表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第四章 幽霊船と盗賊団
43/110

第43話「さらば友よ、また会う日まで」

前回のあらすじ……。


担当:ハリス・ローレンス。

やれやれ、今回は俺があらすじ担当か。

前に世話になった少年、アーク達が来たと思ったら、「エイリアスが来るから逃げろ」と言われた。

気遣ってくれるのは嬉しいが、エイリアスを逃す訳には行かない。

そんな話をしていたら、『ノイバラディス』……目玉の二足歩行の魔物が16体も襲ってきた。

まったく、面倒事を増やさないで欲しいもんだ。

ガイスに指示を出して、ノイバラディスの撃退に行こうかと思ったんだが、そこでエイリアスが襲ってきた。

なんつータイミングだ。

しかもあちらさん、『思考詠唱(ショートスペル)』まで手に入れやがって、一体どんな方法使ったんだか。

とにかく、負けるわけには行かない……が、さすがにこりゃ劣勢だぜ。

ブリザードレインを使われ、負けを一瞬覚悟したが、アークの持つダガーで窮地を免れた。

あのダガーは一体……、

と思っていたら、余力を残した敵に反撃を許してしまう。



――――



「ぐ……おいおい、冗談だろ?」

 俺達はエイリアスの放った全方位攻撃で瀕死状態だった。


「さて、そろそろ……」

 エイリアスがレイピアを構えた瞬間、


「ぐはッ!」

 エイリアスは突然吐血した。


「ふ……やはり、思考詠唱(ショートスペル)は負担が掛かるようだ……無茶をしすぎたな。ここは、退かせて貰おう」

 お?

 そう言ってエイリアスはどこかに去っていった。


「待て!」

 とハリスが言うころにはすでに姿は無かった。


「はぁ……逃げられちまったか……」

 ハリスは傷口を抑えながら悔しそうに言った。


「そんな状態じゃ勝てないだろ」

「まあ、な……。それよりお前さん、そのダガー、一体なんなんだ?」

 ハリスは真剣な、鋭い目線で聞いてきた。


「……俺が聞きたいくらいだよ。これはもともと親父のだし」

 俺はダガーを見つめて言った。

 ったく、あの親父はとんでもない物を二つも残して死にやがった。


「その親父さんは?」

「死んだよ。だから聞き様が無いし、どういうつもりで持っていたのかもサッパリ謎」

 そもそも“こういうもの”だと知っていて持っていたのかすら不明だしな。


「そうか……もし、暇があったらセトラエスト王国のシュロンって街に寄ってみな」

 ハリスは突然言ってきた。


「シュロン?」

 聞きなれない街だな。

 まあ外国だし、しょうがないか。


「知識の街シュロン。そこにある世界一の貯蔵を誇る王立図書館なら、なんか知る事が出来るかもしれな

いぞ。まあこのご時勢だ。王国に渡るのは難しいかも知れないがな」

 知識の街ねぇ。

 本を読むのはあまり得意じゃないので圧倒されそうだな。


「まあ覚えておくよ。暇があったらな」

 今はあくまでザイルを追うのを優先するつもりだけどな。


「さて……」

 そう言ってハリスは懐からテレスを取り出して


「アイリ、聞こえるか~? とりあえず手当してほしいから、リディを連れてきてくれ~」

 と言った。

 ちなみに、向こうの声はこっちに聞こえない。



――――



 それから俺達は、疾風の翼の治癒術師リディに再び手当を受け、ハリス達と分かれた。

 ハリス達は次の目的地に移動する為、ここから離れるらしい。

 何とか目的は達成した訳だが……。


「ここにその、ワルキスって人がいるのかい?」

 リードが言った。


「ああ、ワルキスー、はいるぞー」

 俺は扉を開けた。



「うけけけけけけけけけけけけけけけけけっ!」 




「またかよっ!!」

「わぁぁっ!?」

「きゃあぁぁっ!?」

「ギャアァァァァーーーーー!!」

「あ……アッハハハハハハハハハハハ!!」

「うざ」


 一応、俺、リード、エル、ジャミル、ルネ、リナの順のリアクションである。


「お! またまたいいリアクションしてくれるやないか~! にしても約1名爆笑してる奴がいつのはなんでなん?」

 なぜか俺に聞いてきた。


「知るかっ! あいつはホラーが大好きなんだってよ!」

 でも……笑うのは違うだろ……。


「だあって……骸骨がしゃべるとか……アハハハハハ!!」

 だめだこいつ……。

 ルネは目に涙を浮かべて笑った。


「へぇ、アークの言ってた事は本当だったのか……にしても、ああ……不思議だなぁ……」

 リードはワルキスを見て目を輝かせていた。


「お前なんていうか……変な趣味だよな」

「何を言ってるんだい! この技術が解明されれば、近い将来人類皆骸骨になることも可能かもしれないんだよ!!」


「そんな未来はいらねぇーー!! アホな事力説してんじゃねーよ!!」

「人類皆骸骨……ええかもなぁ」


「お前は夢見るなっ!」

(いいから、早く本題に入って)

 うぇ? なんでリナの声が聞こえてくるんだ……?


