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永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第四章 幽霊船と盗賊団
35/110

第35話「目に見える物だけが真実ではない、と信じたい」

前回のあらすじ……。


担当:エルアス・ミルード

今回は私、エルアス・ミルードがあらすじを担当するよ。

じゃんけんによって、リードとジェミルさんが空駆船の操縦者に選ばれたの。

2人とも、頑張ってねー!

離陸するときは苦戦してたみたいだけど。

空駆船だけに(クスっ)

あ、えーっと、それで、2人が途中操作を間違ったみたいで、後ろのプロペラだけが動いてさあ大変!

でも、ジャミルさんが暴れて偶然押したスイッチで、HALさんって人が助けてくれた。

うー、声がするのに姿が見えないよー。

でも優しい人だったので、ルネのお陰もあって私達は無事出発。

でもでも、航行中にプロペラから煙が出て大変!

私達は真っ逆さまに落ちて行きましたとさ。

おしまい。



――――



アーク「おしまいって何だぁぁーー!! 勝手に殺すなよ!!」

エル「あぁアーク、いたんだ」

アーク「あと何が空駆船だけに(クスっ)だ! 面白くねーんだよ!!」

エル「いいじゃない! あらすじなんだから!」

アーク「笑顔で言うな! むしろあらすじだったら駄目だろ!」

エル「え? 駄目なの?」

アーク「お~い誰かこのアンポンタンをなんとかしてくれ~……」



――疾風の翼・船内牢屋――



「よぉ」

 その男は、たった今、牢屋を挟んで彼女の目の前に立っていた。

 男は、鋭角的な金髪に迷彩服のコートを着込む、鋭い目つきと両腕に装備したクローが特徴的な男。

 彼女は、男に会ったことは一度も無かった。

 だが……。


「貴様は……ザイル・サファールか……?」

 ……何故か名前は知っていた。

 何故知っていたのかは、彼女も知らない。


「“この世界”では、始めましてってかぁ? エイリアス・ラクシリアさんよぉ」

 言って、ザイルは口元を凶悪な笑みで歪めた。


「貴様は……なんだ。何故私は貴様のことを知っている……?」

 エイリアスは困惑する。


「オマエの疑問なんざ答える気はねぇよ。いいからこっから出ろ。それがオマエの――」

 言いかけてふと後ろに人気を感じたザイル。


「なっ……なんだお前、何処から入ってきた!?」

 見回りを勤める3人の疾風の翼団員がザイルを発見したのだ。

 団員は警戒し、即座に剣を構える。


「あァ? ったくよぉ……オマエがモタモタしてっから見つかっちまったじゃねぇか」

 はぁぁ、とザイルは再びめんどくさそうに溜息を吐く。


「ジール、あんたは団長にこのことを伝えろ! 俺はコイツを――」

 白髪混ざりの中年の男が言いかけた瞬間、ザイルは彼の目の前にいた。


「オレをなんだってぇ!? あァ!?」

 言うのと同時に、中年は肩を派手に斬られていた。


「ぎゃああぁぁぁぁあ! ……お前……いつの間に……」

 いいながら倒れる中年を飛び越えて、ジールと呼ばれた青年に向かう。


「ぎゃははははは! おら遅ぇぞ!!」

 今度は、ジールに向かって右腕を突き出し、謎の衝撃で数メートル先の壁までもう一人を巻き込んで吹き飛ばした。

 これで盗賊は全滅した。


「……ったく、めんどくせぇなオイ。まぁいい。オラ行くぞ」

 言うと、ザイルはエイリアスの入った牢をクローで切り裂いた。

 鉄格子がカラカラと音を立てて床に散らばる。


「フン。それで……私をここから出して何に利用しようと? 悪いが私は盗賊団の殲滅以外に興味は無い」

 エイリアスは冷たく言い放った。


「ククク……それでいいんだよ。……オマエ、『思考詠唱(ショートスペル)』の調子はどぉだ?」

 その言葉を聴いて、エイリアスの表情が驚きに変わる。


「貴様……あのときの研究機関か!?」

「研究機関? まぁ……そんなところか。まぁいい……“力”をくれてやるぜ。着いて来い」

 言うと、ザイルはエイリアスの武器、魔法詠唱兵器(ファストレイズ)と彫刻のようなレイピアを渡す。


