第34話「結果オーラ……イ?」
前回のあらすじ……。
担当:リード・フェンネス
今回は僕、リード・フェンネスがあらすじを担当するよ。
アークが瀕死の重傷を負った為、丸1日休むことにした。
まさか一日で完治するとは思わなかったけどね。
僕は島からの脱出方法を探すよう提案したが、その前に死体のあった廃屋を見ておきたいと言われた。
僕は何もなかったと言ったが、彼が諦めない為結局行く事になった。
アーク……何か隠してるね?
証拠は無いけれど、なぜか僕は確信していた。
それでルネが隠し通路を見つけ、空駆船を発見。
皆舞い上がっていたが、僕が操縦できるのか聞くと、その空気は一気に崩壊した。
――――
「……んで、なンで俺が操縦する事になンだよッ!!」
俺達は既に空駆船に乗り込み、出発を待ってる所だった。
ちなみに、操縦する事になったのはリード&ジャミル。
なぜこうなったのかと言うと、
他の脱出方法を探すよりなんとかしてこれを動かす方がカンタン!
というルネのトンデモ提案が多数決で採用された。
ちなみに、反対は俺とリードだけだった。
なにこの頭悪いパーティーメンバー……。
操縦者は2人。
じゃんけんで決める事になったが、リードは冷静だし頭良いし外せないだろという俺案が採用されリードは確定。
残る1人をじゃんけんで選抜すると、ジャミルが残った。
と言う訳で現在に至る。
「君はまだじゃんけんするチャンスが残ってただけマシじゃないか……僕なんて選択権も何にも与えられないままここに……」
うわあぁぁ!
なんかリードが暗いぞ!?
「オイ、なンだこのランプは。一個だけ赤いンだが大丈夫なのか?」
「知らないよ……だいたい君は空駆船の類が好きじゃなかったのか?」
「外見だけだよチクショー! テメェこそ騎士様ならこンぐれェなンとかして見せやがれ!」
「騎士団は君が思ってる程便利屋じゃないよ。なんでもやってくれると思ったら大間違いさ」
「ケッ! 使えねー騎士様だぜ」
「……何か言った?」
「ンだァ? 騎士様は耳も悪いのかァ?」
そのやり取りを見てエルに問う。
「なあ、あいつらってもしかしてミスマッチ?」
エルは苦笑いしながら答えた。
「かも……知れないね? でもまあ何とかなるでしょ」
「そうそ! なんとかなるでしょ!」
ルネのはなんか投げやりに聞こえた。
「……なるのかよコレ……」
あぁもう……絶対墜落する……。
「いつまでもこうしていても仕方がない。行くよ」
それから数分後、コクッピットを眺めても結局分からなかったのか、リードは半ばあきらめの声で言った。
「おうよォ! 俺様の華麗な操縦技術! とくと見せてやるぜェ!」
「その自信がどこから来るのか知りたいよもう……」
リードが返って意気消沈してるが気にしてない様子のジャミル。
ちなみに、今は格納庫の天井が開き、真上に青空が広がっている。
どうやらここから発進出来るらしい。
なんかどこかの秘密基地みたいだな。
「よし……行くよ。エンジンは……これか?」
リードは腰のあたりにあるレバーを引いた。
すると、船全体が震え、動力が伝わった。
「おしいいぜ! 次、プロペラ回すぜ!」
ジャミルは正面のレバーを押す。
「……反応しねェ」
「違ったみたいだね? これかな?」
反応なし。
「これじゃねェか?」
反応なし。
「これかも知れない」
ヴーー! ヴーー! ヴーー!