(ウチを経由して嬢ちゃんの声も聞こえるようにしといたんや。じゃ、さっそく本題いくで~)

 なるほど。

 にしてもこのワルキス、緊張感のかけらもないな。


(聞こえとるで。まあええけどな~)

(で、ザイルはどこにいるの)

(西大陸のバスキルト砦っちゅー遺跡にいるみたいやで)

 よし、じゃあすぐにそこに向かわないとな。


(待て待て、ザイルっちゅーモンはその辺うろうろしてるさかい、下手に向かったらすれ違うわ)

(そ。ならザイルの次の標的の家はどこだかわかる?)

 そうか! それなら『賢者』にザイルの事を伝えられるしいいな!


(そーなると……ドーイングっちゅー町になるな。そこにいる『アレン・ブエノース』言うのが賢者の1人のはずやわ)

 なるほど……サンキューな。

 にしてもお前、なんでも知ってるのな。


「さ、約束や。あんたらを西でも東でも好きなところに連れてったるで~」

 ワルキスが現実でしゃべりだした。


 酪農の村ドーイング。

 文字通り牛とかの飼育で栄えてる村だな。


 帝都から出てもそう遠くは無いはず。

 ここはリード達に怪しまれる訳にもいかないし、帝都に戻っておくか。


「僕とアークとエルは、帝都までお願いしてもよろしいですか?」

「おう、OKや」

「俺ァ隣のブルーム村で」

「あたしはね~、とりあえずエンレイって町で!」 

「アタシはドーイング」

 リナは直接行く気か……。


(どうすんの? 合流する? 別にアタシは1人でも構わないけど)

 リナの心の声か!

 もちろんするだろ。俺はちょっと時間かかりそうだけど。


(そ。じゃあ宿屋で待ってるわ。さっさと来なさいよ)

 分かった分かった。


「そっかー、なんだかんだで、ジャミルとルネとリナとはこれでお別れなのねー」

 エルが残念そうに言った。

 ……そういやそうだな。


 リナはともかく、ジャミルやルネとはもう会うこともないだろうな。

 そう考えるとなんだかさびしいもんだ。


「まァ生きてりゃどっかで会うこともあンだろ」

「そうそう! 帝都くらいだったらたまに遊びに行くかもしれないしね!」

「まあお前はなんかフラフラしてそうだしな」

「フラフラって何よ!? あたしは世界を股に掛けるトレジャーハンターなんだから!」

「はいはい、じゃ、ワルキス頼む」

「無視すんな~!!」

 そんなこんなで、ワルキスはみんなを一か所に集めた。


「そいじゃ、いくで」

 とワルキスが言うと、足元に巨大な魔方陣が現れた。

 おお! すげー!


「せーのっ!」

 ワルキスの声と同時に、俺の目の前は真っ白になった――



――――



「くッ……はぁ、はぁ、はぁ……」

 エイリアスは、壁に手を当てながら進んでいた。

 ハリスから貰った一撃は、まさに致命傷だった。

 実際、ハリスの前では痩せ我慢していた事が大きい。


(何故だ……)

 足元がおぼつかない。

 腹から大量に噴出した血でめまいがする。


(何故、私はここまでして、盗賊を憎む……)

 突如、脚の力が抜け落ち、その場に倒れる。


「ざまぁねーな」

 聞き覚えのある一声。

 この前“力”を与えた、金髪の男、ザイルの声だ。


「貴様は……この前の……」

「ま、過ぎた力は身に毒ってコトだ。オレも人の事は言えねぇがな」

 と言い、右腕を上げて自身の“ブラストレイズ”を見る。


「コイツもよぉ……同士が多重干渉しやがって負担がハンパじゃねぇんだよ。お陰であんなガキに遅れをとるし……」

「何故……私に、力を与えた……?」

 絶え絶えの声でエイリアスは尋ねる。

 ザイルの話は聞いていなかったようだ。


「教える義理はねぇよ。……にしてもワルキメデスのジジイも馬鹿な野郎だ。何が『エイリアスを殺せる男』だ。魔陣壁を壊すくらいにしか役に立ってねぇじゃねぇか」

 これも完全な独り言だった。

 実際、口で言っていながらもアークの実力をザイル自身も評価はしていた。


 ただし、それはあくまで向こうに『ラプター』があった事・『裁きの雷』で魔素を消費していた事・ブラストレイズの多重干渉があった事が大きい事も。


 一方でアークの使用するダガーにも興味はあったが、それにはかかわるなと上から指示が出されていた。


「ま、なんにせよオマエにゃまだ死なれちゃ困る。この紙に書いてある部屋へ行け。そこにいい医者が居る」

 それだけ言うと、ザイルは紙だけ置いてその場を去って言った。


「……なんなのだ……。私は一体、何に利用されている……ッ!!」

 その問いに答えは返って来なかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