「ふ……ふはははははは!! いいだろう! 貴様が何者かは知らぬが、盗賊団を滅ぼすのにそのような事は関係ない!!」

 エイリアスは武器を受け取り、ザイルに着いて行く。



――――



「あでで……ひでぇ目にあった」

 俺は墜落の衝撃でぶつけた頭を摩りながら言った。

 何がどうなったのかは不明だが、とりあえず生きていたみたいだ……。


「その声アークかい? ……無事みたいだね」

 リードが操縦室のほうから這い出てきた。

 ……イスが上にある……どうやらひっくり返っているみたいだ。


「スリル満点だったねー」

 うお、エル隣にいたのか、気付かなかった。

 っていうかその感性は明らかに常識を逸してるぞ。


「いたたたた~……なんなのよもう!」

 腰をさすりながらルネも出てきた。


「とりあえず、全員無事みたいだね」

 リードが真面目な声で確認する。


『そのようですね』

 うおっ、足元から声がする!

 見ると、足元にはコードの千切れたモニターみたいなのが転がっていた。

 その画面には『HAL』と書いてある。


「うわー、HALさん生きてたんだー。頑丈だねー」

 エルがそのモニターを手にとって見る。


『私本体は無事のようですが、空駆船AW-551の方は全壊レベルです。修復するより買い直したほうが早いでしょう』

 どこで買うんだよ……。


『それより、私の見解によりますと、メンバーが一名欠けている気がするのですが』

 あれ……そういえば……。


「……オイ」

 奥の方で声がする。

 あ~、ジャミルいねぇじゃん。


「もーリード、ジャミルさん忘れちゃダメだよー、いくら存在感無いからってー」

 おいエルそれはさり気無く酷いぞ。


「あぁごめんつい。それで君はドコにいるんだい?」

 声がするが姿が見えない。

 っていうかリードお前素で忘れてたのかよ。


「コッチだコッチ」

 声のする方へ俺とリードが見に行く。


 しかしよっぽど酷い墜落の仕方したんだろうなぁ。

 中身がごっちゃごちゃだぞコレ。


 まあ俺達ごと潰れなかったのが幸いか。

 そんなことを適当に考えながらジャミルを探していると……。


「……よォ」

「……なんで逆立ち?」

「逆立ちじゃねェ! 足が引っかかって取れねェンだよ!」

 ジャミルは足が天井の何かに引っかかっていて、ちょうど逆立ちの体制になっていた。


「いたージャミルさん、なんで逆立ちなのー?」

 後ろからエルとルネもやってきた。


「だから逆立ちじゃねェ! 足になンか引っかかって取れねェンだっつーのォ!

 ジャミルはキレ気味になりながら答える。

 ……確かに頭に血が上って顔が真っ赤だぞ。

 早く助けたほうがいいんじゃないか?


「ジャミル~! なんで逆立ちなの?」

「ルネテメェは明らかに悪ノリだろォォォ! いいから早く助けろこの野郎ォ!」

 凄い勢いで怒鳴ってるが逆立ちなのでなんともいえない。


「それが人に物を頼む態度かい?」

 リードお前容赦ねぇな。


「タスケテクダサイオネガイシマス」

 棒読みだぁぁぁ!


『血圧が上がっています。助けてあげてはどうでしょう、と提案します』

「タスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケ――」

「――怖ぇよ!! 早く助けてやろうもう!!」

 俺は一向に進まない展開とジャミルのホラーに屈しようやく助けることにした。



――――



「あのさぁ……言ってもいい?」

 俺達はその後、周囲の状況を確かめるために何処に墜落したのか外へ見に行った。

 しかしそこには、俺達の想像を遥かに超える世界が広がっていた。


 そこで先ほどの台詞である。

 みんな現実を直視したくないだろうが、誰かが言わなきゃいけない。


「あァ……多分今全員同じ事考えてるぜェ……」

 ジャミルが力無く言う。

 俺達は大海原の真っ只中にいたにもかかわらず、HALの機転のお陰で海水に墜落することは無かった。

 だが俺達が不時着したその建造物は……。


「これって…………幽霊船だよ、な?」

 巨大な幽霊船でした!


