騎士団で成功しとけよ。俺は俺でやっとくからさ」

 リードの言葉をさえぎって俺がそう言うと、2人は何も言わなくなった。

 リードは後ろを向いて言った。


「……君が犯罪者、僕が騎士団になるってことは、君を捕まえるのは僕達かもしれない。それでもいいんだね」

「……ああ。望むところさ。早く……正規部隊になれよ」


 俺達の会話は、それで終わった。

 俺は夜道を歩いていき、リードは村へと帰っていく。


 はぁ。

 とんだ旅立ちになっちまったな。


 ……雨が降りそうだ。

 こりゃさっさと雨宿り出来る場所を探さないとな……。


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