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永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第五章 帰省と旅立ち
46/110

第46話「魔物の凶暴化」

前回のあらすじ……。


担当:アーク・シュナイザー。

モルゼスの森で拾ったおっさんを、村の入り口で捨て置こうと思ったら、エルに抗議された。

なんだかんだで宿屋までおっさんを持っていく事になったのだが、もう食うわ食うわ。

しかも結局風のように姿を消しやがった。

なんだってこういう時だけ素早いんだあのおっさんは。

と考えながら村を歩くと、暫く姿を消していたので村の奴らに揉みくちゃにされる。

気分はいいが、しかしザイルの事を考えるとやはり気は落ち着かない。

一日だけ休んで、とりあえずリナんトコ行くか~。



――帝都・ラシアトス城・騎士団本部・騎士団養成学校――


「凶暴化の加速……ですか……」

 僕――リード・フェンネス――は思わずそう言った。


 僕とエルは今、養成学校で僕の上司であるアルバート・ロウ教官にこってり絞られている途中だった。

 魔物の凶暴化は以前から話には聞いていた。


 だからこそ、無人島でドラゴンウルフの様子がおかしかった時に想像は出来たけど、ここ最近……特に、僕達が帝都から出て行ってから急激に事例が増えて言ったらしい。

 急激な異常行動や、有り得ない場所に魔物が生息したり、群れを作らない魔物が群れを作っていたり……と言った感じだ。


「実はな、一度モルゼスの森付近で大規模なアーバントとの戦闘が合って、騎士団にも結構な被害が出た。アーバントは本来レベルD程度の強さだが、レベルBクラスくらいの強さがあった。俺もその戦いに参加したのだが、……あれは酷いものだった」


 教官は苦い顔で話し始める。

 僕とエルがいない間にそんな事が……。


「被害はどれくらいだったんですか?」

 エルが聞いた。

 いつもの間延びした声ではなく真剣だった。

 それを聞くと、教官が珍しく歯切れ悪く言った。


「……騎士団正規軍2個小隊が戦闘不能、と……見習い部隊からは……ユウとナッドが重傷、他4名が負傷した」

「ほ、本当ですか!?」

 僕は驚いた。

 ユウとナッド、どちらも同じ見習い部隊の仲間だ。


「ああ……普通アーバント程度ならこれほどの苦戦はしない。見習い部隊でも十分撃退できるだろうという騎士団正規軍の判断だったが、魔物の凶暴化は俺達の予想の遥か上を行っていたみたいだ」