「うおッ! ブザー鳴った!! 切れ! 切れェッ!」
「分かってるよっ!」
スイッチOFF。
ブザーはおさまった。
「……あたし、遺産分配やっておこうかな」
笑顔で告げるルネ。
「……俺も遺書かいとこ」
笑顔で返す俺。
なんか、ザイルに遭った時よりも死の気配が迫ってるんだが……。
――――
数十分後。
いい加減離陸無理じゃね? という空気が漂ってきたときだった。
「よしッ! キタッ! プロペラ来たぞォォ!!」
ようやくプロペラが回転し始め、謎の感動に包まれた。
「おおお! すげっ! 浮いてる……飛んでるよ!! ……ってあらぁぁ!?」
前に傾いてるぞぉぉぉ!?
「しまった! 後ろプロペラしか動いてない!!」
焦るリード。
このままじゃひっくり返るぞ!?
「だァァァチクショウ! もう食らいやがれこのォォォ!! ……あ」
あれ!? 今何か折れた音したぞ!?
「ちょっとぉぉぉぉぉ!! 食らいやがれって……何してるんだ君はぁぁぁぁぁ!!」
なんかよく分からんがリードがキレてる!!
「クソッ、まさか操縦桿が錆び付いて脆くなっていたとはなァ……チッ」
「チッ、じゃない! 何さり気無く操縦桿のせいにしてるんだい!!」
お前ら漫才してる場合か!?
って……え? 操縦桿が折れたのか?
「ちょっとー!! 2人とも何とかしてー!! もうすぐひっくり返っちゃうよー!」
エルが珍しく叫ぶ!
座礁したら色々終わるぞ!
「だァァうるせェェェェェェ!! もう何とでもなりやがれクソがァァ!!」
「ああもうそんなにむちゃくちゃに叩いたらまた――」
『――アクセス確認。自動航行プログラムスタート。姿勢安定制御を行います』
……あ?
船が……水平になった?
『目的地を選択してください』
「……ジャミル」
「なんだァ」
「……とりあえず、結果オーライという事にしておこう」
「あァ……俺もドコ押したんだがまったく覚えてねェが、まァいいだろ……んでよォ」
……ジャミルが暴れた結果、偶然触ったスイッチで『自動航行プログラム』というものが発動し、船は安定を取り戻したのだが……。
「この声誰だよォ!!」
皆が疑問に思っていたことをジャミルが叫ぶ。
「俺ら以外に誰か乗っている……のか?」
と俺、
「いや……というよりは誰かがテレスで放送してる……とか?」
リード、
「船がしゃべるなんて不思議だねー」
エル、
「録音されてどっかのスピーカーから流れてンじゃねェか?」
ジャミル。
それぞれが疑問を持った。
『ご安心を。私は当機、AW-551に搭載されているパーソナルAI『HAL』です』
「うわっ、質問に答えたぞ!?」
俺が驚く。
っていうか何を説明してんのかサッパリ分からん!
AW? パーソナルAI? なんだそりゃ!?
「待って……これってもしかして、最新の空駆船かも知れない……」
ルネが言った……ってルネ?
「(なんで……こんな高度な文明がこんな所に……これって、まだ世界に発掘されてない古代文明じゃないの……なんとか、しないと)」
ルネが難しそうになんか考えてる。
「おーいどうした?」
「え? あ~ごめんごめん、この船いくらで売れるかな~ってちょっと考えてた」
ルネはおどけた様子で答えた。
「うぉいッ! 見つけたとたんに売る打算かよっ! お前は金のことしか頭に無いのか!?」
「そーよ! だってあたしは世界を又に駆けるトレジャーハンターなんだからっ!!」
「うるせぇまずはこの状況を打破してから言えよ!」
言いつつ、俺は先ほどのルネの顔が頭から離れなかった。
あの表情……ホントに売る打算をしてたのか?
もっと、違う事考えてたんじゃないのか?
ルネとこの船。
何か関係があるのかも知れない……とか考えるがまあ杞憂だろう。
そう言えば言ってたな……。
(その……あたしにも色々、特殊な事情があるから……さ)
まあ……仮にそうだったとしても、ルネが隠してることを理由も無しに無理やり追求するのは迷惑だ。
俺がブラストレイズやザイルの事をみんなに隠しているようにな……。
「えーと、HALさん?」
『なんでしょう?』
そんな事を考えていると、なんかエルはナチュラルに音声と会話し始めていた。
「目的地は、ギル・ラシアトス帝国の帝都、バートラルでお願いします」
『検索……そのような地名はありません』
「えぇー! HALさん知らないのー!? 非常識だねー」
『申し訳ありません』
って、該当無しかよ!?
