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永遠の時の中で  作者: スピオトフォズ
第三章 無人島サバイバル
33/110

第33話「結果オーライ」

前回のあらすじ……。


担当:アーク・シュナイザー。

不思議な違和感を体の底に感じ、眠れないでいた俺。

ならその間にこっそり殺された老人の家に行ってみようかと考えた。

だが予想以上に体の調子を発揮できず、バルード如きに追い詰められてしまう。

その窮地を救ったルネ。

そんなルネは泣いたり恥ずかしがったり怒ったり笑ったり忙しい。

だがそんなルネを見てるうちに……変な感情が……。

おっと、ここから先を言うわけにはいかん。

認めたら負けな気がするぜ。

高鳴る動悸に負けず会話を続けるが、限界を感じ逃げ帰る俺。

ぬぅ……まあ、どうせこんな感情は今日だけだ。

きっとこういう状況に慣れてないだけだろ……多分。


――――


 翌朝。

 ザイル襲撃事件から丸一日がたった。

 俺の体の最低限の体力回復を目的とした休息だったが、


「よっこらせぇっと」


 俺は立ち上がり、適当に周囲の景色を見渡す。

 『ラプター』というこの腕輪のせいなのか、見事完全復活を遂げたのだった!

 昨日の夜中と比べても格段に調子がいい!


「おかしいよー、絶対おかしいよー」

 俺の目の前で首を捻るエル。


「ん? どうした?」

「人間の治癒機能には限界があってこんな短時間で治るはずないのにー、アークって人間じゃないのー?」

 やばい、結構本気で疑ってる目だぞこれは。


「ふざけんな。俺は十分人間だ! 理由については俺も知らん」

 腕輪のせいとは明かせない。

 まず俺がそんな国家破滅級の兵器の片鱗を握っていることを知られたら確実に騎士団に捕まるし。


 そもそも多分コレって正当手続きしてないっぽいし見つかったらアウトなんだが……他の古代兵器とは見た目が違うし、人目ではそれと見破られないハズ。


 というのも、普通レイズにはオーブが存在しているが、この腕輪には無い。

 つまりは普通の腕輪に見える訳なのでなんら問題は無いという事だ。


「よーし! アークも元気になった事だし、さっさとこのシケた島から脱出しよ~!」

 拳を高々と声を張り上げるルネ。

 昨日泣いてたとはとても思えないテンションだ。


 くそ……こっちは昨日のせいで変に意識しちまってるってのに……。

 だがその前に、やらなければいけない事が残っている。


「っと、その前に。リード。お前らが見た廃屋に案内してくれないか?」

 俺はリードたちに事情を悟られぬよう、あの廃屋に言って賢者に関しての資料を集めなくてはならない。


「良いけど……なんでだい?」

 疑問の眼差し。

 それでも本当の事を言う訳にはいかないな。


「なんか使えるものがあるかもしれないだろ? この島に住んでいた人だとしたら、何か脱出に必要な物もあるかもしれないしな」

 もちろん、全て口実だが、俺が言えばもっともらしく聞こえるんじゃないか?


「オイオイやめときなァ。部屋はめちゃくちゃだし、全部血まみれでとても使えそうなものは無かったぜェ?」

 ジャミルは荷物を纏めながら言う。

 まあそうなのかもしれないが、俺の目的はそれじゃない。

 ここは食い下がる訳にはいかない。


「いやいや、生きる為だ。見てくれにかまってる暇はないだろ? とにかく、俺が見たら使えるかもしれないものもあるかもしれないし、まずは行ってみよう」

 少々強引だが、納得してくれるか?


「まあまあ、ここは無人島マスターの言う事を聞いておこう? 経験者なんだし、私達の気付かなかったところもあるかもしれないでしょー」

 さすがエル! よく分かってらっしゃる!