 ロウ隊長は悔しそうな顔をしていった。


「隊長、ユウとナッドは……大丈夫なんですか?」

 隣のエルが聞いた。


 重傷と言っていたけど……どれくらいなのか気になる。

 終わったらお見舞いに行かないとな。


「ああ。直ぐに治癒術騎士達が駆けつけてくれたから問題は無い。今は体力回復の為に休養中だがな。ったく、ユウなんて腹減ったばっかり言ってうるさくってよぉ」

 隊長はハハハと笑いながら言った。

 なんだ、あまり心配なさそうだな。


「よかった~、だったらお見舞いのついでにお弁当いっぱい持って行こうかなー?」

「よ、よしとけよ! せっかく治ってきてるのに腹を壊すぞ? 別の意味で」

 隊長はあわてて止めた。

 エルの料理の破壊的物量は隊長も知っている。

 確かに……あれは別の意味で腹を壊す危険があるな……。


「と、言うわけで今俺達第11訓練隊は俺達3人だけだ。本来なら通常通り訓練を始めたい所だが、上の連中が休暇を二日間与えてくれてな」

 へぇ……上――正規軍幹部の人達にしては随分優しい配慮だな……。


「珍しいですねー、上の人達がそんな対応するなんてー」

 僕が思った事をエルが口に出した。


「そうでもないぜ。今帝都本隊の連中は戦力回復に躍起になってるからなぁ……。正直、俺達訓練部隊に場所を与えてる余裕も無いんだろ」

 ああ、そう言うことか……。


 “帝都本隊”、というのは帝都防衛を勤める言わば騎士団のエリート部隊だ。

 上級騎士や、貴族出身の騎士達はこちらに配属される。


 僕達は、見習い騎士を卒業すれば“帝都即応部隊”に配属される。

 こちらは帝都から各地に派遣されて魔物やら盗賊団やらと戦闘をする部隊だ。


 内訳は、僕達のような訓練兵上がりの新米も居れば、現場叩き上げのベテラン騎士もいる。

 規模で言えば、帝都即応部隊の方が多いが、錬度は帝都本隊……特にその中の、“精鋭軍”と呼ばれる部隊は飛び抜けているとか。


 まあそれは置いておいて、恐らく帝都本隊は、地方の“駐留軍”から戦力の引抜を行っているのだろう。

 当然、その分訓練等に場所を使うから、僕達訓練部隊に与えている場所も余裕もないんだろう。


「俺はちょっと教官会議に出席しなきゃならんから、お前らユウ達の見舞いでも行ってろよ。んじゃな」

 そう言って、ロウ教官は部屋を出て行った。

 ユウとナッドか……僕達が居ない間に、随分面倒を押し付けてしまったみたいだね。


「……あっ! 教官! ユウとナッドはどの病室に――ってもう居ないし!」

 僕は慌てて部屋を飛び出したが、もうロウ教官の姿は無かった。


「あーあ行っちゃった。教官は逃げ足速いねー」

 ロウ教官は少し……抜けてるところがあるんだよな……。


 気を付けなければ直ぐこれだよもう……。

 あとエル、そこは逃げ足じゃないよ……。



――帝都・“村”・ロータスの家――



「魔物の凶暴化と異常行動、ねぇ……」


 同じころ、俺はロータスのおっちゃんからその話を聞いていた。

 ……孤島でドラゴンウルフがいたこともそれが原因なんだろうな。


 馬鹿みたいに強かったし、眼の色だっておかしかった。

 ジャミル達が言ってた『蒼き刃』がアーバントに返り討ちにあったって話も凶暴化のせい

かな。


 やっぱリード達が言ってたことは正しかったんだろう。

 とにかく、そんな厄介な事がこの付近で起こっていて、騎士団も打撃を受けているらしい。


「ったく、世の中物騒になったもんだよなぁ。魔物の凶暴化に関してもいろんなうわさが飛び交っててよぉ」

 おっちゃんは鍛冶に使うハンマーを空中で回しながら言う。


「うわさ?」

「ああ、例えば、セトラエスト王国が魔物を操ってるとかな」

 セトラエスト王国……ここギル・ラシアトス帝国の仮想敵国だ。

 両国の丁度中間地点の島に新たな鉱山が見つかったとかで仲が悪いらしい。


「いくらなんでもそりゃないだろ。……まああっちの方が古代文明発掘は進んでるって言うけどさ」

 そんな話を小耳に挟んだだけで詳しくは知らないけど。


「そうだなぁ。あっちのほうはまったく別系統の古代文明を使ってるからな」

「別系統?」

 俺は話が気になったので聞き返した。


「ああ。こっちは殆ど掘り出した物をそのまま使ってるが、あっちのほうは色々改造するのが好きらしくてな。一度行ってみろよ。結構風景が帝国とは違うぜ」

 へぇ……そうなのか……。

 俺は国外には出たことが無いから、一度行って見たいもんだぜ。


「にしても、アークとももうこうして対等に語り合えるようになったもんなんだな」

 おっちゃんはハンマーをテーブルに置いて、


「まったく、子供の成長は早いもんだぜ」

 と笑顔で言って俺の頭をなでる。


「ちぇ……いつまでたってもガキ扱いかよ……それに、俺はおっちゃんの子供じゃねーって。おっちゃんの子供は別にいるだろ……」

 俺はおっちゃんの手を払いのけ、テーブルのイスに座る。


「そう言うなよ。俺からすれば、お前も息子みたいなもんだ。お前の……いや、リードの親父さん、騎士団の仕事が忙しくてあまり町に帰って来なかったしな」

 確かに……父さんはなんてったって騎士団の中佐様だからな。

 いや俺は良く知らないけどとりあえずそこそこに偉いのだそうだ。


「あーー!! アーク兄ちゃんここにいたの!? 探したんだよぉ!?」

 ぜーはー、と息を切らしながらダイチが勢いよくドアをあけて入ってきた。


「ダイチ、そんなに息切らしてどうしたんだ?」

 俺はダイチの元へ歩いた。


「ミンおばさんが呼んでるよ! 今からお昼時だから、アークにこの前の分働いて貰うって言ってたよ!」

「ゲ!! あれおごりじゃなかったのかよ!!」

 しかも今はエルもリードもいないし!


「急がないと準備間に合わないよ!? 早く早く!!」

「くそ……これもあのおっさんのせいか……あの野郎ォォォ!!! 今度会ったら速攻クロスエッジをお見舞いしてやるぅぅぅぅぅ!!」

 そんな感じで、俺の1日は過ぎて行ったのだった……。




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