しかも割りと普通にしゃべってるし!
つーか帝都が分からないってどうなってんだよ……。
ぶっ壊れてんじゃねぇのか?
「おいルネ……お前古代文明詳しいだろ。なんとかならないのか?」
「あたしに丸投げ!? でも待って、この構造から察するに……」
お? なんかブツブツ船を調べ始めた。
「HAL、ヴェル・ダグタリアント連盟国のアグスタシーなら分かる?」
『検索……確認しました。目的地はアグスタシーでよろしいですか?』
「それでお願い」
『畏まりました。航行開始します』
おおおぉぉぉ、すげぇ、なんかよく分からんけどなんとかなったぞ!?
「ルネすごーい!」
「クソォ、なにがどうなってんのかサッパリだぞゴルァ、説明しやがれルネ」
エルは無邪気に喜ぶが、ジャミルは頭から知恵熱を出しそうな勢いで頭を抱えていた。
「あはは~、アグスタシーってのは昔のバートラル辺りの地名だよ。帝都を検索できないって事は昔の地名ならって思ってね~」
おお……なんだかんだでルネ凄ぇ。
今回マジで大活躍だなコノヤロー。
「……という事は、この船はまさか魔核大戦以前に建造された船……という事なのかい?」
お、さすがリード、鋭いな。
「うんん、勘だけど、船自体は少し前に建造された程度だと思う。HALに関しては地名入力電波情報とアビリティ・パーソナルデータが入力されていないだけで……ん? 待って、でも船の構造にメタルラジアントは入ってないからこの船は新羅暦時代以前? いやでも構造は比較的新しいし……そうなってくるとこっちの方が――」
ルネは自分の世界へと入っていった。
「……おいリード、余計なこと聞くんじゃねーよ……」
「まさかこうなるとはね……」
俺らは苦笑いしてそれを見つめていた。
「でもこんな音声案内する船なんて……結構珍しいんじゃないか?」
俺はリードに言う。
「そんな感じはするけどね。何にしても古代文明っていうのは――」
「それはないわ」
うおっ、ルネ!?
顔近いって!
「アーク達は知らないかもしれないけど、結構隣国のセトラエスト王国とかは積極的にこの音声案内を取り入れてるわ」
へぇ……確かに隣の国のことは知らん。
「なんでか知らないけど帝国はこの技術を取り入れようとしてないから、国内で売ったとしても王国に全部流れて行っちゃって、大して高く売れないのよね~」
残念そうな声で言うルネ。
「でも隣の国ではこんな高度な技術が使われてるんだねー、便利そうでいいなー」
うらやましそうに言うエル。
「だなァ、頭悪いヤツでも簡単に動かせるしなァ」
頭悪いヤツって、自分の事かジャミル……。
それからしばらくは何の問題も無く、割とスムーズに行っていたので、俺達は甲板に出てみた。
「うおおお~!! すっげ~眺めだ!!」
なんていうか……感動した!!
大海原を高速で駆ける俺達!
最高だね!
「うっは~! ホント最高ね! これだけでも無人島に来た甲斐があったわ!」
ルネも上機嫌に大きく背伸びをしている。
「こうして眺めてると、なんだか飛びこみたくなっちゃうわね!」
それはどうかと思うぞエル……。
それからしばらく、甲板に寝転がっていた。
日差しが気持ちいねー、
そんな訳で、これほど絶好の昼寝日和は二度とない!
と思い、俺は甲板で昼寝をし始めた。
……のだが……。
「うーみーはーひろいーなーおおきいーなー」
……ルネのせいで眠れねー!!