「…………そう、だね」

 この時俺は、リードが嫌疑の目で見ている事に気付かなかった。



――廃屋――



「これが例の廃屋ねぇ~」

 俺は建物全体をざっと見渡す。


 ツタがすげぇ絡まってるし、窓は割れてるし、石で出来た壁もボロボロなので相当放置されてから年数は経っていそうだ。

 その周辺に盛り上がった地面と、突き刺さった木の棒を発見する


「リード、あれって……」

 なんとなく予想は付く。

 俺はその木の棒に近づく。


「お墓だよ。ここで死んじゃった人の……」

 エルが答えた。


「『アスロック・タリスマン』……名前、分かったのか」

 こいつが……ザイルに殺された賢者なのかは正直定かではない。


 だが、不意に自分の人生が終わった事、相当悔しかっただろう。

 辛かっただろう。

 痛かっただろう。


 可能性の話をしても意味の無い事は分かる。

 だがもしも……俺たちがもっと早くに合流していたら……助けられたかも知れなかったんだよな……。


 見ず知らずの老人だが、せめて、ご冥福だけはお祈りさせて頂きます……。

 そう心の中で念じ、俺は、俺達はしばらくの間黙祷していた。


 しばらくして、俺達は例の地下隠し通路とやらに入った。


 地下室に入ると、部屋全体に血しぶきがこびりついていて、消えかかってはいるが臭いがひどかった。

 んでしばらく捜索したが、俺にとってもみんなにとっても、これと言って目ぼしい物は無かった。


 案の定俺に非難が集中し、帰るか~という空気になった時だった。

「……ん?」

 ルネが何かに気付いたようだった。


「ど、どうした? ルネ」

 声を掛ける。


 くそ、やっぱ夜中のせいで少なからず意識してる……。

 ああぁぁぁぁイカンイカン!

 今はそれどころじゃないだろっ!!


「どこかから風が……みんな! 静かにして!!」

 珍しく真剣な声で怒鳴るルネ。

 みんなが黙り、ルネは目を閉じた。

 俺に対してなんというシリアスっぷり。


「風がこっちって事は……あっちか」

 言うとルネは部屋の隅っこに駆け寄り、何かを探るように壁をコンコン、と叩き始めた。

 目は真剣。

 なんか……すげートレジャーハンターっぽい。


「む、ここね……」

 上着の中から細いキリみたいなのを取り出して、部屋の壁面に使われている石と石の間に差し込み、テコの原理でこじ開ける。

 するとどうだろう。

 壁の一部がパカっと開き、中からスイッチが現れた。


「ビンゴ! なになにぃ~、緊急連絡艇格納庫用通路? よっし! ぽちっとな!」

 ルネはボタンに書いてある文字を読み、なんのためらいも無くボタンを押した。


 すると、反対側の壁がゴゴゴゴゴ……という典型的な音を立てて開いていき、その奥には金属で出来た近代的な廊下が広がっていた。


 すげぇぇーー!!


「おおおおお!! スッゲェー! こんな隠し通路があったのかァァ!!」

 ジャミルは感動してる。

 なんだこいつ……俺よりよっぽど役に立ってやがる!!


「ルネー、すごいよっ! よくこんなの分かったね!!」

 エルが目をキラキラさせて褒める。


「ふふん! 風の流れから隠し通路を読んだのよ! 古代遺跡の多くは隠し扉の反対側の壁に隠しボタンがあるからねっ!」

 ルネは胸を張って説明する。


「へぇ……古代遺跡の事も知ってんだ……。てっきり盗賊団くらいしか忍び込んでないのかと思ったぜ」

 まさかルネがこんな活躍するとは……。

 世の中何が起こるか分からないもんだ。


 賢者について何かと思ってきてみたら、思わぬ収穫!

 まあ賢者に関しては情報は無かったが、これはこれで結果オーライって事で。 


 ……ん?

「……待て。ここ、古代遺跡なのか!?」

 俺は重要な事に気がついた。


「そうみたいね。もうお宝の方は完全に盗られちゃったって感じ? 遺跡独自のセキリュティシステムは全部死んでるし。っていうか古代遺跡に住むってあの人どんな神経してるのかしらね」

 まあ仮にも賢者だから……いいのか?

 ヤバイ兵器の1部を管理してるぐらいだからな。 


「おおおォォォォォーー!!」 

 そんな事を考えていたら、通路の奥からジャミルの声が響いてきた。


「なんだ? 僕達も行ってみよう!!」

 リードがそう言ったので、俺達は駆け出した。



「オイ見ろッ! 空駆船がある! 島から脱出出来るぞ!!」

 目の前にあったのは、小さな、しかし5人乗るには十分な空駆船。


 水上で使うボートを二周りくらい大きくした感じだ。

 クルーザー、と呼ばれるクラスだな。


 形は鋭角的な二等辺三角形に近く、主な材質は木だと思う。

 モーターとプロペラは角の頂点に合計三つ。

 全体的に古そうだが十分動きそうだ!


「うおォォォ……これが空駆船かァ……こんなに間近では初めてみるぜ!!」

 ジャミルは空駆船に感動している。

 そして俺も!


「俺も俺も! いやぁ何て言うか……かっこいいなぁ……」

 そう!

 なにがいいかって、かっこいいんだ空駆船は!

 男ならだれでも憧れだ!

 一方女共は、


「やったー! これでようやく島から出られるのね!」

「そうよっ! ようやく草臭い生活からおさらばだわ~!!」

 2人で手をつなぎ踊っていた。

 そしてリードは、


「嬉しいのは分かるけど、これ操縦できる人、いるの?」

 現実的だった。


「…………いや」

 と俺、


「…………むりー」

 エル、


「…………あたしも~」

 ルネ、


「…………俺もだァ」

 ジャミルが言う。


 再び問題発生。

 どうすんだよぉぉーーー!!


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