 風を受けてマストで進む前時代の船。

 木は腐り、船体はぼろぼろで今にも沈みそうな船。

 いやそれはいいんだが、納得いかない事が1つ。



 なんで半透明なんだYO!!



 いやいや、みんな否定してよ。

 俺の目がおかしいだけだって言ってくれよぉぉーーー!!


「……みたいだねー」

「……信じられないけど」

「……っていうより信じたくないよね~」

「……同感だァ……」

『同意します』

 エル、リード、ルネ、ジャミル、HALの順に口にする。


 ……どうやら、俺の幻ではないらしい。

 なんかもう信じられない物を見て脱力状態。


「え~と……とりあえず、これからど~すんの?」

 ルネが気を取り戻して話を始める。


「ええと……中、入ってみる?」

 リードが言う。

 確かに、俺達の船が突き刺さったせいで幽霊船の側面に穴が開き、入れそうだ。


 ちなみに船の全体像はかなりでかい。

 この船は小型だが、軽く10倍はありそうだ。


「……マジでか?」

 気は進まない。

 だって半透明だし、半透明だし、半透明だし……。


「よぉぉーーしッ!! あたしゃ行くわよっ! これはきっと、まだ見ぬお宝があたしを引き寄せたのよッ!! 間違いないわ!!」

 ルネがテンションを上げてそう言った。


「じゃあ、頑張ってねー」

 笑顔で手を振るエル。


「ちょ、何言ってんのよ!! あんたらも来るのっ!!」

「えっ? そうなの?」

 ルネの奴、本気だったらしい……。

 天然ってこえ~!


「しょうがね、ルネ一人じゃ、お宝どころか厄介物持ち帰って来そうだし、俺達も行くか」

 俺が言う。


「むかーっ! 失礼しちゃうわ!!」

 実際そうだろうが!!


「ったくめんどくせェェー! だいたいどうやって脱出する気だァ! 俺達の船は再生不能になっちまったんだぞォ!?」

 確かにジャミルの言う通りだな。


「……なにか幽霊船の中に使えるものがあればいいけど……半透明じゃなぁ……」

 リードが頭を片手で抱える。

 半透明の船で帰還出来たら一躍有名人だな……。


『入った瞬間に海の中へ真っ逆さま。という可能性も考慮すべきです』

 HALが言う。

 っていうか何気に溶け込んでるなコイツ……。


「むぅ~っ! じゃあここにいて何か解決でもするの!?」

 ルネはリードに迫る。

 意地でも行きたいようだ。


「しょうがない……あまりに無鉄砲だけど……とりあえず行ってみよう」

 リードは不承不承と言った感じで行く事を決定した。


『ところで、話の腰を折って申し訳ありませんが、私の電池残量が底を付きそうです。願わくば電池の交換を――あっ』

 という言葉を残して、HALの電源が落ちた。


「うっそ~! HALさん死んじゃったの~?」

 エルがあわてる。


「大丈夫よ、ただの電池切れだから。ただ……これ交換するには王国まで行かないと……」

 ルネが教えるが、当分復活は無理そうだな……。


「うん、とりあえずあたし持っておくね。もしかしたら王国へ行く機会もあるかもしれないし」

 そう言ってHALモニターをかばんの中にしまった。

 ……まじであのかばんにゃなんでも入るな……。

 そんなこんなで、俺達は幽霊船を探索する事になった。


 ……正直、こうしている間にもザイルって野郎が『賢者』をぶっ殺して回ってるって思うと気が気じゃないぜ。

 全て揃ったら世界がやばそうだし……いや。

 野郎の話によると、俺が持ってる腕輪も『ブラストレイズ』らしいから黙ってても野郎は俺んとこに来るのか……。


 だからって、他の賢者もほっとけねぇよ。

 それだってのに、俺なにしてんだろ……。 

 


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