「つーきーがーのぼるーしーひがしーずーむー」
なんで苦情が来ないんだ!?
「うーみーはーひろいーなーおおきーいーなー」
ループかよ!?
2番歌えよ!
まあ俺も知らないけど。
思いつつ、細目を開けてルネの顔を見る。
大海原の下で、海風に長い髪をなびかせ気持ち良さそうにしている。
くそ……この壊滅的な音程の歌さえ無ければ良い絵なんだが……。
って、俺は何考えてんだか。
……俺の記憶では、ルネは以前からピアスを付けていなかった。
だが今は赤い宝石の小さなピアスが付いている。
聞けば、ずっと前からしているらしかった。
目を閉じる。
……俺が以前から感じていた言いようの無い“違和感”。
最近その正体がなんとなく掴めて来た。
違和感を感じたのはちょうどザイル戦が終わった後。
つまり俺が瀕死(だったらしい)の重傷を負い、アークラインと名乗る親父モドキが夢(?)に現れた時以降だ。
リードは眼鏡のデザインが変わり、ルネはピアスを付けている。
他にジャミルの銃のデザインや、エルの服装の変化。
一つ一つは気にするまでも無い、大して騒ぎ立てる必要も無い小さな違い。
だが、確実に今までの俺の記憶と違う。
まるで、俺が目を覚ました“この世界”は、重傷を負う“前の世界”と変わってしまってるかのような……そんな違和感がする。
きっとあのアークラインとか言うヤツが何かしたに違いない。
(「戻る? 戻るってどこにだよ!」
「アーク・シュナイザーという人間が生存し続けている世界の1つへだ」)
親父モドキの言葉が頭に蘇る。
この言葉の意味は不明だが……何か大きな秘密がありそうだ……。
ああくそ、全然分かんねぇよ!
でも、確かに違和感を感じるんだ。
まるで、自分だけが世界から浮き彫りになっているような……。
孤独感?
疎外感?
そんな感じで、とにかく居心地が悪い。
この感じにいつかは慣れるんだろうか……。
そう考えるうち、俺は深い眠りへと
「あああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「うるせぇぇぇーーーー!!!」
俺はルネの大声に怒りの余り跳ね起きた。
なんだよ!!?
「アークぅぅ!? あっ、あれっ、あれぇぇぇーーー!!」
ルネが指指した先のプロペラのローターからは、真っ黒い煙が出ていた。
うおおお!!?
やばいだろ!?
俺は中へ駆け込んだ!
「リードぉぉ! ジャミルぅぅぅ!! プロペラから煙がぁぁ!!」
「なんだってェ!? うおっ!!」
高度が下がり始めたぞ!!
「くそっ、HAL、HALッ!!」
リードは航行プログラム? であるHALに声をかける。
『緊急事態に付き原因究明シーケンスは省略。周囲の着陸可能な場所を特定し、緊急着陸パターンFを実行します』
シーケンス!?
パターンF!?
「何のことだか分からん!! おいルネッ! 翻訳しろ!!」
緊急事態って事もあったし、聞きなれない単語を吟味してる余裕は俺には無かった。
「ああもう! 要するに原因の究明はめんどくさいからしない! どっか不時着する場所を探すって事!!」
「なるほど分かった! つまり何とかなるのか!?」
「HALに聞いてよっ!」
『3番駆動回転翼、完全に停止、機体維持不可能、高度低下』
うそ、うそだろ……?
うそォォーーー!!
次の瞬間、船の動きが止まる。
その後フワリとした気持ち悪い感触。
そして一気に急降下!
『500セル先に構造物確認、進路修正――修正――修正完了、不時着コース、安定』
俺らは固まって頭を両手で押さえてしゃがみ、天に祈った!
瞬間、凄まじい衝撃が全身を襲った。
上下左右にシャッフルされ、もうどっちがどっちだか分かんなくなった。
体が飛び上がり跳ね上がり、体の意たる所を打ち付ける。
そして、ようやく動きが止まる。
俺は目を開けた。